御伽草子

☀海棠緋寄🔪
@Enph_hiyo12

逢引

【#夢カプがリプで命令された事をやる】のリクエスト。


お題「逢引デート




部屋の中に朝日が入り込み、太宰と式部が一緒に寝てる蒲団に光が掛かり、窓の方を向いてた式部の顔を歪ませた。

 式部はゆっくりと目を開け、少しずつ状況を把握する。彼女は太宰の腕枕で眠っていたようで蒲団の中のもう片手は自分の腰辺りにあり抱きしめられているような状態になっていた。目覚め切らない頭で昨夜の事を思い出すが服を着ている辺り、添い寝だけで済んだらしい。


「太宰さん…起きて、ください」


彼の柔らかな頬をぷにっと押す。太宰の美しく整った顔を穴が開きそうな程に見つめていると、彼は口を開いた。


「…おはようの接吻キスで起きてあげる」


式部は呆れたように息を吐くが満更でもないようにはにかむと頬に接吻をする。すると太宰が動き片手で彼女の耳辺りに触れて唇に接吻をする。触れるだけのをすると太宰はにやりと悪戯気に笑う。


「おはよう。紫織ちゃん」

「おはようございます」


太宰は式部から手を放し、蒲団から起き上がった。彼女も自室に戻り準備を始める。

 今日は二人共非番が重なり、逢引デートをする予定だった。其のこともあり、太宰は少し楽しそうにしている。何時ものとは違う服に着替え、先に外の廊下に出た。少しして式部も自室から顔を出した。

 コットンの上品なミニワンピに薄く色の入ったレースのカーディガン。靴はヒールの入ったサンダルのようで彼女の長く綺麗な足を際立たせている。髪はいつものポニーテールではなくハーフアップになっていて、化粧も薄めだがちゃんと成されている。


「可愛いね」

「…褒めても何も出ませんけど」

「そうやって少し照れる紫織ちゃんが見れて私は満足だよ」


云われて式部は何故か少し悔しそうな顔をして顔を紅潮させる。太宰は楽しそうに「んふふ」と笑った後に、朝は何処で食べようかと聞きながら歩き始めるので式部も「そうですね…」と答えながら彼に付いて行った。

 社員寮から出て街中まで出ると二人は並んで朝食を食べる場所を探して歩き始める。二人にはまだ自炊するという習慣がないからだ。適当にカフェを見つけ朝食を取り始める。


「フレンチトーストの店かあ…女性ばかりだね」

「俗に云う女子力の高い店ですね」


周りの席には女子ばかりでカップルで来ている太宰でも若干浮いたような雰囲気だか、式部的にはちらりと太宰を見る女性たちの視線に少し苛立っていた。そんな彼女を知ってか知らずか太宰はメニューをお互いの中央に置いて見る。席は窓に面していて、隣り合うような席に加え、ダブルサイズなので自然的に距離が近くなっている。


「紫織ちゃんは何食べる?」

「其れほど重いのは善いです…」


ふーん、と声を漏らしたあと、太宰は少し考えるようにページを捲り、考えたあと定員を呼んだ。


「此のプレミアムテラスを一つで、ドリンクは…私は珈琲」

「……私は紅茶で」


かしこまりました、と定員が云い去って行くと式部は太宰に質問をする。


「如何して一つなんです?」

「私も紫織ちゃんもそんなに朝は食べないだろう?だから一つで十分だと思ってね」


其れに写真を見るに結構大きそうだったからね、と呟いて、先に出されたお冷に口をつけた。


「ん…凄い、仄かに檸檬の味がするよ」

「次亜塩素酸カルシウムを分解するためですね。最近はそういう必要もだいぶ不要になってますが、店舗側の気配りですね」


流石ちゃんとしている店だ。太宰は呟きながら出されたフレンチトーストを眺めた。大きな麺麭にバターが掛かり、徐々に解けている姿は何とも云えない。

 太宰はナイフとフォークで其れを切り分け始める。手慣れた手捌きで一口大で切り、式部に向ける。


「はい」


そう云って差し出されて式部は一瞬硬直してしまうが、大人しく其れを口にした。

 外はバターが焼かれていて少しサクっとしているが中はとろとろに柔らかく、口の中ですぐになくなってしまう。式部は頬をほんのり赤らめ瞳を輝かせる。其れを見て太宰はまた一口彼女に食べさせる。誠に楽しそうにしている。


「私にも食べさせてよ」


自分が食べさせたフォークを式部に渡すと彼女も一欠けらを太宰に食べさせた。彼も美味しいと頷く。

 太宰は少し横目で周りの客を見た。周りの女性たちは少し残念そうに溜息をついていた。


「そういえば何処から廻るの?」


今日、二人は複数の場所を見て廻ることになっているのだが特に見る順番を決めていない。すると式部はスマホを取り出して横浜の地図を取り出した。


「コスモクロックが最後で夕食の場所も予約済みなので、其れを考えて効率よく廻りましょう。まずは…」


夕食はレストランを予約しているので時間は決まっている、予約時間は午後六時、なので其れまでに全てを廻る必要がある。

 式部は地図に線を引き、短時間で効率善く廻れる道順を計算し始める。


「理系って皆こんな感じだよねぇ」


何かを思い出すように太宰は呟いた。此の呟きに式部は手を止めて太宰の方を見た。


「…ああ、森さんですね。確かにあの人に云われてエリス嬢との買い物に同行したときに近いものは感じましたが」


マフィアの首領、森は医者なので当然理系。式部も理系学科の卒業なので理系が濃い。そうなると物事の考え方は似通って来るだろう。

 式部は移動時間を脳内ですぐさま表化させると最適解を見つけ出し、場所を繋ぎ始め十分ほどで道順が完成した。


「与謝野さんも似た感じなんでしょうかね」

「さあ…?」


二人はカフェを出て、最初の目的地に向かう。

 太宰は式部の隣、車道側を歩いている。そして彼女の焼けていない細い手に少し目を向けた。実は、二人はまだちゃんと手を繋いだことが無い。接吻は何度かある。だが初夜はまだで、逢引の回数も仕事上少ないため街中で手を繋ぐことは余りない。

 太宰本人は初心ではない筈なのに式部相手となると如何しても何処か緊張してしまうようで少し戸惑っていた。そんな一方で太宰の中の彼女に触れたい、という慾は膨らんでいく。

 彼手の指の先まで手入れが行き届いている。見てすぐ判るような物ではないが、爪が少し光沢を持っているし、仕事に邪魔にならない程度に伸びた爪は綺麗に処理されている。上品さを出し、彼女の育ちの良さを再確認した。

 太宰は彼女の小指を親指と人差し指で摘まんだ。気が付いた式部は太宰を見上げる。不思議そうに首を傾げたあとに、悟ったように優しく微笑み、彼の手から小指を離したあと、彼の手を握った。


「ふふ…」


珍しい物を見た、と云いたげに式部は笑う。太宰は否定出来ないまま、耳を少し赤くさせた。

 昼は山下公園の近くで食事を取った。噴水や海、花壇に生けられた花を見ていると、逢引しているのだと漸く実感し始めた。飲み物を近くで買ってきた太宰が戻ってきて彼女の座っているベンチに座った。


「はい、紫織ちゃんの好きな、甘いやつ」


太宰が買って来たのはココアだった。式部は猫舌の気があるので太宰は熱いのではなく冷たい物を買って来て、彼女の頬にぴたりと付けた。

 「きゃっ」と短く声を上げて、肩を跳ねさせたあと太宰に渡されたココアを受け取った。缶の飲み口を開けて一口飲むと甘いココアの味と匂いが身体に入り、式部は楽しそうに笑った。


「楽しそうだねぇ」

「楽しいですよ。一日のんびり、太宰さんと逢引なんて、楽しいに決まってます」


笑う式部の幸せそうな横顔をまじまじとずっと見つめていた太宰。其の視線に気が付いた式部が顔を太宰の方に向けた。

 一瞬、時間が止まったように音が止まった気がした。周りの人の声が、後ろの、水の造形から吹き出る水の音で掻き消され、式部に感知出来たのは、自分の唇に触れている太宰の唇。そして2センチもない距離で見つめている櫨色の瞳。ふいにされた接吻に式部は呆気に取られて、唇が離れたあとも、唖然としていた。


「私も紫織ちゃんと一緒に居れて楽しくて、幸せだよ」


彼の言動に式部は、口をはくはくとさせ、顔を紅潮させて、脳内で最適な言葉を探しているのが判った。


「こ、公衆の面前、白昼堂々、接吻するの止めてください……恥ずかしくて堪りません…」


接吻された口元を両手の指で隠し、照れて顔を伏せる彼女を太宰は純粋に可愛いと思い。「忘れなかったらね」と曖昧な返答をした。其れを訊いた彼女は更に顔を赤らめて、「止めてくださいね!?」と太宰の胸板を軽く叩いた。

 自分の胸板をぽかぽかと殴る紫織の腕を掴み引き寄せて抱きしめると、彼女の赤くなる場所が顔だけでなく、耳や首の方まで広がり、「やめて~…」恥ずかしそうに掠れた声が聞こえて太宰は其れは楽しそうに笑みを浮かべた。



夕方になる頃には手を繋ぐ事にもすっかりなれて、恋人繋ぎで街を回り、食事の前の時間は、云っていたようにコスモクロックに乗った。

 夕日の光を反射して輝いている海、夜景となる光を放ち始めた建物の明かり、道路の街灯。其れらは自分たちのいる位置が上がって行くにつれ、しっかりと確認出来なくなり、ぼんやりとした明かりとなり、下から見るより横浜の街が穏やかに思えた。横浜に居ながら、普段生活している危うさを感じなかったのだ。


「此の中なら、幾ら接吻しても善いよね?」


そう云って前に座っていた太宰は、式部の隣のシートに移動して、密着してから彼女の唇に触れた。式部も抵抗することはなく、彼を受け入れ、太宰の背中に腕を回した。接吻の嵐は二人が観覧車から降りるまで続いた。




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公式IF

FGO夢主と銀腕の騎士の夢小説。うちよそ要素ありあり。