ぷりぱら 出逢い編

海月 奏。@喪失至上主義
@sea_moon_18

case by みよ★

 最近、繭子の様子が変だ。何処か上の空というか、なんか夢見がちというか。


「おい、繭子、…...おい!」

「え? あ、なんだ、あんたか」

「おいおいおい、車道に出ようとしたところを引き留めてやった命の恩人に対して、あんたとはなんだ、あんたとは」

「あ、そう」


 確かに繭子は昔から人とズレてるところのある奴だけど、最近のズレはなんだかヤバイ気がする。これは長年の幼馴染みの勘ってやつだ。


「気を付けて帰れよ? なぁ、聞いてる?」

「あ、うん、じゃ」


 そのままふらふらと歩き出す繭子を放っておけず、俺は尾行することにした。


***


 繭子は何故だか家には向かわず、電車に乗り街へ。これは……やっぱり危険な匂いがする……!

 あいつに何かあったら俺が止めてやらなければ...…。なんて思っていると、繭子は目的地に着いたようだった。きょろきょろ辺りを見回して、汚い雑居ビルへと消えていく。俺も足音を消してついていく。

 コンコン、と扉を叩く繭子。中から誰かが返事をしたようだが、声だと男か女か分からない。


「失礼しま~す♡」


 繭子はこれ以上ないってくらいの微笑みを浮かべて室内へ。これはやばい。やばすぎる。突撃するか? いや、まだ証拠は何もない...…。だがこうしてる間に、繭子が悪の手に落ちてしまうのではないかと思うと、居ても立ってもいられず、俺は。


「たのもー!!」


 ドアを蹴り開けていた。

 中には仰天している繭子と、美人でもなくブスでもなく平凡そうな女が一人。だが悪の手先はこういう平凡そうなのが一番怪しいんだ! そうに決まってる!


「おいお前! 勝負しろ!!」

「...…はい?」

「!?!?」


 とぼける女と恐ろしい顔で睨む繭子。

...…くっ、負けてたまるか...…!


「お前、繭子をユーワクしてる悪の手先なんだろ!!」

「ちょ、馬鹿! 謝りなさい!」

「へ? まーこちゃん、知り合いなの?」

「...…うっ...ち、違います...…!!」

「俺は繭子の幼馴染みだ!! この、悪い大人め!!」

「黙りなさいこのあんぽんたん!!」


 繭子が走ってきて、何故だか頬を抓られている。


「あだ、あだだだだだだだ、や、やめへくらはい、あだだだだだだ」

「もう! ほんとに!! あんたってやつは!! このポンコツ!! なんで尾行してんのよ!! 変態!! 信じらんない!!」

「いだい、いだい、ずみばべん、いだいれずうううううう」


 話を聞くとどうやら繭子は、その平凡な女にアイドルとしてスカウトされて、この事務所(事務机と古くて固いパイプ椅子しかない狭い部屋)に通い始めたらしい。最近の様子がおかしかったのは、疲労感と今までにない満足感で胸がいっぱいだったから、だそうだ。

 でも俺はそんなの納得しないぞ。しかもアイドルデビューするのはここじゃない、プリパラだとかいう場所だというじゃないか。嘘かもしれない。証拠はあるのか。

 そう詰め寄ると、プロデューサーのぴーこ(こいつ、本名は名乗らないらしい)が突然言いやがった。


「じゃあ君もアイドルになっちゃいなヨー」


 なんだそれ、何処ぞのアイドル事務所の社長じゃあるまいし。


「嫌です! こいつなんかと一緒にデビューなんて!」

「なんだと!?」

「一番近くでまーこちゃんを見張ってたらいいでしょー? ワタシが嘘つきじゃないって証明にもなるしー」

「...…それは...…名案だな...…」

「駄目!! プリパラは男子禁制のはずでしょう!? こいつは男です! 無理です!」

「ううん、なれるよー、女の子に変身すればいいだけだもーん」

「「はぁぁぁぁ!?!?」」

「プリチェンについては説明したでしょ? プリパラの外とは違う姿になれるの。だからまーこちゃんは誰にもバレることなくアイドルになれるよーって話だったよね?」

「うぅ...…そうですね...…」

「それと理屈は同じ。そこの彼も女の子の姿を借りれば全然OK~」

「いやいやいやいや、ちょっと待ってくれよ、俺は嫌だぜ...…!?」

「うん、別に強制じゃないよー、でもいいのかなー? まーこちゃんがプリパラにいる間は君は何も出来ることないよー?」

「なっ...…!!」

「いいの! あんたはこっち側にいたらいいの!! 来なくていいの!!!」

「...…やります」

「はぁ!? 話聴いてんの!?」

「俺、アイドルやります」

「男に二言はないね?」


 ぴーこはニヤリと笑った。これが罠だとしても、一番傍で繭子を守れるなら、なんだってやってやるさ。


「勿論です!」

「嘘でしょ~!?」


 歓喜の笑みを浮かべるぴーこと、項垂れ膝を着く繭子。


「よろしくな、繭子。俺がお前を守ってやるからな」

「...…余計なお世話よー!!」


 腹に良い右ストレート。お前の為なら、このくらい屁でもない……ぜ……ぐはぁ。


***


 これが、男なのにアイドルになった理由。


「ところで君、名前は?」

織田おだ 澪夜れいやだ」


 名前を紙に書いて見せる。ぴーこはそれを見て暫く唸った後、閃いたのかパソコンに向かって何かを打ち込んだ。


「君のアイドル名、みよちゃんね!」

「は?」

「漢字、そう読めるから覚えやすいしょ」

「え、ちょ」

「それから今度着る衣装はこういうのだから」


 それは勿論女の子の服で、スカートにヒール、ぴっちりボディラインで、俺は速やかに眩暈を起こし倒れたのだった。


「男に二言は?」

「ないっす...…うううう...…」

「……だからやめとけって言ったのに」