嘆きのoltremare -蒼蓮華伝-

柚妃@うさまらーさんと仲良くなりたい
@weisswinde

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季節は文月。

しかし、未だに梅雨前線の真下の並盛は今日も生憎の空模様。気温と同時に湿度まで高いこの時期は誰もがイライラするためか、騒動が急激に増える。

その対策のためと近付く夏休みに向けて、今日は五時間目に生徒総会が催された。




「総会なんて面倒っすよね、10代目」



「まあ、仕方ないよ。決まりだし」



ツナ、山本、獄寺の3人が体育館に着く頃には体育館の中はダルそうな生徒たちで溢れかえっていた。


この茹だるような暑さの中、こんな空間に集められた日には文句の一つや二つや三つ………いや、この暑苦しい体育館には文句の声しか聞こえてこない。


そこへこの暑さを全く感じない黒尽くめの連中が入ってくれば、一気に体感温度を下げ、辺りは静まり返った。



キッチリと着込んだ学ランにリーゼントと見るからに不良の彼等は風紀委員。

そして、彼等の前を歩くのは肩に学ランを掛けた並盛の秩序。


一般の生徒ならば、関わることを全力で回避するその男は用意された椅子に腰掛けた。その後ろに控えるのは彼の腹心の副委員長、草壁哲也。そして、もう1人は…………。



「お、おい、あの美女誰だよ」



「知らねーのかよ、アレがヒバリの……」



「アレが噂の‘華’か」



「2年の沢田の姉貴らしいけど全然似てねぇよな」




生徒達の視線は雲雀の後ろに立つ娘に向けられる。ただでさえその容姿故に人の視線を集める蓮華は風紀の紅一点。注目の的になるのは致し方がないことだ。好奇の目に晒されることを嫌う蓮華はやはり気分が悪そうだが、それ以上に明らかに苛立っている男がいる。


雲雀が鋭い視線で生徒達に視線を向ければ小声で話していた者達は一気に静まり、蓮華へ向けていた視線も逸らした。


今にも咬みつかんばかりの苛立ちを見せる雲雀に蓮華が声をかければ‘何でもないよ’と普段通りの雰囲気に戻る。



特に風紀委員の出番こそなかったがやはり風紀の存在は大きい。その場にいるだけで普段は騒がしく進行が遅れる総会は予定以上に早く終わった。




「……仲直りしたのね、あの2人。」



早々に退場する風紀委員を横目に花が口を開く。その視線の先には何かを話す蓮華と雲雀。その表情は穏やかでどこか前と違う。



「よかった…ちゃんと仲直りできたんだ」



そう呟くのはあの2人の喧嘩の仲裁の功労者。


喧嘩のあとも学校を欠席し続けていたために本当に心配して何度も応接室(の前)に様子を見に行っていた。蓮華との連絡手段が無かったために結局応接室のドアを叩くしかなかった。しかも、腹を括ってノックをしてみれば雲雀は欠席で完全なる無駄足になってしまったのだ。

それ故に今2人が和解しているのが確認でき、安堵の笑みを浮かべた。




「蓮が遂にヒバリのモノになるのね」



「…また、人が居ないからって勝手なこと言ってる。まあ、私が恭弥のものであるのに変わりないけどね」



「蓮!!」



「遂に認めたわね」



全く、この娘はいきなり現れる。先程まで視線の先にいたはずの彼女はいつの間にやら自分達のすぐそばに立っていた。

苦笑しながらも口にした爆弾発言に花は食いつき、その他の者も瞠目する。



「勘違いしないの。私は風紀委員よ。風紀委員長の手駒であるのは当然でしょ?恭弥が戦えって言えば私だって戦うわ」



「僕はそんな危ない命令ださないよ」



「それ、‘何が’危ないのかしら?」



「…さあね。まあ、言うなれば君は‘女王’だね」



「あら、それは嬉しい賛賞ね」



自分の後ろから聞こえた声に振り返りもせず満足げに微笑んだ。


雲雀にしては珍しい比喩…‘女王’という言葉。端から聞けば、王(自分)の隣に居るべき伴侶。ただのノロケだ。その意図がなかったとは言わない。しかし、本来の意味は蓮華の口にした‘駒’と合わせたときにはじめて現れる。


それが示すのはチェスにおける駒の女王(クイーン)――強さを保持する雲雀からの最大の賛賞にほかならなかった。


しかし、この意味に気付いたのは彼女だけ。




‘仲直りできたんだね’




心の奥に響く声。穏やかで優しい蓮華の大好きな肉親の声。


その声に答える訳ではなく柔らかく微笑むとツナの顔に自分の顔を近付けた。

ツナが驚きの声を挙げるより早く、‘Grazie’というささやきと共に彼女の唇が彼の頬に触れる。

姉と言えどやはり女の子にそんな事されれば誰だって頬を赤らめる。それが自分が知る誰よりも魅力的と認識する娘なら尚更だ。



「私が一番好きなのは今の所ツナだから安心して♡」



「ななななっ!?」



「もし私に心から惹かれる相手が現れたら真っ先に貴方に分かるはず。私達は‘そういう血’の元に生まれたのだから」




乗りの良かった口調と笑顔はいきなり真顔に変わり、感情を伏せれように目を細めた彼女の真意をまだツナは知らない。



「蓮、行くよ」



「はぁーい」



先程までツナに対し射殺さんばかりの視線を向けていた雲雀が声をかければ蓮華はツナから離れ、雲雀の隣に付くと顔だけ後ろを向き、手を振る。

好奇と嫉妬の視線に晒される哀れな弟を残して少女は秩序の隣を歩きながら去っていった。



「ヒバリさん怖っ」



「そりゃ、自分の好きな女に自分より別の男が好きなんて言われたらね……」




独占欲の強い雲雀ならいくら相手が蓮華の弟でも赦せないのだろう。

蓮華にあそこまではっきり言われて睨まれただけで済んだことを喜ぶべきなのかもしれない。



この時、ツナは気づいていなかった。雲雀の様な鋭い視線を向けていた者が居たことに…。






―蒼い蓮は毒の華―




その毒は‘恋’に酷似する。

誰の心にも存在するその感情の様に浸食し、心の制御を奪い、気付いたときには既に引き返せない深みに堕ちている。





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