嘆きのoltremare -蒼蓮華伝-

柚妃@うさまらーさんと仲良くなりたい
@weisswinde

戸惑い

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ツナの仮説はあっさり否定される。その言葉に迷いも躊躇もない。おそらく本心なんだろう。



「私、こんなに長く人と接したこと無いから相手との距離感が掴めないの。


さっきだって別にキョーヤを怒ってるわけじゃない……確かにあの悪趣味な部屋を見られたのはショックだけど、多分無断で入った訳じゃないだろうし、さっきのだって悪気があったわけじゃないってわかってる……だけど…」



「………戸惑ってるの?」



「……ん……きっと、もう拒まなきゃいけないところまで踏み込まれちゃってる。でも、私は彼を拒みきれていない……」



複雑そうな表情は困惑とも苦笑ともとれる。彼女は不得手なことがない。ゆえに、こんな風に困っているのを目にしたのも初めてかもしれない。それはツナにとって不思議な感覚であった。



「蓮、今恋する乙女みたいだよ」



「……からかいと冷やかしならお断り。教室に戻りなよ。今、頭の中ゴチャゴチャでマトモに会話出来そうにないわ。」




拗ねたように顔を背ける仕草もいつもより幼く可愛いとさえ思え、苦笑しながら謝るツナ。



「……ホントはアレ、恋だったのかなって……思っちゃってるんだ…」



「えっ?」



「…アレ、ホントは恋じゃなくてただの‘憧れ’だったのかもって……。ほら、女の子って年齢以上に成長が早くてね、恋に恋することがあるのよ」



「ん…オレにはわからないけど、悩んでてオレに話してもらえて嬉しいよ。相談されても、何にも返してあげられないのが情けないけどさ」



自分が男である以上、今蓮華が口にしていることは理解に苦しむが、ここまで客観的に考えられている時点でそれが正しいように感じられた。それと同時に先程自分が口にした‘恋する乙女’というのも強ち間違っていない気がする。




「……蓮がヒバリさんの側にいて無理してないならいいんだ」



「してないよ。人と接するの好きじゃないはずの私自身でも驚くくらいね。彼が特別に扱ってくれるって物凄く心地良いんだもん」



体を起こし、浮かべる笑みはいつも通り柔らかい。いつもの調子を取り戻した蓮華は体を起こすと軽く風が吹き、髪が揺れる。


柔らかく目を細め、どこかはにかんだような笑顔は本当に恋する乙女のようだ。



「……蓮はヒバリさんのこと好きなの?」



「嫌いでそばに居られるほど私、‘悟り’は開いてないわよ。」



「いや、そういう意味じゃなくて……」




以前より気になっていたことだ。

この学校の誰もが恐れる存在をまるで怯える様子もなく普通の男子のように…いや、かなり親しく接している彼女の真意は弟としても気になるところである。


返答は形式通りのモノ。明らかにわかっていてその切り替えし方をしたのはツナでなくともわかっただろう。



「………やっぱり、そっちに持ってくの?」



「気になるよ…弟として」



「……苦手なんだよね、そういう話。」



片目を閉じ、頬を掻く彼女が浮かべるのは苦笑い。美しすぎる容姿には似合わず、本当に不得手なのだろうということはその表情からも窺えた。



溜息を漏らす横顔に目を向ければ、釘付けになる。



金を染めたはずの黒髪は元々その色であるかのように馴染み、それに栄える透き通るような白い肌。通った鼻筋はやはり海外の血が混ざっていることを感じさせる。深淵の緑眼はどこか神秘的でこの目で見つめられると‘NO’と言えなくなってしまう。特に化粧をしている訳でもないのに色付いた唇は花びらのようで、弟であるはずのツナでさえ戸惑ってしまうほど色っぽい。



どこを取っても整った彼女はやはり何処にいてもモテていただろう。現にこの学校でもかなりの人間から言い寄られていた。雲雀がいても完全にそれがなくなったわけではないだろう。



蓮華が雲雀を好いているのならばこのまま彼に守られている方が彼女にとって良いのではないかと思う反面、‘雲雀恭弥’という危険な存在に彼女を任せるべきではないのではなかろうかという点で想像以上に姉好きな弟は悩んでいた。



「………わかんないんだ…」



「えっ?」



「……好きの判別ができない…好きの違いがわからないのよ」




本当に困った様子の蓮華は困惑に瞳を揺らす。普段めったに見られないその表情は年相応に見られることのないであろう彼女には珍しく幼く可愛い。



「…少なくとも‘好き’ではあるんでしょ?」



「まぁね。……だから、ちょっとやりすぎたなぁーって。仲直りとか…苦手…なんだよね」



「ヒバリさんも苦手そう…」



「うーん。気まずい」



「蓮が落ち着くまでちょっと距離おいてみるとか…」



先程の雲雀の様子から見ても距離をおかれれば、自分で距離を詰めそうだ。


和解には悪くない手段だろうが、かなり手荒である。蓮華も心でそう思いながらも、頭の中は色々な事が混ざり落ち着いて自分と向き合わなければならないと感じていた。












「おっ、ツナ。あれ?蓮は?」



授業の合間に教室に戻れば、真っ先に自分を確認した山本が駆け寄ってくる。キョロキョロとしている辺りは蓮華の姿を探しているのだろう。



「……‘えすけーぷ’だってさ」



つまりサボリだ。既に帰路に着いたであろう蓮華はやはりマイペースの塊。そして、今週も殆どの授業を自主休業した。



蓮華が帰宅したことを聞いた山本は密かにほくそ笑む。完全に雲雀によってホールドされていた蓮華と彼との間に少しの距離ができた。漸く見えた起死回生のチャンスを喜ばずにはいられなかったのだ。





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