嘆きのoltremare -蒼蓮華伝-

柚妃@うさまらーさんと仲良くなりたい
@weisswinde

乱戦

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「誰が……貰うって?」



ドカッと鈍い音が響くと凛とした鈴音のような声が続いて辺りに広がる。今まで黙って大人しくしていた彼女の逆鱗に触れたのだ。雲雀は溜息を漏らすと近くにいた男を再び咬み殺しだした。



「あーあ。折角今日の為に新調した浴衣が台無しだわ。貴方達の持ち金合わせたってきっと足りないわよ……まあ、弁償してもらうけど」



漸く口を開いた蓮華を押さえつけていたはずの男は地に沈み、その身体を下駄で踏みつける。しかし、実際彼女が何かをしたのかも定かではない……誰も何も見えていないのだから。



「なんだ、やっぱりこのガキの女だな。生意気言いやがって~~男に勝てると思ってんのか!?」


「……下賤が……」



ナイフを持って、襲いかかってきたドレッドヘアの男の攻撃を軽々かわす。男の左肩に左手を置くとそのまま飛び上がり右膝で相手の後頭部に一撃を入れると‘フンッ’と鼻で笑った。

アクロバティックなその身のこなし。とても、普通の女の子とは思えない。




「大丈夫かい?」


飛び退いた先は雲雀の側。

頷く蓮華を見るがやはり意識は怪我をした右足に向いている。



「……問題ないわ。」



帯にささる団扇には‘風’。

それは雲雀の誇り。それを共に背負う者として怯むわけにはいかない。



「蓮、キミはもう下がってなよ」


「イ・ヤ」


「血生臭いのはお断りだったんじゃないの?」


「血生臭いのはお断りだけど、私だって風紀の人間よ。赦せないものは赦せない……」




一度目を閉じるとピーコックの瞳は猛禽の鋭さに変わる。矜持を傷つけられたこともだが、彼女の苛立ちはそれだけではない。

彼女の意志を汲み取ったのか、また溜息をもらす。こういったときの彼女が頑固なのは承知の上だ。



「「……咬み殺す」」



雲雀は彼女の背中に自分の背中を向けるとトンファーを握り直す。蓮華は雲雀に背を託し、括り紐で袖を括り上げる背中の団扇の隣に仕込んでいた白い警棒を取り出すと一振り。20センチほどだったソレは倍の長さになり、改めて構え直した。

襲い掛かる輩を片っ端から地に沈める。



以前、雲雀が彼女を‘クイーン’と賞賛した事があった。綱吉たちはこの時はじめて、その本来の意味を知る。



チェス駒のクイーンは‘最強’の駒。クイーンはキングを守る最強の壁であり、敵を攻める最強の剣だ。その強さはキングの上を行く。それがあの時、雲雀が口にした本当の意味。



そして、戸惑いと後悔と不安の入り混じる表情を浮かべながら華麗に闘う蓮華を見つめる獄寺。


彼は漸く悟ったらしい。



彼女が‘何者’であるかを………。


綱吉たちも参戦し、いつの間にやら不良達は皆、地に沈められていた。袖をくくっていた紐を解くと少し着崩れた浴衣を直す…力無く地に伏した不良達を冷たい目で見据えていた蓮の肩をいきなり誰かが掴んだ。



「蓮っ!!傷大丈夫か!?」



それまでまさに別人の様に闘っていたが再び正気を取り戻し、酷く動揺した弟の声。

蓮華が弟の勢いに気圧されていると雲雀が彼女の腕を引き、綱吉から離すと雲雀自身の腕の中に収める。




「なんで勝手に動いたの?あの場所に居てって言ったでしょ」


「……ごめん…」


「救急車呼ぶ?」



その視線は傷つけられたら右足に向けられている。いつもより短い一分レギンスからは痛々しい一筋の傷と睡蓮のタトゥーが覗いていた。

彼女があれだけ知られることを嫌がったタトゥーだ。今すぐにでも此処を離れたいだろうと思い、雲雀は携帯を片手に声をかけた。



「救急車はいらない。……恭弥と花火観られないのは残念だけど、私先にタクシーで帰るね。」



淡く笑うと踵を翻す。一刻も早くこの場から逃げ出したい……そう体現しているように。



「花火なら君の部屋から観ればいいでしょ?」




蓮華の手を引き、参道への向かう先には1人の影。




「……帰さねぇ」



「何のつもりだい?」




目の前に立ちはだかったのは銀髪の見慣れた少年。顔立ちはいかにも女子にモテそうな容姿。口も態度も悪いが沢田綱吉‘命’の変わった男。



「………何のために十代目に近付いた…‘蒼蓮’」



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