嘆きのoltremare -蒼蓮華伝-

柚妃@うさまらーさんと仲良くなりたい
@weisswinde

帳と蒼い蓮

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「あーごめん、空気悪くした。別の話題にしよう。」



「もっと話しなさいよ。京子は恋バナとかしないしさ」



「私、こんな自虐的な話したくないわよ。あ、聞く方なら歓迎よ」



「えーっ!!蓮、絶対面白い話あるでしょ。」



「ないっ!!まず、生まれてこの方男と付き合ったことないわ!!」



「その顔で何を言う」




花のペースに飲まれまいとする蓮華。ちょっと余裕のない彼女も珍しい。いや、余裕はきっとまだあるのだろう。その証拠に彼女の手元は先程からずっと作業を続けている。どこまでも掴めない娘だ。




「容姿で言い寄ってくる奴なんて相手にする価値もないわ。この極限までねじ曲がった根性までひっくるめて好いてくれる人なら考えるけど」



「まあ、確かにね…。って、今のクラスの男子への当てつけでしょ?」



「あはは。そういえば、花はどんな人が好みなの?」




軽快に動く包丁と空笑い。否定もせずに無理やりともとれる話題転換は図星であったことにほかならない。会話に花が咲く2人。ほかの面々も聞き耳を立てていたるのはこの話の展開は新しい情報が得られるチャンスであると踏んだからであろう。



「私?年上は必須だよね。ルックスもよくて、性格も穏やかな人がいいなぁ。蓮は?蓮も年上好きでしょ?」



「ん…私の場合、年上好きっていうか……私のこと泣かせてくれる人かな」



「……マゾ?」



「そういう意味じゃないからっ!!」




慌てた声で否定が入る。確かにこの娘はマゾには程遠いし、どちらかといえばサディストに近いだろう。




「…いつも虚勢で気を張ってる私の箍を外して、泣ける環境を作ってくれる包容力があって、甘えさせてくれる人って意味。望むものがこんなんだから結局年上に目がいっちゃうのかもね」



「ナルホド…にしても考えが大人ね、蓮は」



「まあ、イタリアで結構面倒な人達に言い寄られたからね。男のあしらい方はお手のものよ」




軽く油のひいたフライパンで玉ねぎの色が変わるまで炒め、残りの食材を入れる。まるでそのフライパンの様に男を扱う蓮華を想像し、マドレーヌの型に生地を流し込んでいたツナの表情は一気に引きつった。




「花は年上好きなんでしょ?紹介しようか?」



「ホント?」



「未だに2人言い寄ってくる奴がいてね。1人は強面だけど、もう1人のルックスは保証するわ。ヘタレだけど」



「年は?」



「確か、強面が24、ヘタレが22だったかしら。イタリア男だから女には優しいよ…多分。」



イタリア男でルックスはいいがヘタレの22。どこかで聞いたことがあるような物件だが、この際気にしない方向で話に耳を傾ける。しかしながら、かなりの年上に好かれているようだが、相手はロリコンではないかと口にしてはいけないのだろうか。

まあ、蓮華が幼女かと問われればそうは見えず、高校生と言っても全く違和感がない。むしろ、彼女の持つ妙な色気が相まって大人にまで好かれても納得してしまっている自分がいる。



「蓮ってホントに人と付き合ったことないの?そんなに年上相手なのに妙に扱いてなれてない?」



「……企業秘密。」




唇に人差し指を置き、片目を閉じる。口元に浮かんだ笑みは妖艶でそれを垣間見た者達は一気に顔に熱が集まるのを感じた。

典型的な小悪魔気質の姉は知らぬ間に女を磨いていたらしい。しかし、今のツナが彼女の歩んできた過去を知ることはできない。




そう…できないのだ。



彼女がたまに見せる悲しげな瞳も含みのある言葉も作り笑顔もどれもまだ彼にはその真意を知ることはできないのだ。




彼は大罪人だ。



‘無知’と云う名の罪をたくさん背負った罪人。彼が蓮華の過去を知るのは夏も過ぎ、それまでないほど激しく悲惨な戦いの中でであった。






「ねぇ、蓮」



「何?」



「今、ヒバリさんが乗り込んできたりしないよね?」



「なんで、いきなりキョーヤの話題が浮かぶのよ」



出来上がったシチューを口に運んでいた手が止まる。いきなり、そんな話題を挙げた弟に視線を送ると絡んだ視線は明らかに恐怖を訴えている。



「だって、蓮の手料理なわけだし…」



「ん~毎晩のように食べに来てるし、来ないでしょ。むしろ、群れてることに文句は言いそうだけど…」



「ひ、ヒバリさんよく来るの?」



「最近は夜になると夕飯食べにくるよ。まあ、一応、ご近所さんだしね」




木魚が響きそうな間。

必死に切り返したツナを横目に特に動じることなく匙を進める蓮華。つくづく似ていない姉弟だ。



「何だかんだ言っても仲良いのね」



「別に悪いとは言ってないわ」



「告白されたらどうするの?」



「何この公開尋問。」



「今更じゃない。」




元来、恋バナとは2、3人でこっそりひっそりと話すものではないのだろうか。何が悲しくて弟の前でこんな話してるんだろうと漏れる溜息。しかし、花はこの話題から解放してくれそうな様子は微塵も感じられなかった。




「……実際言われてないから知らない」



「もし言われたら…っていうか、その内言われるでしょ、アンタ達の関係なら」



机を叩き力説する花。この場に雲雀が居ても同じ行動をとれるか、蓮華にはそっちの方がよっぽど興味がある。



「……キョーヤなら真面目に考えるかも……」



「考えるってレベルの話なの?」



「あら、結構な進歩よ。他の連中なんて一刀両断か、話してる最中にエスケープするかのどっちかだし」



ありありと想像できてしまうその場面。一体何人があの冷笑の犠牲になったのだろうか。しかも、彼女に告白なんてしてあの風紀委員長が黙っているわけがない。この世の地獄を味わったんだろうなぁと想像するだけで身震いが止まらない。



「ヒバリ、顔はいいからね」



「まるで私が顔で選んでるみたいじゃん。」



「違うの?」



「実は顔、結構どうでも良いのよ。キョーヤはああ見えても優しいし、何より私の事ちゃんとわかってくれてる。この性悪もね。そういう相手だから考えても良いと思ってるわ。まあ、あくまで仮説だけどね」



‘顔で選んで傍にいるなんて有り得ないわ’

小さくそう呟いた彼女の口元には珍しく余裕がない。ふっとその表情の真意を悟ったツナは目を見開く。自分の初恋の相手は雲雀に似ている…蓮華が語った断片を重ねれば、彼女は雲雀と居ることさえ不思議に思えてくる。



‘何故’



何故顔を思い出してしまいそうな相手と一緒にいるんだろう。まさか、重ねてる……いや、そんなわけないよな。




「気に入っているから」




声につられ、視線を上げればピーコックの瞳は真っ直ぐ自分を見据えている。そう、またしても心を覗かれたのだ。周りは意味が分からず、ツナと蓮華を交互に見るが2人はそれ以上口を開かなかった。



‘別に重ねているわけじゃない。そんな自虐的なことするわけないでしょ?私、マゾじゃないわ’



‘じゃあ、なんで…’



‘だから、気に入ってるのよ。彼のこと’




言葉は頭に勝手に流れ込む。自分たちが今どういう原理で会話しているかわからないが、間違いなくいえるのはこの会話は2人しかできず、でもしっかり成立しているということ。




‘辛くないの?’



‘辛くないわ。2人は別の人間だもん’



「おーい、ツナ、蓮、2人してどうしたんだ?いきなり、何も話さなくなって」



「え?双子の特殊能力の秘密の会話してたの☆」



ケラケラと笑いながら再び匙を口に運ぶ。この非科学的な会話方法を偽ることもなく口にする蓮華。ツナが口にすると冗談にしか聞こえないが、何故か蓮華がそれを口にしても真実味を持つ。彼女が持つミステリアスな雰囲気がそう思わせてしまうのかもしれない。



「秘密の会話?」



「平たく言えば、テレパシーかな?」



「すごーい。そんなことできるんだー」



「双子クオリティだよ」




京子と元気に話題を流そうとする蓮華は弟のと話題を聞き出そうとする花の餌食となる。どうやら、まだ雲雀との仲を疑っているらしい。



「だ~か~ら、ホントにそういう関係じゃないってば」



「よく考えてみれば、初日にアレだけ険悪な雰囲気だったのに翌日にあんなに仲良くなってるのが不思議だったのよ」



「「「……あっ!!」」」




いきなり声を上げたのは男子3人。すっかり忘れていたことが一気に思い出されたらしい。頭に浮かんだのはあの強烈な光景。

蓮華の視線が一気にに厳しくなる。



「あ、あ、あのとき蓮、ヒバリさんと」



「おい、そこの3バカ、3秒以内にその記憶脳内から消しな。じゃないと私が直々にその記憶ごと最近の出来事まで飛ばすことになるよ」




女帝陛下御降臨。雲雀顔負けの猛禽の眼力は向かいの席に座っていた3人にしか見えない。確信犯だ。

余程思い出して貰っては困るのだろう。その視線は殺気にも似たオーラを放つ。それにしてもこの数日、何故あんな強烈記憶が無くなっていたのか疑問が浮かぶ。

その日の記憶はしっかりあるし、今あの時に何があったかもちゃんと覚えている。いや、先程までも忘れていたわけじゃないが、まるでその記憶が水に浮かべた氷のようにごく自然に時間の経過によってほかの記憶に紛れてしまっていた。



その理由を考えようにもそれ以上に目の前の娘の鋭い眼光がそれ以上の思考を進めることを良しとしない。

まるで首筋にナイフでも突きつけられているような威圧感は、彼女が風紀委員会に属していられるだけの力を有していることをイヤでも感じさせた。




その時、物凄い音とともに扉が開かれる。




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