嘆きのoltremare -蒼蓮華伝-

柚妃@うさまらーさんと仲良くなりたい
@weisswinde

浴衣と祭りと……

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「あ、姐さん!!」


「払うって言ってるんだからもう止めてあげて。」


「へ、へえ」



大きく‘風’と刻まれている団扇を下ろすと屋台を破壊されかけていた店主の側まで歩み寄る。



「手荒で申し訳ありません。修繕の手伝いは彼らにさせますので」



にこやかに微笑めば、店主の顔も赤く染まる。


当然だ。これほどの美女に助けられた上に、微笑まれたら……彼女は天使か女神にでも見えているのだろう。



団扇を再び背の帯に差すとツナ達へ近づく。その姿に惹かれる者数多。ツナは妙に誇らしく思えた。




「この辺りを取り締まっとるのって…」


「風紀委員よ」


「ちなみにショバ代って……」


「……さあ。私、知らなーい。恭弥に聞いて。」



何を隠そう、彼女もまた風紀委員。しかも、位置付けは委員長補佐。事実上のNo.2だ。あの並盛最強と言われる男の隣に鎮座する華なのだ。



「あいよ」



手渡されたチョコバナナを受け取る蓮華。165センチと長身の蓮華だからこそ、これほど浴衣を綺麗に着こなしているのかもしれない。

さり気なく見えるうなじと黒のラインでなぞられた切れ長の目は普段にない雰囲気でまさに‘色香’その物。それらは山本の鼓動を強く速く乱れさせた。



「あ、あのさ、蓮」


「ん?」


「も、もし、この後空いてるなら俺らと……」



「何群れてるんだい?」



どうして不思議に思わなかったのだろうか。彼女が1人で夏祭りに来るわけがないのに…。

彼女に久々に会って、しかも、浴衣姿を見て浮かれていたのかもしれない。

彼女には最強にして最凶の男がついていることをすっかり忘れてしまっていた。




「別に群れてないもん。チョコバナナ買ってただけだもん。」


「大体、君、なんで勝手に居なくなってるの?」


「屋台見に行くって言ったじゃん。」


「待っててって言ったでしょ。」




この男雲雀恭弥は、先程屋台を破壊した並盛中の風紀委員を統べる男。好戦的で集団で群れる相手を咬み殺すことを趣味としている。

そんな男である雲雀に対しても至って普通に接する蓮華はいつの間にやら学校でも有名人であった。



「だって、恭弥と店回るとお金受け取ってもらえないでしょ」


「くれるって言ってるならいいんじゃないの」


「よーくーなーい!!」



会話は若干変なことも混ざっているが、こんな会話が雲雀恭弥と成立するのは間違いなく、蓮華しかいないだろう。



「大体、そんなに買って1人で食べられるの?」


「これ、恭弥の分もだよ。花火前には見回りしなきゃならないから早めに食事済ませちゃった方が良いでしょ?」


「ふーん。なら、ここにはもう用済みでしょ?」



‘ほら、行くよ’そう、促され、気付けば手を握られる。彼の珍しい行動に動きを失うが半ば引きずられながらも綱吉達に手を振った。




「チョコバナナなんて先に買って他の食べるとき邪魔でしょ」


「だって、美味しそうだったんだもん。先に食べるからいーの」



手に持っていたチョコバナナに少しかじれば、上質なチョコレートと濃厚なバナナの甘味が口いっぱいに広がった。流石にこだわって作られたものだ。中学生が作ったものとは思えない出来映えであった。



「ふーん」



声とほぼ同時にチョコバナナを持っていた右手が左側に引き寄せられる。気付くと視界には自分のチョコバナナをかじる雲雀の姿。



「あーっ!!」


「うん。確かに美味しいね」



伏せ目がちに自分の口の端についたチョコレートを舐めとり、口の端を吊り上げる仕草は、加虐的嘲笑の色を持つ。しかし、何故かその視線は目の前の少女の先にいる誰かに向けられていた。










「相変わらずだね…あの2人」



雲雀に引き摺られていく蓮華を見送りながら、ツナは苦笑した。以前よりきっとあの二人の仲は深まっているのだろう。


何気なく反応を示さない山本と獄寺に視線を向けて目を丸くする。険しい眼差しで2人を見据えているのだ。常に機嫌の悪そうな獄寺はともかく、いつもにこにこしている山本もだ。



「なぁ……ツナ」


「な、なに?」



声がしたのは2人の表情を見て軽い罪悪感を感じたツナが視線を下げた瞬間。戸惑いがちに視線をあげるとそこには真っ直ぐ真剣な眼差しを自分に向ける山本がいた。



「オレさ……好きみたいだ、蓮の事」


「!!」


「なっ!?」



突然の当人の居ない告白。獄寺は有り得ない様子で驚きの声を上げるが、ツナはいきなり言われた事に驚きはしたが、‘姉を好きだ’と言われた事に対しては特に驚きはしなかった。本人は無自覚だったかもしれないが、彼が何処にいてもその視線で蓮華を追っていたから。



「山本…」


「わりぃ。別にツナに仲を取り持って欲しいとか、そんなこと頼みたい訳じゃないからさ。」



少し困惑した表情を浮かべたツナに山本は苦笑する。いつもの笑顔には程遠いが、先程の表情よりは彼らしさが伝わってくる。


「公言でもしないと意志で負けそうだからさ…雲雀に」



2人が去った方を見据える山本の意志は強くその双眸から伝わってきた。

明らかに不利な相手だ。殆どの時間を共有する2人。一方は携帯アドレスすら知らず、無論自宅も知らない。比を見るまでもない。

だが、その瞳には諦めの色はなかった。






「チョコバナナくださーい」



響く声は可憐ですぐに誰であるかを認識できた。

浴衣で着飾った京子とハルだ。読モの様な可愛さで周りの男達の目を惹いている。

バナナを受け取ると蓮華達が歩いて行った方へと2人も去っていく。



「花火見たかったなぁ」


「全部売っちまえばオレ達も花火見にいけんじゃん」




望みはまだ潰えていない。その事実に気付いたツナの顔はぱっと明るくなる。斯くして、三人のチョコバナナ屋台営業が開始された。






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