直感

日常生活のなかに、違和感だらけの思いがひとつ。少しずつ飼い慣らしているうちに、見えてきた答えがある。


この思いを捨てることは、きっと俺自身を捨てることなのだ。


俺は、あいつが、好きだ。



***



持て余した感情はいつだって不格好だ。体のいい言い訳も、結局は何の解決にもならない。


そうして色んなものを諦めてきたせいか、俺の描く世界はいつもどこか不自由だった。貪欲に求める理想はあるのに、いつだって透明な壁が見えていた。


目を閉じれば、打ちつける雨のなか激しくドアを叩く音がする。死に物狂いで助けを求める声が、時を越えて響いてくる。


遠い日に閉じ込めてしまった、大切なもの。聞こえないフリが出来たのは、あのときだけだった。



***



屋上のカフェに、一陣の夜風が吹いた。2人で座った防波堤が静かに脳裏によみがえる。


「俺は『皆で』じゃ嫌なんだ」


あいつの瞳が揺れる。


「お前のせいだ」


初めての昂揚に包まれる


「一弥……?」


夜風に吹かれたあいつの髪が頬にかかったとき。俺はあらためて噛み締めた。



***



好きだ。


俺を無限に壊してくれるお前が。


透明な壁の向こう、鮮やかな世界を予感させてくれるお前が。


どうしようもなく馬鹿で、かなしいくらいに傷つきやすいお前が。



***



鼓動はどんどん加速して、想いが体中の血管を駆けめぐる。隠すのが惜しいくらい、愛おしさが胸いっぱいに溢れる。手を伸ばせば、あいつの髪が素直に指に絡んだ。


そして、どうしようもなくわかってしまった。


あいつはもう、俺から逃げない。

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