嘆きのoltremare -蒼蓮華伝-

柚妃@うさまらーさんと仲良くなりたい
@weisswinde

浴衣と祭りと……

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8月4日



午後3時になる頃には風紀の仕事を終えて帰宅した蓮華はバスルームへ走った。炎天下を日笠を差しながら歩いたためにかいた汗と纏わりつくような暑さを払うために。

さっぱりとした後はドライヤーで髪を乾かしながら、先日買った雑誌を捲る。気持ちは浮き足立っていた。




そして、午後4時。蓮華の部屋の呼び鈴が鳴る。鳴らしたのは並盛最強と呼ばれる男。そして、開く扉の先に立つ彼女の姿に雲雀は瞠目する。





時間は少し進んで午後5時半ごろ。



うっすら茜色に染まりかけた夕刻の参道にいつもの閑散とした静けさはない。夜店が並ぶその道には声を上げ、店を盛り上げる店主たちの姿や目をキラキラさせながら夜店を目移りさせる子ども、そして、そんな子ども達に振り回され気味の大人の姿。仲の良い友達、はたまた、初々しさ溢れるカップル。

賑やかな参道に彼の姿もあった。



「おい、お前達。1人300円までだからな!」



ちょこちょこと動き回る子どもたちを持て余している感が拭えない少年の名前は沢田綱吉。1年と少し前からイタリアの有名なマフィアの10代目候補に挙がり、それ故に多大なトラブルに巻き込まれ続ける哀れな少年だ。持て余している子どもたちもまた、そのトラブルの元であり、それがきっかけで出会った子どもたち。


牛の角、ホルスタインを思わせる服の男の子。名前はランボ。見た目も中身もかなり幼いが、こう見えても彼はボヴィーノファミリーに属するヒットマンだ。


そして、もう1人。片言の日本語に便髪に見えるおさげ頭の女の子。名前をイーピンという。この子もまた、香港で有名なヒットマン。


両名とも普段の姿は勿論、ランボの持つ10年バズーカによって10年後の姿で騒動を起こす。綱吉の悩みの種でもあり、弟妹の居ない彼にとっては手の掛かる弟妹のような存在だ。




そんな彼の頭には想い人と縁日を回る甘く淡い夢が広がる。浴衣姿の笹川京子とともに参道を歩く幻想はズボンの裾を引く小さな姿によってかき消された。



「なんだ、イーピン?何か欲しいもん見つかったのか?」



ちょこんと自分の足元に佇むおさげ頭に問うと小さな手は一つの屋台を指さした。甘く優しい香りは幼い子どもを虜にしてやまない。縁日には必ずと言っていいほど並ぶソレは‘チョコバナナ’。


400円と先ほどの設定額よりも若干値が張るが、ベルギー製のチョコレートを使用したこだわりのチョコバナナらしい。注文しながら自分も少し食べたいと思い始めていた。


「おらよっ」



差し出されたチョコバナナを受け取ろうとした瞬間に身体が固まる。



「ご、獄寺君と山本っ!?」



「じゅっ、10代目~!?」


「よぉ、ツナ」



驚きを隠せない獄寺と相変わらず、爽やかな山本。中学生であるはずの彼らがチョコバナナの屋台をやっていること自体が色々と問題があるが、個人の営利目的ではないらしい。



結局、その屋台の手伝いをする事になるツナ。これもまた、あの小さなカテキョーのせいなのだろう。まあ、リボーンと出会ってから、自分にとって掛け替えのない出会いをした。獄寺隼人や山本武もそうだ。それまでまともな友人すら居なかった自分が今こうして共に過ごしている彼等との出会いもまたあのスーツを着た風変わりな赤ん坊のお陰である。



「チョコバナナ、1本くださ~い」



思考に耽っていると注文が入り、顔を上げれば本日二度目のフリーズ。




目の前に立っていたのは黒絹のような艶やかな髪を左側でアップに纏め、本来はストレートの髪を巻いて華やかに飾ったピーコックの瞳の少女。黒地に紫の蝶の柄。それに映えるように赤と黄色の帯は後ろで華のように結われ団扇を差している。



「蓮っ!?」



「あれ?ツナ?」



彼女は沢田蓮華。容姿、性格に全く類似点はないが、こう見えて綱吉の双子の姉である。海外生活が長く、6月の終わり頃から並盛中に編入してきた。

姉弟とはいえ、彼女とは別に暮らしているため、転校以来学校以外で会うのはこれが初めてかもしれない。故に彼女の制服姿しか知らない彼にとって、普段以上に着飾っている彼女に瞠目せざるを得ない。



「「っ!!」」



声に引かれるように2人も視線を向ける。獄寺はそれまでくわえていた煙草をポロッと落とし、山本は持っていた串のついたバナナをチョコレートの鍋に落としてしまった。



「ど、どうしたの?」



明らかに様子のオカシい2人に首を傾げる蓮華。その姿さえ魅力的に映る。

慌てて取り繕うとするがその姿は奇っ怪で滑稽であった。蓮華の笑顔が零れ、2人の頬はまた赤く染まる。

間近でその様子を見ていたツナは、2人の気持ちに気付いていたのかもしれない。





「あれは!」


「関わらない方がいいわ」



参道にどよめきが走る。皆がいきなり何かに警戒し始めたのだ。周りの屋台を覗けば、小さな金庫を開き、一万円札を数えだしている。



「お前らもショバ代用意しとけよ」


「ショバ代っ!?」


「ここらを取り締まってる連中に金を払うのが並盛の伝統らしいっス。ココはスジを通して払うつもりっス」



思わぬところで裏社会を垣間見たツナは苦笑いを浮かべる。そんなチョコバナナ屋台のすぐ側でけたたましい破壊音と泣き喚く男の声が響いた。



「待ってください!!払います!払いますから!!」



視線を声がする方へ向ければ、泣き喚く男の横でリーゼント頭の男が2人。その腕にはしっかりと赤い腕章がつけられている。


「まさか…」


「はぁ…」



漏れる溜息。零したのは着飾った風紀の一員。



「止めてあげなさい」



涼やかな声は周りの者達の動きを止める。視線は自ずと声の主である蓮華へと向けられる。

背中にさしていた団扇を右手で持ち、風紀委員へ向ける蓮華。その表情、姿、どれも凛として美しかった。



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