御伽草子

海棠緋寄⚔️
@Enph_hiyo12

川辺

探偵社の社員達で川に行くことになった。蒸し暑い都市部から離れ、一日だけの慰安。多忙な社員たちへの息抜きという事で福沢社長が立案したものだ。

 川辺では昼食の準備を始める国木田や谷崎とナオミが居ながら、水に近づきじゃれ合っている者が数名いる。乱歩と与謝野はマイペースに日陰のブルーシートの上に座って寛ぎ、敦は鏡花と遊んでおり、賢治は食べられる山菜が無いかと何処かに行き、太宰と式部の姿は何処にもない。


「敦、遊ぶのは善いがこっちも手伝ってくれ、此のままでは予定通りに昼食が取れない」

「あはい!判りました!」


個性豊かで様々な考えを持つ社員、其れは彼らの異能のように同じものは一つもない。だからか、協調性というものが低く自由な人が多い、作業を大人しくする者、逃げる者、変な方に意識が移る者、作業が出来るのを待つ者、様々だ。


「すみません!太宰さんが川で流れようをしているのを止めるのに手間取って…」

「いや~美味しそうな匂いを嗅いで流れるのを止めたのだよ」

「皆さーん!山菜が沢山獲れましたよ!」


何処かに行っていた三人が戻って来た。同じ方向から来たので偶々会ったようだ。

 国木田は得に太宰の行動に怒りを表し青筋を立てていたが谷崎や敦が止めたのでなんとか思いとどまった。

 賢治が獲って来た山菜は鏡花の手によってサラダや、持ってきた肉に添えるものに変わった。

 川と云えばバーベキューだ。肉や野菜を焼くだけで簡単なので此れになったが料理が出来る者が少ないことも関係している。昼食は上手くいき、特に問題が起きることなく、時間がた経ち、バーベキューの設備を片付け終わる頃にはまた水遊びが再開されていた。


「敦君って猫科なのに水遊びするんだ」

「え?…異能を発動したら厭になるんじゃないでしょうか…??」


歳が近い者同士でじゃれていた敦に式部が質問を投げかける。其の合間に彼に水を軽く掛けた。すると敦は驚いて後退したので水を掛けたナオミは「面白い反応ですわね」と楽しそうに呟いた。

 川は横幅に広いが深さが無い。小さな鏡花や賢治が川の中央で立っても膝に届くぐらいで、泳ぎが出来ない式部も、靴や靴下を脱いで歳に似合わず未成年たちと混ざっていた。恐らく彼等がもし溺れても異能で引き上げることが出来るからだろう。逆に太宰は式部が溺れる事が心配だったわけだが。


「ああ…水遊びをする紫織ちゃん…なんて可愛らしいんだ……」

「貴様、式部に関してだけ頭の螺子ねじが緩くなってないか?」


ん?と太宰は小首を傾げた。云っても無駄だと思った国木田は「何でもない」と訊くのを止めた。確かに容姿的には式部は悪くない、むしろ綺麗に整った分類だろう。しかし幾ら惚れた相手だからと云って同じ年の女性を可愛いと連呼出来るのか、此れからの歳的には可愛いより美しいの方が生き残れるだろうと国木田はなんとなく思った。

 其れに彼女の仕草などは育ちの善さが判る美しくしなやかなもので可愛いとはかけ離れていると思った。しかし考えが判らない太宰だ。国木田が知らない式部の可愛い部分を知っていても不思議ではない。太宰が太宰である前にあの二人は親密な恋人同士なのだから。


「お兄様!敦さん!行きますわよ!」

「ま、待ってナオミ!?」

「わぁ!」

「…!?」


ナオミが賢治と鏡花に協力を頼み、じゃれ合う感じで水を掛けた。其処に式部も近くに居たもので彼女にも大量の水が掛かった。加えて、賢治の異能が発動し、三人の頭上に降り注ぐような感じになってしまった。


「あ、加減間違えちゃいました」


賢治が謝罪したのも時既に遅し、3人はずぶ濡れで川の中で放心状態だ。川辺で一部始終を見ていた4人も苦笑いだった。そして3人が同時にくしゃみをしたのでタオルを持った与謝野や国木田や太宰が駆け寄った。

 夏で薄着だったこともあり3人とも身体を冷やしてしまったようだ。


「少しは加減しろ賢治」

「あはは、ついやっちゃいました」


賢治が国木田に軽く説教を受けている間、谷崎、敦、式部は与謝野が持ってきたバスタオルに身を包み、バーベキューの時に使った火に集まっていた。


「真逆、夏になって火に当たる事になるなんて……寒い」

「式部さんは特に薄着ですもんね」


暑さに弱い彼女は、ベストも何も着ず、シャツにリボン帯をつけた上半身に夏素材の薄い素材のスカートを穿いていただけだったので水に全身で濡れたことによって特に身体を冷やしていた。

 すると太宰が後ろから近づき、彼女の髪を結っていた結紐を解いた。急だったので式部は驚いて太宰の方に向いた。


「此のままだと本当に風邪引くから、髪を乾かしなよ」


そう云うと太宰は彼女の手荷物から取って来た櫛を使って髪を梳かし始めた。結紐は日光に当てて乾かし、包まったバスタオルの上に髪を梳かしたあと広げて乾きやすくした。


「有難う御座います太宰さん」

「礼には及ばないさ……」


突然黙り、式部の身体を包むタオルから濡れた服が覗く小さな隙間を凝視する太宰。式部はお礼を云った時の嬉しそうな笑みから冷めたような呆れの眼差しを向けた。谷崎や敦も察したように「あはは…」と空笑いを浮かべた。


「紫織ちゃん、あっちの木の影で私と…」

「其れこそ風邪引きます!!!」


紅潮させた顔で式部は彼を黙らせようと頬をむぎゅっと片手で掴んだ。彼女の顔が赤いのは、果たして火のせいか、其れとも…?

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