御伽草子

海棠緋寄⚔️
@Enph_hiyo12

起床

朝起きて、一番に思ったのは、此処何処?だった。

 私に与えられた社員寮でもなく、かといって紫織の部屋でもない。だが彼女は私の腕の中で小さく寝息を立てている。如何やら何かの間違いを起こした訳でもなさそうだが、何分此処に来た時の記憶が無い。紫織は覚えているだろうが、こんなに可愛い寝顔をしているのに起こすのは勿体ない。一先ず彼女の此の可愛くそして天女のような寝顔を保存しようと身体を少し起こし自分の端末を探す。其れはベットの脇にあるスタンドの上に置かれていた。服も其処に合った。


「寝顔激写」


音が響かないようにシーツを使い音を吸収させて写真を撮った。

 端末を元の場所に戻して彼女の頭を優しく撫でる。そして髪を束のようにして自分の鼻に近づけ匂いを嗅ぐといつもと違う匂いがした。此処の洗剤だろうか。頬に触れてみるが荒れている様子もない。保護はしっかりなされているようだ。となると、突然の成り行きで此処に来たわけでもなさそうだ。

 そうなると特に急ぐ必要もないだろうから私は二度寝しようと彼女と再度抱きしめようとするとひとつ違和感があった。彼女は襯衣を着ている。紫織のではなく私の。

 夜の間の記憶が何故かないので如何して彼女が私の襯衣を着ているのかが判らない。紫織は匂い嗜好な所があるので私が寝ている間に着た可能性があるが、何故に下はパンツしか履いてない状態で襯衣一枚……新手の誘いとか?


「……んぅ…」


そんな事を思っている間に紫織が動いた。すぐ近くに窓があり、カーテンの隙間から通る日の光が眩しいのだろう。

 彼女は私の腕の中でもぞもぞと少し動いた後、ゆっくりと眠たそうに目を開けた。数秒間、精気が入らない藤色の瞳で私を見つめたあと、気が付いたように急に目が冴え、紫織は其れは可愛らしく微笑んだ。


「おはよう…治さん」


私の胸に顔をぐりぐりと押し付け挨拶をした。敬語もなく名前呼びもとなればそういう事があったのは明白だ。私は未だに思い出せないので、寝ぼけた風に聞いた。


「おはよう紫織ちゃん…此処何処…?」

「東京…」


あ、思い出した。昨日、私と紫織は東京出張に出ていた。昨日の朝からの仕事で夜には仕事が終わったので、二人で此のホテルでしこたま酒を呑んだのだ。私が此処に来た経緯を覚えていないのは仕事だったからのようだ。

 紫織は私の手を自分の両手で包み握ったあと、頬ずりした。すると包帯が緩んだので紫織は巻きなおそうとするが、私はあとで包帯変えて。と彼女に囁いた。紫織は頷くと私の手をぎゅっと握った。

 彼女は少し呆れたように私に云う。


「どうせ、覚えてないんでしょう…?後半は貴方の方が意識飛びかけてたので」


善いもの見れたので許します。と彼女は楽しそうに笑った。私の襯衣を着ていたのも私が気絶に近い寝落ちをしたかららしい。


「覚えてないけど、結構な醜態だったのだろう?」

「結構可愛らしかったですよ。覚えていたら照れた治さんも見れると期待していたんですけどね」


頬をほんのりと染めて楽しそうに笑う。小さくて細くて、華奢で。そんな紫織を私は昨夜、どんな風に犯したのか、彼女の愛しい笑い声を聞きながら想像した。









著作者の他の作品

公式IF

異能力使用可能のサバイバルゲーム・流血表現アリ・うちよそ要素アリ