御伽草子

☀海棠緋寄🔪
@Enph_hiyo12

園児

幼稚園パロ


幼稚園の設定は文ストわん!のものに近い。が一緒ではない。

ネタ提供はお鈴さんから。






「紫織ちゃぁん、絵本を読んであげよう」

「せんせ……えほんはうれしいですけど…ほかのこにはよまないの?」

「私は紫織ちゃん専用なのだよ」

「……あいがおもいです、せんせ」


本を読む時間に太宰は園児である紫織を膝に乗せ、頭を優しく撫でながら本の頁をめくる。

 紫かかった黒髪はとても柔らかでバレッタで止めたら弱くて落ちてしまいそうな程にか弱く、彼女はいつも髪は高い位置で結んでいる。其れは一つだったり二つだったり様々が今日は二つで、可愛らしく揺れるツインテールに太宰は骨抜きだった。

 他にもすべすべのミルク肌や、スカートから除くくりっとした膝小僧、スモックから出る小さな手。そのそれら全てが可愛いく愛らしい。


「しかもほんのしゅみがなぞ…」


太宰が持ってきた「葉桜と魔笛」とても幼児向けとは思えないのだが紫織も云うわりには結構楽しんでいるようだった。撫でられて悪い気はしないらしい。


「おねぇちゃんなによんでもらってるの!おれもおれも!」


身体の弱い妹が手紙を受け取り、其れを読み始めた辺りで紫織の弟である葵惟がやってきて太宰のエプロンを引っ張った。

 太宰は最初少し困ったようにしたが葵惟は彼女の従弟で実の姉のように慕っているため仕方なく彼も膝の上に乗せて読み聞かせを再開。しかし葵惟の方は、普通の園児なら当然の反応をするように此の話を理解していなかった。


「あおいにはまだはやい。せんせ、ほかの」

「うーん、じゃあ道化の華は?」

「くらいからきゃっか」


他の教員たちがそもそもその作家の話は園児向けに出来てないと心の中でツッコむ。


「『わが知る人にてある人の、はやう見し女のことほめ言ひ出でなどするも、ほど経たることなれど、なほにくし。まして、さしあたりたらむこそ思ひやらるれ』」

「せんせい……それどんないみ?」


複数の園児に読み聞かせしていた清原は文の途中で質問してきた鏡花に、少し不自然な笑顔で答えた。


「私のお付き合いしている人である人が、以前に付き合っていた褒め出すのも、時が経っていることだけれど、やはり憎らしい。ましてそのことが現在のことのであるとしたらその憎らしさは思いやられる…って意味」


まだ首を傾げる園児たちに清原は更に判り易く噛み砕いて説明する。


「まあ簡単に云うと、『今付き合ってんのは私だろうが何時までも前の女のこと未練たらたら引き摺ってんじゃねえよ糞男!』って意味だよ」


これも園児向けではなかった。しかし説明している清原は何処か楽しそうで、彼が楽しそうにしているのを見て鏡花は嬉しそうににっこりと頬を緩めている。


「あかるいはなしないんですか…?」

「僕の持ち合わせには無いかな」


「無いのか」と教員たちは心のなかでまたツッコみを入れた。


「昔の人の恋愛は濃いから明るいのは全然ないよ」

「だから付き合う前じゃなくて結婚後の泥沼にしたら善いのにね」


太宰が「おさん」の本をめくりながら清原に向かって云った。


「不倫物の方が教育に悪いからね?」

「反面教師というものがあるのだけど?」

「煩い幼女趣味の犯罪幼児教諭」


清原の挑発に太宰の目の色が変わる。


「私は森さんのような幼女趣味ではないと何度云えば判るの貴方は」

「どう見てもロリコンだと思うんだけど…愛重すぎだし」


大人げなく、しかし怒鳴り合わず静かに火花を散らす二人。立ち上がった太宰のエプロンの裾をくいっと紫織が引っ張るが彼は彼女の頭を撫でるだけで清原との睨み合いを止めない。


「だからぁ、私は幼女趣味じゃぁないの!好きになった紫織ちゃんがたまたま園児だっただけなの!私はロリコンじゃなくてシオコンなの!」

「え、なにシオコンって……なんか気持ち悪い……」

「気持ち悪くない!」


他の教員や園児たちが慌てるなか、園長をしている森がやってきて、騒ぎを知ると二人の声を掛けた。


「もうどっちが悪いか判らないから両方幼女趣味で善くないかい?」

「善くありません!!」


森の言葉に二人が声を上げ、此の話は終わった。




本の時間はまだ続いていたが部屋の端の方から女の子の声が部屋中に響く。


「ちゅうやがわたしのほんとったぁー!」


半泣きのような潤んだ目でそう訴えるのは年中の朔乃。彼女が指を差して訴えるのは年長の中也。彼は小さい身長乍らに朔乃の届かない位置に本を取って置いた。


「かえしてよぉ~」

「とどいたらかえしてやるよ」


平らな胸を張り、へっへーんと云うように威張る中也。好きな子を揶揄って注意を引こうとする典型的な男子のようである。


「んーっ、んーっ…とどかない……」


しゅん、と小さくなったあと俯く朔乃。中也が顔を覗き込むと、朔乃の紅色の瞳から涙が零れていることに気が付き、彼は慌てて本を取ろうとする。


「んーっ……あれ、とどかねぇ」


先ほどまで届いていた場所なのに手が急に届かず慌てる中也。

 そして本を諦めるしかない中也は必死に泣く朔乃に対しごめんと謝り続けた。


「取ってやれよ…紅葉」

「二人が愛いからもう少し見てたいのじゃ」


紅葉は、冷静に観察している清原の横でずっとにやにやしていた。






別日、幼稚園で自然公園に遠足に行きました。

 公園には大きな原っぱや林のような場所、単純な遊具などがあり、川や湖もある。

 基本的には水辺には危ないため行きたいときは教員も同行するように園児たちは説明されたがそれ以外は大抵許され自由にしていた。


「おっ、なんかおちてる…」


原っぱで中也は小さい釦を拾う。白くて薔薇の彫刻が為されている釦を水道の水で洗い、ハンカチを取り出して水分をふき取った。

 中也は其れをやけに気に入ったのか日の光に当てて反射を楽しんだり、じーっと観察して楽しむ。


「ちゅうやどうしたの?」


朔乃が彼に近づいて来て声を掛けて来る。中也は朔乃にその薔薇の釦を見せた。


「わぁ…きれいだね……」


彼女は釦を手に取ってうっとりと眺めた。


「…や、やるよそれ」

「え!いいの?」


やったぁ、と大喜びして朔乃は飛び回った。中也は「恥ずかしいから云うなよ」と釘をさす。彼女は其れの意味を分かっていないがうん、と頷いた。


「そのぼたんはなァ、まんげつのひにうみにもっていくときれいなはなをさかせるんだぜ!」

「ほんとぉ!だったらまんげつのひにうみにいこうよ!」

「いいぜ!」


二人は指切りをして約束をした。……因みに紅葉は其の様子をムービーで納めていた。




「ほら、綺麗な湖だよ紫織ちゃん」


太宰は紫織と手を繋いで、水辺にやってきていた。

 彼女はふいに彼の手から離れ水の近くに走っていく。危ないので追いかけると彼女は自らまだ少し離れた所で転んでしまった。


「紫織ちゃん!?大丈夫かい?」


太宰が駆け寄り、転んだ紫織を起き上がらせた。


「う、うん…だいじょうぶ……」


怪我はしていないようだが少しスモックが汚れてしまったので付いた土を払ってやる。彼は安堵の溜息を付いた後、その場に座って紫織も座るように促した。そして周りに咲いているシロツメクサを積んで何かを作り始めた。


「せんせ、なにつくってるの?」

「善いものだよ」


語尾にハートが付きそうな程に甘くウキウキでシロツメクサを編み、手際よく何かを作っていく。紫織は其の様子を綺麗な澄んだ藤色の瞳をきらきらさせて眺めている。


「……はい、出来たよ」


太宰が作ったのはシロツメクサの冠。其れを紫織の頭にふわりと優しく乗せる。


「お姫様みたいだ」


風が吹いて紫織の長い髪を風が撫でて行く。可憐に舞う髪と白い花が似合ってとても綺麗に見える。太宰は愛おしそうに目を細めて、自分を見つめる紫織を見る。

 するとまた太宰は一本花を摘んで、左手を出すように紫織に云う。そして摘んだ花を彼女の薬指に結んで指輪のようにした。


「うふふ。今日から紫織ちゃんは私のお嫁さんだよ」


安らかな時も……と結婚式の神父の言葉を云う始める太宰に紫織は「ちがうよ」と首を振る。少しショックを受ける彼に紫織は続ける。


「せんせにはゆびわ、ついてないもん」


そう云い、紫織が花を摘んで太宰の左手の薬指にシロツメクサを結んだ。

 太宰は驚きながら結ばれた花を見て、そのあとに紫織を見た。はにかみ乍ら楽しそうにしている紫織。太宰には天使に見えた。


「有難う……此れでお嫁さんになってくれる?」

「うん」

「なら、誓いのキスだね」


太宰は周りに人が居ないか確認したあと、ひっそりと隠れるように彼女の幼い唇にキスをした。




(「でも、わたし16さいになるまでけっこんできないよ?」)

(「現実的だ……」)





参考文献


太宰治著者「おさん」「葉桜と魔笛」

中原中也著者「月夜の浜辺」

清少納言著者「枕草子」

著作者の他の作品

なの様宅「ドス月」をお借りしました!!ドス月+月宮(ほんのり織月)