御伽草子

🐙海棠緋寄⚔️
@Enph_hiyo12

花嫁+


二十五歳第一子出産。





「紫織ちゃーん!訊いてよぉ!」


太宰は家のリビングでテレビを見ている自分の嫁の紫織に泣きついた。二人共すでに四十を超える中年だが二十代を忘れない若さと熱を持っておりとても仲が良い。そんな二人には二十二歳の息子と十八歳の娘がいる。

 今日は太宰の誕生日なので仕事は休みなのだが平日なので娘の直は学校に行き、息子の光は出かけている。


「光ってば昨日の父の日も今日の私の誕生日も恋人の家にいるって云うのだよぉ!非道くないかい!?」

「…光も自立の歳は過ぎているし仕方ないのでは?」


彼の歳は二人が付き合い始めた歳と同じ、だから光が恋人の家に泊まっていても不思議ではない。


「だったら其の恋人を家に連れて来たらいいじゃないか」

「相手の子はこっちに独り暮らしらしいよ?」


彼は其れを訊かされ居なかったようで「え、」と声を漏らした。其れが何故かショックだったのか、太宰は紫織に抱き着いたまま動かなくなってしまった。

 成長するのは当然のことで其れが見れるというのはとても幸福なことだ。異能にトラウマを持っている光が明るく暮らしてくれるなら本望だとも思う。其れでも寂しさを感じるのが親と云うものなのだろう。


「光は貴方に似て、異性に善くモテるから彼女も光がふらふらしないか不安なんでしょうね」


紫織は太宰のふわふわの頭をなでながら呟いた。ふらふらするなんてあのヘタレな光がする度胸ないだろうけど、と紫織はお茶目に云う。

 すると玄関から「ただいま~」と直の声が聞こえて来る。「あ、おかえり~」と太宰が顔を上げた。直は高校の制服であるセーラー服で二人のいるリビングに入って来た。彼女はソファーの上でいちゃついている二人を見ると割り込むように二人の間に入ってじゃれついてきた。其れが嬉しくて微笑ましくて二人は一緒に直を迎えて抱き込んだ。


「えへへ~、お父さん、誕生日おめでとう!」


朝は忙して云えなくてごめんね、と太宰の愛する紫織に似た透き通るような綺麗な声で云う。


「有難う。とても嬉しいよ」


太宰は紫織と直を抱きしてて呟いた。すると直は太宰の腕からすり抜けると床に置いた鞄の中を漁り始めた。「ちょっとまってぇ」と云いわれたので二人は微笑み乍ら待っていると玄関扉がけたたましく開けられ、廊下を走る音がした後、リビングの入口から一人の男性が顔を覗かせた。


「光?恋人の家にいるじゃなかったの?」

「直に云われて還ってきたんだよ」


鞄から目を離して笑う直の顔は確信犯の其れだった。


「多分、家族全員で暮らせるのは今年が最後なんだもん。だから出来るだけ四人で居たいの…」


直は太宰と紫織に似て頭や勘が善い。太宰似の予測で光が家を出る時が迫ってきている事を感じ取ったのだろう。そして光は直には飛び切り甘い、彼女の頼みなら戻って来てくれることも計算していたのだろう。


「今日は四人で居よう?お出かけなんて要らないから此の家でいっぱい話そうよ」


明るくて周りの変化に敏感な直。結局は両親を大切に思う光。

 此の瞬間に太宰は紫織と結婚して本当に良かったと思ったのだった。




(え、お兄ちゃん、今日が二人の結婚記念日って知らなかったの!?)

(だって普通は誕生日から避けるだろ?)

(紫織からの誕生日プレゼントなのだよ)

(またそうやって惚気る……)

(因みにプロポーズは私の誕生日なのよ?)

((うわぁ…))

(…二人共非道くない?)


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