とあるカルデアのマスターとサーヴァント【最古の王の場合】

焦がし木炭@yokko
@yokkkkkkkkkkko



「そういえば」


 ある日の昼下がり。L字型のソファの上でひじ掛けを背凭れに私用の端末をいじりながら、人類最後のマスターだった少女は徐にそう口を開いた。


「こないだ職員の人に、よくあの英雄王相手に普通に喋れますねって言われた」


 その言葉に、少女と同じようにもう片方のひじ掛けを背凭れに寛ぐ男が顔を上げる。


「急に何を言い出すかと思えば、また色気の無い話題を選んだものだな」

「王、私に色気なんか求めてんの?」

「愚問だ、たわけが」


 間髪入れずに返ってきた答え――是とも非とも取れるが恐らく非だろうと彼女は考える――に、でしょうとも、と頷きながら少女は端末を動かしながら続けた。


「あのウルク王ならまだ分かりますがって言われちゃって思わず納得したよね」

「ほぉう」


 威圧感のある相槌の声に顔を上げると、中々に凶悪な顔をした男――件の英雄王・ギルガメッシュのピジョン・ブラッドの視線が刺さる。


「この我を語る場で他の我を出すとは、よほどその首要らぬと見える」

「そういう所が原因なんだけどなー」


 いい度胸だと不穏に笑うサーヴァントに小さく肩を竦め、彼女は端末を下ろしてソファの背凭れに頬杖をついた。


「実際ウルクの彼・・・・・は君よりいくらか丸かったし、仕方ないんじゃない?」


 少女の言葉に男はふん、と鼻を鳴らす。


「見目が変わろうと、クラスが違おうと、我とあれは同一のもの。特異点とやらの影響で多少の差異は生じようとも、その本質は何も変わらん」


 比較するだけ無駄なことよ、と言葉を続けながら、ギルガメッシュは読みかけの本を置いて腕を組んだ。


「して、貴様は何と答えたのだ」

「え」

「抜けた顔を晒すでないわ。よもや、それで納得して終わった訳ではなかろうな」

「えー、いやぁ、うーん」


 その問いに、意味の無い声をあげながらどう言ったものかと悩む。彼の言う通り納得して終わった訳ではないが、果たして自分が答えた内容を素直に言ってよいものか。


「……知りたいの?」

「たわけ。我が知りたいのではない。貴様が言いたがっているのを聞いてやるだけだ」

「あ、はい」


 積極的に言いたいと言った覚えはないが、いつものことだ。んー、と少し言葉を探し、彼女は素直にこう言った。


「怖くないから、平気ですよ、って」


 マイルームに沈黙が降りる。次いで噴き出す音が一人分響き、男の笑い声が空気を揺らした。


「フッ、フハハハハハハハハッ!! なんだその平和極まりない回答は! 相変わらず妙に我のツボをつきおって、我を笑い死にさせる気か貴様!」

「そんな死因残念過ぎるから頑張って踏みとどまって」


 ある意味慢心死より性質が悪い。ソファの上で笑い転げるサーヴァントに、そのマスターは小さく息を吐いた。慣れたら割と分かりやすい部類だと思っているが、この男の笑いのツボだけは未だによく分からない。


「――――は、しかし貴様も、王を指してそれを恐れぬとは、度胸だけは一人前よな」

「敬意はあるよ? 敵に回られたら怖いし嫌だなぁとも思うし」

「たわけ。そういう話ではないと分かって言っておるだろう貴様」


 一通り笑って気が済んだらしいギルガメッシュは身体を起こしてにやり、と笑った。


「貴様一人の命を刈り取ることなど、王には造作の無いこと。それが分からん貴様ではあるまい」

「うん。でも」


 そもそも、彼女の立場では彼を恐れるべからざる重要な前提がある。


「怖がってたら、サーヴァント大事な戦力として使えないでしょう?」


 サーヴァントとは使い魔であり、マスターはそれを使役する者。使う側が使われる側を恐れていては、その力を真に発揮させることは不可能だ。


「――――――く、」


 男の口角が吊り上がり、ピジョン・ブラッドが獰猛に光りながら心底面白いと語る。


「そんなことで王への恐れを捨て、存分に使おうとするその強欲さ。つくづくこんな辺境で眠らせるには惜しい娘よな、貴様は」


 食われそうな錯覚を覚えるほど強い視線を見返しながら、世界を背負いきった少女はそれほどでも、と男と同種の笑みを浮かべた。


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