嘆きのoltremare -蒼蓮華伝-

柚妃@うさまらーさんと仲良くなりたい
@weisswinde

乱戦

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(……瞼が重い…)




なかなか開かない瞼をようやく開くと見知らぬ天井が映る。日本家屋の天井。


直ぐ近くに温もりを感じ、視線を向けると漆黒の髪の端正な顔立ちの少年の寝顔がそこにあった。

驚きのあまり、飛び起きそうになって気付く。

彼の腕が優しく自分を包み込んでいることに。


冴えてきた頭で振り返り、思い出す……昨日の出来事を。



広がる絶望感。消えてしまいたいという願望。


このひと月がどれ程自分にとって幸福な時間であったかを痛感する。




(……もう…戻らない………)



凍りついたように表情は失われていく。


覚悟していたはずなのに……


どこまでも中途半端な自分に嫌気が差す。


溢れる涙を拭うため体を起こそうとした瞬間に体を引き寄せられて温もりの中に捕らえられた。




「……きょう…や……」



「……思い出さなくていい。」




狡いくらい優しい声。



また、涙が溢れだした。




「……わたし……」



「……ん?」




「…からっぽに……なっちゃった……」




雲雀の胸に縋り付く。まるでぽっかり空いた胸の穴を別の何かで埋める様に……。




「なら、僕が埋めてあげるよ」




体を離して告げられる言葉に溢れる涙。



静かに目を閉じ、蓮華は身を委ねた。







泣き疲れたのだろうか。現実逃避なのかもしれない。

ぐったりと力無く自分に抱えられる蓮華の姿にやるせなさを感じる。何もできない自分が悔しい。気の利いた言葉すらかけられない自分が情けなくなる。


意識を無くした彼女の額に口吻ると抱き締め直す。

眠りで彼女の傷が癒えるわけじゃない。わかっていても…夢の中でだけは悲しまないでほしいと。







あの日から蓮華は笑わなくなった。正確には泣くという感情以外の感情の起伏が無くなってしまったのだ。



「…蓮…」



「……ゴメン」



「謝らなくていいから、少しは食べてよ」



「………欲しくないの」




この数日、水以外の物を口にしていない蓮華に業を煮やし、声を掛ければ、それを予想していた様に謝罪の言葉が返される。



謝れど、食べ物を口に運ぼうとはしない。こんなやり取りが毎食時繰り返されている。みるみる間にやつれていく蓮華を前に自分の無力さを痛感する。


縁側に腰かけながら、手入れの行き届いた庭を眺めているが、一人で座ることすら出来ず、柱にもたれ掛かっている。その痛々しさを目の当たりにすると必死に考えた言葉も喉から先にでなくなった。




目の前に置かれた器を見つめる…いつもとどこか違う。



目の前に置かれたのは取っ手のついたスープ皿。中には黄かかった半透明のスープ。中には数種類の野菜が入っているらしく、皿のそこにとどまっている。スープが珍しいわけではないが、何かが引っ掛かるのだ。


最近はあまり使われていなかった頭は珍しく稼動する。



先の真ん丸な小ぶりのスプーンを器に沈めると小さめに切られた不恰好な野菜達が顔を覗かせる。




「……つくって…くれたの…?」




彼はなにも言わない。そのまま、静かに視線を逸らす。



肯定だ。



普段は全く料理などしない事は、共に過ごす時間が多くなって知った。



蓮華は静かにスプーンをあげると唇まで運ぶと蓮華の目から泪が溢れる。



彼女が作る料理と比べれば大したことないあろうそれを口にしながら泪する彼女をこの上なく愛おしく思えると同時にやるせなさが広がった。



器に盛られたスープを空にすると蓮華は静かに雲雀を見つめる。以前と変わらぬ眼差しなのにどこか変わったように感じた彼は何も言わずに彼女の頭を抱き込むと彼女もまた何も言わずに彼の背中に手を回した。



暫くすると穏やかな寝息が聞こえてくる頃には彼女の体からは力が抜けてる。布団に運ぶといつもより穏やかな寝顔に安堵の笑みが溢れた。




だが、彼女の悲しみを晴らすことはできていない。小さな一歩はやはり微かなものでしかないのだ。




時間だけが過ぎていく……そして、解決にはならず、このままでは良くない事が起こる気がした。




そう……この子の心を繋ぎ止める何かを探しださなれば、失ってしまう気がしていたのだ。






その予感は雲雀の想像よりも早く、突然的中してしまう。





Continued.





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