深愛に溺れる

奏穏 朔良
@kanonhanamai

愛されたい2

「‥‥え、なんだったの今の‥‥」

「‥‥さぁ‥‥?」


突然の告白という爆弾を落としていったあの後輩の背中をただ見る。

見つめる、なんて甘いものではなく驚きにより思わず、という感じに見ている。


クラスの人たちもハッとすると一気に私の机に群がり始めた。


「え、なに今の子!?知り合い!?」

「なんて返事するの!?」

「加宮は好きなの!?」


と次から次へと質問が投げられる。


「いや、面識はないはずなんだけど‥‥」


そう答えるとじゃあ、むこうの一目惚れ!?と黄色い声が飛び交う。


面識はないはずなのだが、なぜか何処かで見たような気もするのは気のせいだろうか。


しかし、私は後輩との接点など部活動くらいでしかない。


さらに私の所属する部活動は女子バレーボール部。


男の子の後輩などいるはずがない。


いたら困る。


 


「夢芽、気をつけなよ?ただでさえひかる彼氏と別れてピリピリしてるからさ。」


「いや、初対面の子となんて付き合わないって。名前も知らないし。」


「‥‥いや、別に付き合ってもいいとは思うけど、あの子にばれないように‥‥」


「だから付き合わないって!」


 


笑いながら大丈夫、と言えば少し不服そうにもそう‥‥、と言葉をこぼした凪。


私の付き合わない、という宣言にまわりも興を削がれたのか段々私の机の周りから居なくなっていく。


 


そろそろひかるがもどってくるね、と言いながら教科書をカバンから出し始めると不意に凪が呟いた。


 


「‥‥でも、夢芽には‥‥あのくらい思いっきり愛を宣言してくれる人が傍にいる方が良いのかも‥‥」


「なにそれ。私はだいじょーぶだって!」


 


にっと笑って凪を見れば凪は眉尻を下げ、曖昧に笑い返した。


きっと凪は心配なのだ。


 


凪は私を表だって庇護することができない。


そうすれば余計にひかるは私に当たるからだ。


だから凪はあまりメールのトークにも参加しない。


 


そのせい、と言うのもおかしいかもしれないが、自分が庇護出来ない分、心にかかる心配も重いのだろう。


気にしなくてもいいのに。


 


「あ~先生話長すぎ!」


「おつかれ~」


「あ、夢芽。死ね。」


「辛辣だな。」


 


ふと耳に入ったひかるの声に後ろを振り返れば吐かれた言葉。


ひかるは笑顔でその言葉を言っているし、私もふざけた口調で答えを返す。


 


でもわかってる。


ひかるはふざけてじゃなくて本気で言っているんだって。


 


「だってうざいんだも~ん!」


「ひっどいな~!」


 


‥‥笑顔を張り付けるなんて作業、もう慣れたから。


だから、君は気付いていないんでしょう?


 


私がこんなにも


 


 


 


 


「‥‥死んじゃいたい‥‥」


 


 


 


 


追い詰められていることに。


 


 


 


 


私の何がいけなかったのかな。


 


『また切っちゃった♡』


 


そうやってき続けるメールにも一つ一つ丁寧に返して、親身になって答えを選んでいたはずなのに。


 


『早く死ねよ♡』


 


私はどこで答えを間違えたのだろうか。


 


『お前ってさ、この世界に存在しちゃいけないゴミだよな♡』


 


‥‥ああ、そうか。


 


「最初(存在)から間違いなんだ‥‥」


 


 


『先輩の事が好きです!いえ、もはや愛してます!付き合ってください!!』


 


ふとあの後輩君の人懐っこそうな笑顔が浮かんできた。


 


明るい、心からの笑顔。


色で表わすならオレンジや赤が似合いそうなあの男の子。


 


私とは正反対な男の子。


 


「‥‥もう一度会ってみたいな‥‥」


 


好きとかそういう感情ではなく、純粋に彼という人間がどういう人間なのかが気になった。


 


だってこんな私に公衆の前で好きです、なんていうような人間だ。


頭のねじが2、3本ぶっ飛んでいてもおかしくは無い。


 


知りもしないのにこんなこと言っては失礼なのだけれど。


 


珍しく今日はカミソリをどこにも使わないまま、布団のなかに身を沈めた。