嘆きのoltremare -蒼蓮華伝-

柚妃@うさまらーさんと仲良くなりたい
@weisswinde

浴衣と祭りと……

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「お腹いっぱ~い」


「買いすぎだよ」


「だって、屋台見てたら楽しくなっちゃって……こういうの初めてだから」



風紀委員に見張りをさせ、神社の社で少し早い夕食。参道から少し離れたそこは互い以外の人間はいない。静かな時の流れを感じ、人嫌いの雲雀らしい場所のチョイスである。


‘夏祭り’という初体験に思わず破顔する蓮華を目にして雲雀は瞠目した。

いつもに増して着飾った蓮華は雲雀を惹きつける。マンションの扉が開き、彼女を目にした瞬間、彼は息をのむ程の美しさに言葉を失った。まさか、浴衣を着て待っているなんて思ってもみなかったこともあったが、いつも以上に魅力的なその姿にただ見とれてしまったのだ。

それ故に彼女を連れて歩く事に対して、消極的だった。彼女は普段から人の目を惹きつける、今日の姿はその状況を割り増しするのは目に見えている。彼女の姿を他の男の目に晒すことが不快で、この姿の彼女を自分が独占したいという願望に駆られた。

だからこそ、参道で彼女が居なくなったときには異常に焦りを感じた。


気持ちが一気に引き寄せられる。それまで抑えていた感情が溢れ出しそうになるのを雲雀は感じた。




「ねぇ、蓮」


「ん?」


「このまま、ここにいようか?」


「……えっ」



いきなり、引き寄せられ告げられる。いつもの彼らしからぬ行動だ。腰に手を回され、かなり顔が近く視線をあげて彼の表情を窺う事もできない。



「今日の君をこれ以上、他の人間に見せたくない」


「ど、どうしたの?恭弥らしくないよ」


「僕…らしくないね……」



蓮華の首元にある彼の頭。いつの間にか抱き合う形で立っていた。囁かれるように耳元に伝わる吐息。蓮華の頬は紅く染まるが、恭弥の体は離れない。







「…ねぇ、蓮。キミは僕のものだからね……」



「んっ!?」



囁く声が聞こえた後に雲雀の唇が蓮の首筋に触れる。彼女の洩らした声に流石にやりすぎたと我に返った雲雀だったが、不思議なことに蓮華は雲雀に抵抗しなかった。



「……きょう…や……」


「…蓮」



体をそっと離すと今度は頭を傾け、彼女の唇に自分の唇を近づける。頬を紅く染めた蓮華は一度目を見開くとゆっくり目を閉じた。やはり、そこに拒絶はない。





互いの吐息が唇にかかる距離。


ゆっくり重なろうとする唇。






そのとき、遠くで叫び声が聞こえた。恐らく、距離はあったであろうその声の主が蓮華には誰であるか迷いなく浮かび上がる。



「ツナっ!!」


「………」



雲雀から離れ、耳を澄ます彼女の耳には確かに弟の声が聞こえる。



「ひったくり…」


「え?」


「弟がひったくり犯に襲われているみたい」


「……よく聞こえるね」


「私たち姉弟にとって声は耳で聞こえるだけじゃないから。」



走りだそうとする蓮華の腕を引く。この娘はこんな動き難い格好をしているのに弟を助けに行こうとしているのだ。



「僕が行くから君は此処に居なよ」


「でも…」


「君の弟はついでだよ。僕はひったくり犯を咬み殺しに行くんだから」


「恭弥」



本音はひったくり犯もついでだ。蓮華を人前に出すのが嫌で、彼女の意識が自分以外に向くのが嫌なだけ。


我ながら情けない。それ以上に蓮華との時間を邪魔した、沢田綱吉もひったくり犯も赦し難かった。

せっかく彼女に触れられる機会を逃した雲雀は尋常じゃないくらいに苛立っている。


彼の苛立ちは後方に残された蓮華にも伝わってきた。


(……ツナまで咬み殺されそう)





彼の苛立ちから、蓮華は雲雀の後を追った。この時の判断が彼女を苦しめることになるとは、夢にも想っていなかっただろう。








「あれから鏡見るたびにどれだけオレのプライドが傷ついたことか……」



男の額に青筋が浮かぶ。若干プリンになりかけた金髪に褐色の肌と如何にもチャラそうな男の右頬にはガーゼが宛てられ、キツい眼孔は憎い相手を見据える。


‘この時を待っていた’その口振りから、頬の傷を付けたのは沢田綱吉。

男の手にはバタフライナイフ。こんなものをおいそれと出してくる人間の品の無さに嘆きたくなるが周りにはもっと品位に欠けた連中が山のようにいる。たった1人の中坊にどうにかできるレベルではない。


最近は色々な騒動に巻き込まれ戦うことが多くなってきたとはいえ、あくまでその戦闘にはホンブルグを被ったあの風変わりな赤ん坊あってのことだ。リボーン不在の今、綱吉は普通の中学生以下の戦闘力である……勝ち目などあるわけがない。



(花火どころか、絶対絶命だっ!!)




「うれしくては身震いするよ」



何かを殴打する音とともに聞こえたのは、抑揚のない歓喜の声。まるで縞馬を前にした肉食獣のように辺りの荒くれ者達を地に沈めるのは並盛の秩序。



「うまそうな群れをみつけたと思ったら追跡中のひったくり集団を大量捕獲」



赤い腕章には金刺繍で‘風紀’の二文字。ニヒルに笑う彼は、腹の底で怒っていた。折角の蓮華との時間を邪魔されたのだ。馬に蹴られて死ね……否、この場で咬み殺す。恐らく、そんなことを考えていた雲雀の機嫌は最悪だ。



「集金の手間がはぶけたよ。

君達がひったくってくれた金は風紀が全部いただく。」



最早八つ当たりである。

‘やっぱり、この人自分のことばっかり’と叫ぶ綱吉を余所に雲雀の口元には笑み。


「ムカツクアホがもう1人。ちょうどいい……中坊1人しとめるために柄の悪い後輩を呼び過ぎちまってな」



ぞろぞろと品の無い奴等が集まる。目つきの悪い奴等は各々その手に物騒な武器を握っていた。そんな連中を目にした雲雀はトンファーを握り直す。嬉々とした表情。この鬼神を止められる人間はいないだろう。


「加減はいらねぇ!!そのいかれたガキもしめてやれ」



襲い掛か連中に綱吉は雲雀の心配を口にするといつから居たのやら…何処からか馴染みの銃弾が彼を捉える。被弾すれば、下着姿で戦闘を開始する綱吉。





「アレが‘復活’か……」



物陰から雲雀の様子を窺いに来た蓮華は初めて弟が戦う様を目にする。そして、銃弾を撃った赤ん坊に視線を向けた。憎しみを色濃く映した瞳で見据える。




それ故に注意力が散ってしまっていたのだ。




‘チャキッ’


首筋に嫌な感覚。

背後には明らかに悪意を持った人間の気配。蓮華は小さく溜息を零すと大人しく捕虜となった。





「たかが中坊二人だ!一気に仕掛けろ」



圧倒的な人数も気圧されるほど強い二人。苛立つ中心核の金髪チャラ男は声を上げるが、それをかき消すように爆発音が鳴り響く。



「10代目っ!!」


「助っ人とーじょー」



見慣れた2人。並中が誇る最強の3人が揃った今敵無し……といいたいところであったが、そうもうまくことは運ばない。



「アニキ、面白い奴見つけました」



金髪チャラ男に声をかけたのはまだ幼さの残るB系服の男。そして、手に持つナイフとそれを向けられる黒髪の美女。



「そこの茂みに隠れてました。さっき、その制服の奴と歩いてた女ですよ。アニキも、目に留めてましたよね?」


「蓮っ!!」



流石に雲雀も瞠目して動きを失い、敵の手に落ちた娘に視線を向ける。特に怪我はしていないようだが、見ず知らずの男に腰を抱かれ首筋にナイフを向けられて俯いていた。


「蓮!!」



雲雀に続いて綱吉も声をあげた瞬間、金髪チャラ男はニンマリと笑った。



「なんだ、お前等にとって重要な女なんだな」



後輩が捕獲してきた娘は目の前のガキどもにとってかなり重要な娘だったらしい。顔面蒼白な連中の顔からもその事実は感じ取れる。


「中坊のクセにこんなにイイ女もったいねえ。俺が貰ってやるよ」



嫌らしい手つきで蓮華の太股に触れる。眉間に皺を寄せる雲雀達を横目に蓮華の右足にナイフを突きつけるとそのまま斬りつけた。


「……っつ!!」



軽く呻きを漏らす蓮華に綱吉は死ぬ気が抜け、正気に戻る。切り裂かれた浴衣から見える晒された右足には一筋の血が流れる。

血相を変えた雲雀が助けようと蓮華の元へと走るが、怪我をする彼女の足を見て別の理由で血相を変える者が1人。



Continued.


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