【文スト】うちの子でハウルパロ

🐙海棠緋寄⚔️
@Enph_hiyo12

一幕、出逢い・空中散歩

式部は姉弟の勤めている店に向かうために出かけていた。今は街に人が溢れているので人を避けて狭い路地を歩いていた。

 店の地図が描かれた紙を見ながら進んでいると男性が自分の道を塞いでいることに気が付くのが遅れて彼女は少し驚いたあと、その男性の顔を見た。

緑の兵隊服を着ている衛兵で、肩から紐を使いマスケット銃を下げていた。


「やあ、子ねずみちゃん」


見た目好青年だが彼女は警戒して固まり、口を動かすが余り声が出ない。


「ご案内しましょうか?」

「…いえ、結構です」


断っても何度も話しかけてきて彼は彼女を通す気はないらしい。


「ではお茶でもいかがでしょう。ご一緒願いますか?」

「……用事がありますので」


顔を伏せて目を合わせないようにしているを他にももう一人男性がやってきたのが判った。彼も同じ格好。

 男性が式部に絡んでいたのを見ていたのか其れに加わるように話かけてきた。


「本当に子ねずみちゃんだぜ」

「ねえ、君幾つ?此の街の子?」


元から近い距離だったが、余計に近寄ってきて圧迫感を感じて、怯えていた式部だが、速く店に行きたいという気持ちと怯えが混ざり、


「通してくださいッ」


上擦った声で抵抗を見せたが効果は無し、其れ何処とか更に相手の興味を煽ってしまったようで、式部は心の中でかなり焦っていた。

 すると突然、ふわりと音が付きそうな優しい触れ方で肩を抱かれた。


「探したよ」


声も、その物に香りがあるように美しく綺麗で、彼女は聞き入ってします。


「誰だ君は」

「この子の連れさ。悪いが君たち、少し散歩してきてくれないかい」


険悪な声を衛兵は出したが、彼女に触れてきた男性が指をまるで指揮棒のように振ると其れに操られるように彼女がやって来た道の方に、声と動きが合っていないまま歩いて行った。


「許してあげなさい。気は善い連中だから。……行先はどこかな、私が送ってさしあげよう」

「え、あの、帝の店に行くだけですから」


そういうと彼は、自分の口に指を当てて「しーっ」と息を漏らす。


「静かに、追われているんだ。」


そして式部を助けた、黒に近い茶色の蓬髪の男性は彼女を連れて歩き始める。彼女に合わせるように歩きながらも何処か早く歩いていると、二人の後ろからなにやら怪しい音と気配を感じ始める。


「ごめん、巻き込んじゃったね」


式部は少し後ろを確認してしまう。自分たちの後ろには黒い人とは思えないような動く物質が追ってきていた。先ほどとはまた違う恐怖で式部は男性にしがみ付く。彼は気にすることなく、足を速め幾度も曲がり角を曲がるが、途中で行き止まりが見えた。男性は足を止める事も、引き返すことも無く、云う。


「其のまま――」


跳躍するように足を踏み込むと式部は男性ごと一緒に宙に浮いた。

 男性は慣れたように空を歩き、驚いている式部に指示を出す。


「足を出して、歩き続けて」


足を云われた通り普通に歩くように動かすと、空にある見えない床を歩いているようにすらすらと歩き始める。

 男性は式部の手を握り、後ろから支え、ダンスのように軽やかに式部をリードしていく。

 踊るように歩いていくと人の多い大通りに出る。下の広場では沢山の人たちがダンスをしていた。其れを上から見ていると彼女はなんだか楽しく思えて、少し頬を染めて微笑んだ。すると男性も端正な顔を少し緩める。


「上手だ」


お互いは見つめ合いまた微笑む。

 そうしていると、時は一瞬で目的地に到着した。男性は彼女を店のベランダに下した。式部が床に足をつけるまでしっかりと手を繋ぎ、彼女が下りた事を確認すると、するりと滑らせるようにして手を離した。


「私は奴らを引き付けておく、君は少し後で出なさい」

「はい」

「いい子だね」


ベランダの手すりに立っていた男性は其のままなんの躊躇いも無く、其のまま落ちて行く。

 式部は驚いて下を覗いたが下には踊っている人たちしかいなかった。

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