御伽草子

🐙海棠緋寄⚔️
@Enph_hiyo12

理想

探偵社の備品の買い出しに行くことになった式部。かなりの量を買う事になるので国木田と一緒に出掛けることとなった。


「其れにしても今回は結構買い込みますよね、まだ備蓄が切れるほどではないですよね?」

「ああ、今日は長期保存できる備品が一斉割引されていてお得なんだ」


そう云い国木田は式部に、探偵社の出費などが書かれた手帳の項目を見せた。

 確かに通常時に買う値段で約二倍の備品が買える。其れに先月の出費が赤字になっていた。此れが一番の要因だろうかと彼女は思う。


「先月は大変でしたもんね……」

「全くだ。何事も中々理想通りにならないな」


先月の始めに、襲撃を一度受け、経費で修理費を負担。中旬には社内の空調機器が故障。夏な事もあり冷房は必須という事で修理。月末は再び襲撃を受け、窓硝子の取り換え。三度の出来事により赤字をなってしまった。なので今月は成るべく無駄遣いを禁止されてしまった。


「今月も赤字なら細かい物は実費だな」


式部は彼に手帳を返す。彼の手帳には他にも様々な事が書かれている。今日買い物あとの予定、他の社員たちの動きも書かれている。其れ通りには基本ならないが、其れでもいつも書かれてあるのは国木田の几帳面さの表れだろう。


「実費はちょっと…」

「式部が金銭に困るのか?」

「私ってどんな印象持たれてるんでしょう……先月太宰さんに結構使ったので今月は抑えようかと」


式部は現在仕送りを受けている。現金は給料から来ているが、カードやその会員費は両親が払っている。などで金遣いには気を付けてはいるらしいが、根が金持ちのお嬢様、他の一般人の金銭感覚の比ではない。


「今度は太宰にどんな貢物をしたんだ?」

「貢いでなんか……先月は彼の誕生日だったので蟹などをご馳走しただけですよ。料亭で……」


どれ程の料亭だったのかは国木田は予想したくなかった。彼女の金遣いは敦でなくても仰天する。元マフィアで稼いでいたと思われる太宰だからついていける感覚なのだろう。

 彼女が入社してすぐの頃は質の善い高価な物を買って来て赤字になった事もある。それ以来、買って来るものの値段も明確にすることによって以降そのようなは無くなったが、心配な所が残っているのか何時も誰かを一緒に買い物に付き合わせるようしている。金の計算は出来るし高価であることも判っているのに平気で買って来る彼女は根本的に感覚が狂っているからだ。


「其れより今回の買い物だ。ちゃんと買うものは覚えているんだろうな?」

「ええ、勿論です。メモ用紙、ボールペン、消しゴム、付箋、ホッチキスの芯、封筒……あとは日用品で五種類あります。他にも医務室の寝台の蒲団の洗濯用に洗剤や、変えの包帯、ガーゼ……与謝野さんにカルテも頼まれましたし!」


彼女はすらすらと買うべきものを口にし、国木田に確認させた。彼は彼女の記憶力に相変わらず関心していた。記憶力が高いのは異能とは関係なく彼女の天賦の才。式部は一度見たもの訊いたものは殆ど完璧に覚えている事が出来るという。歩く記憶媒体を称されることもある。太宰はそんな彼女が敵に狙われないか心配していたが国木田は特に心配もしていなかった。彼女は自己防衛ぐらいは心得ているし彼女が一人で仕事に行くというのは滅多にないからだ。

 二人は目的地の業務用スーパーに着くと其々買って来るもの。そして集合時間もあらかじめ決めておく。


「俺は重い、水系や日用品を買って来る。式部は文房具を買って来てくれ」

「はい!……あ、でも包帯は私が買ってきますよ。太宰さんの分も買っておかないといけないので」


ちゃんと太宰さんの分は実費ですからね、と云い彼女はまず文房具売り場に向かったので国木田も日用品売り場に向かう。

 式部単体では善い人などだと国木田は思っていた。問題は式部に纏まり付く太宰なのだ。太宰は式部に構われようといつも彼女の周りをフラフラして、式部も其れを放っておけないように相手をする。そうすれば式部の仕事も妨害されるし、太宰も余計に仕事を放置してしまう。だが無暗に剥がそうとすると太宰が拗ねる、式部も落ち込むわで対応がし難い。そして式部の太宰がいないときの真面目さから強く云う事も出来ない状態だ。


(式部は太宰といると駄目になるじゃないか…?)


有能だからこその心配で、国木田は最近よくこう思うようになった。しかし、二人が別れると余計に効率は悪くなる。そして別れる事自体、国木田の理想とは違った。

 集合時間の五分前、国木田は会計も終え、待ち合わせ場所に辿り着いた。彼は式部が基本五分前にやって来る事を把握して同じ五分前にやってきた、のだが未だ式部の姿は見えない。国木田は周りを見渡すが、突然に建物一帯が大きく震えた。そして中から人が逃げて雪崩のように出て来た。


「爆発か!」


国木田は荷物を持ったまま、出て来る人を交わし中に戻る。

 爆発はそれ程大きくなかった方だが陳列していた商品は棚から落ち中は騒然としていた。そして騒ぎの中心に買い物袋を持った式部が居た。ナイフを持った主犯と思われる男に掴まれた子供を助けようとしているようだった。


「く、来るなぁ!!動くなよっ…動いたら此の餓鬼を殺すからなぁっ!」


男は激しく興奮しているようでナイフを式部に向け、子供の首を絞めるように掴んでいる。

 男を静かに睨み、隙を狙っている彼女の後ろに居るのは子供の両親が震え腰を抜かしていた。


「た、…助けて…おねえちゃん……」

「大丈夫、絶対助けるよ」


式部に泣きながら懇願する小学生中学年程の少年。式部は今にも号泣しそうな少年を安心させようと微笑んだ。しかし其れが男の癪に障ったのか、少年の首に刃先を向け、ゆっくり近づけていく。


「国木田さん!!」


少年が恐怖の声を上げた瞬間に式部は国木田の方を見ないまま声を上げた。国木田は音響弾を出現させる、すると其れは彼の目の前から消え、式部の手元に出現し、其処で音響弾は弾ける。

 音と光で男が怯み隙が出来、式部は一瞬で間合いを詰め、ナイフを奪い取り少年も救出した。

 怯んだままの男を国木田が簡単に抑え込む。


「流石です。国木田さん」


彼女はにっこり笑い、ナイフを国木田渡したあと、少年を両親へ返した。そのあと男を市警が引き取りに来て国木田たちも漸く帰ることが出来た。


「おねえちゃん!」


彼女が助けた少年がまだ残っていたのか式部に駆け寄って来たので彼女は少年の背の丈に合わせてしゃがんだ。


「助けてくれてありがとう!」

「いえいえ、怪我が無くて善かった」


笑顔を向けられ式部もはにかんだ。親にもお礼を云われているようで国木田にもお礼を云いに来た。殆ど動いたのは式部で国木田は、それもあって特に何も云わなかった。が子供に怪我がなく満足そうだ。

 事件もあって探偵社に戻るのは国木田の理想より遅れていた。


「早く帰るぞ」

「なら異能使います?」


速く歩きながらもぎりぎり式部でも追いつける速さであるいている国木田に彼女は冗談のように云う。確かに彼女の異能なら、一瞬で帰ることも可能だ。


「道路の真ん中で使うな」

「はぁい」


彼女は少しふざけたように返事をして、国木田に合わせて歩いた。国木田は式部を気遣い、少し歩く速さを遅くした。




著作者の他の作品

橙オレンジ様宅のアーネストと清原とのうちよそ。公式キャラは出て来ません。