音にのせて

高原瑠璃
@ruri_takahara

2章ー現在  第23話 新学期

この小説は夢小説 (名前変換ができる小説) です。
キャラベルに登録してログインすると、登場人物の名前をお好きな名前に変更できます。

9月に入り、長かった夏休みも終わりを迎えた。

私と景吾はまた一緒に学校へと登校する。


「行くぞ」


車から先に降りた景吾が、私へと声をかける。

景吾の私を見る瞳があまりにも優しく細められていて、普段は見せないような柔らかな笑顔をしているから、それだけで私はドキリと胸が高鳴ってしまう。

私は小さく頷きながら、景吾の横を並んで歩く。

そんな様子を見た景吾は小さく笑った。


「意識し過ぎだ」


私の耳元で囁くように言われると、私は耳元を抑えながら勢いよく景吾から少し距離取りつつ、顔を見上げた。私の反応が面白かったのか、景吾はクツクツと笑っている。


心が通じ合って初めての登校に、私は朝から落ち着きがなかった。

そんな私の気持ちを知ってか、景吾は私の反応を見て楽しんでいるようだった。


「ホント、お前は反応がいちいち可愛いな」


景吾は軽く私の頭を撫でると、「行くぞ」と再び声をかけ、校舎へと向かって歩いた。


私は景吾に撫でられたところに触れる。心臓は未だにドキドキと早鐘を打っている。

ふと、左手に付けているブレスレットに目が止まった。ペリドットの宝石がキラリと太陽に反射して光っている。


あの日から、毎日付けている。

これを見ると、夢のようだった出来事を現実だと思わせてくれる。


“…好きだ、奏”


“…今日から、お前は俺のもんだ”


あまりにも嬉しくて、あれは私が見た夢だったんじゃないかと何度も思った。

でも、景吾の表情や行動、そしてこのブレスレットを見ると、現実にあった出来事だったんだと実感できる。それがまた嬉しくなってしまい、つい顔がニヤケそうになる。


「おはようさん、奏ちゃん」


その時、私の頭を撫でながら声をかけられ、私はその人物に視線を向けた。


「おはよう、侑士君」


見ると、侑士君が笑顔を向けてくれていた。


「どないしたんや?ボーッとして」

「あ…ううん。何でもないよ」


景吾のことを考えてニヤケていたなんて、恥ずかしくて言えるわけもなく、私は誤魔化すように笑いながら返した。


「ふーん…お、それ、どないしたん?」


すると、侑士君は今度は私の左手を取りながら、付けているブレスレットを見た。


「あ、それ…」


私が言葉を続ける前に、肩を引っ張られるような感覚に驚き、言葉を止めた。

その拍子に、侑士君が握っていた私の左手は離され、私は何かが背中に軽く当たった。

振り返ると、先に行っていたはずの景吾の顔が近くにあった。


「忍足、今日からこいつに気安く触るな」


急に言われた言葉に、侑士君は呆気に取られたような表情をしていた。


「は?跡部、急に何言うてんねん?」

「だから、俺様の彼女に気安く触るなって言ってんだよ」


その言葉に、周りにいた生徒達もが驚きの声を上げた。


「か、彼女て…跡部、ホンマに…?」

「当たり前だろ?…行くぞ」


驚きを隠せない侑士君をそのままに、景吾は私の手を引いて校舎へと向かった。


「ね、ねぇ…良いの?バレちゃって…」

「別に隠すものでもないだろ。悪いことしてるわけじゃねぇんだから、堂々としてればいいんだよ」


そう言って不敵に笑う景吾に、また私の心臓はドキドキと脈を打つ。

景吾といると心臓がもたないんじゃないかと思ってしまう反面、そのドキドキを、私は幸せに感じていた。






朝の1件で、私と景吾のことは瞬く間に学校中に広まってしまった。

廊下を歩いているだけで周りの生徒がコソコソと噂をしている。

それが少し気になってしまうが、仕方のないことと割り切ることにした。


そんなことを思いながら廊下を歩いていると、遠くから呼ぶ声が聞こえた。

視線を向けると、遠くからジロー君が手を大きく振っていた。

そして、その横には宍戸君の姿もあった。

宍戸君は私と視線が合うと一瞬逸らしたが、小さく笑顔を向けてくれた。

そんな宍戸君に、私も小さく笑顔を返した。

ジロー君はこちらに足早に向かって来て、その後ろを宍戸君が追うようにやって来た。


「これから最後の部活に行くんだけど、奏ちゃんは行かないの?」

「うん。今日は用事もあるから遠慮しようと思って」


今日は3年生最後の部活なんだと、景吾が言っていた。

新しい部長も今日発表され、新体制のスタートとなるらしい。


「…跡部とのこと、おめでとう」


その言葉は宍戸君から投げかけられた。

私はその言葉に一瞬驚き、宍戸君へと視線を向けた。

宍戸くんは、優しく、だけど少しぎこちない笑顔を向けていた。


「あいつ、俺様で自信家で勝手なところもあるから大変かもしれないけど、よろしくな。泣かされるようなことがあったら、俺やジローに言えよ?」


宍戸君は、優しすぎる…。

私はその宍戸君の優しさに胸が熱くなり、涙が零れそうになった。

しかし、私はグッと堪えると、宍戸君へ笑顔を向けた。


「…ありがとう」


宍戸君は「おう」と小さく答えると、「行くぞ」とジロー君に声をかけ、踵を返した。


「…奏ちゃん、ありがとう」


ジロー君は宍戸君の背中を見つめていた視線をこちらに向け、笑顔で続けた。


「跡部とのこと、俺はスッゲー嬉しいよ!跡部のこと、よろしくね!!」

「…うん!」


私の返事を聞くと、ジロー君は手を振って宍戸君の背中を追いかけた。






ジロー君達と別れたあ後、私は1つの教室へと入った。

そこは、進路指導室。

氷帝学園大学に付属している高校のため、ほとんどの生徒は氷帝学園大学にエスカレーターで上がっていく人達がほとんどであるが、中には他の大学に行く生徒のために、この進路指導室には全国の大学の資料が揃っている。

私はずらりと並べられている資料の棚を、順番に見ていった。

そして、目当ての物を見つけ、その資料に手を伸ばした。


「…東郷音楽大学」


資料に書かれた名前を、私はぽつりと呟いた。