嘆きのoltremare -蒼蓮華伝-

柚妃@うさまらーさんと仲良くなりたい
@weisswinde

帳と蒼い蓮

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「調理実習って何作るの?」



「プリントに書いてあったよ」



「あ、クリームシチュー……この時期に暑苦しいことこの上ないわね」



「でも、オレ、クリームシチューは好きだよ」




教室の机に突っ伏す姉とそのようすに苦笑する弟。どうやら昨日もあの風紀委員長に散々教室には行かせないと駄々をこねられたらしい。それをなんとか説得して教室まで来たものの疲れてへばっているのである。



「私も好きよ。でも、夏場なんだから冷製スープとかにすればいいのに」



「中学生にそんな難しそうなもの作らせないだろ」



「そんなに難しくないよ。ところで、私誰と作るの?」



「あ、一応、オレと同じ班にしてもらったよ」



うなだれる蓮華は静かに顔を上げるとじーっとツナを見つめる。彼女の瞳にたじろぐ彼を余所に容赦なく彼の心を見透かした。



「京子ちゃんとも一緒みたいね」



「だから、一々心読むなって」



「別に見たくて見た訳じゃないわ。ツナだってたまに私の考えてることわかったりするでしょ?」




浮かべる笑みはいつもどこか余裕を漂わせる。彼女のいうように極稀だが、彼女の心が見えることはあるが本当に稀だ。蓮華は神出鬼没で流れる水のようにつかみ所がない。幼い頃からいつの間にか自分の側にいて、でもすぐ居なくなってしまう。ツナにとって蓮華はそんな、誰よりも近くて誰よりも遠い存在であった。



「蓮、あのさ……」



「なぁに?」



「今度はいつまで日本に居られるんだ?」



「……っ…暫く会わなかった間に率直に物事聞くようになったね」




少し瞠目するがすぐにいつも通りの表情に戻る。物言わさぬ瞳は揺れることもなく静かにツナを見据えた。強い眼差しはツナの言葉を奪おうとジッとツナを映すが技が決まる前に彼は次の言葉を口にする。



「はぐらかすなよ」



「……いつまででも。私が望む限り……」



「ホント?」



「うん」



観念したように目を閉じると静かに呟いた。嬉しそうな表情のツナを余所に蓮華の遠くを眺める目は憂いに揺れていたが、ツナにはその真意を悟ることはもっと先。






混沌とする調理室。

それぞれエプロンをつけた3人を前に蓮華は盛大に笑っていた。




「似合わないことこの上ないわね」



「るせぇっ!」



「ははは。確かに似合ってねぇな」



「ったく、料理なんて女がすればいいだろ」



「獄寺君、それ偏見だよ。」



「じゅ、10代目がそう仰るなら。」



騒がしさの原因はからかう蓮華とそれに乗る獄寺という図が出来上がっているからだろう。皆の視線はこの班に集められるが、それには理由がある。この班は6名。山本、獄寺、京子、花。そして、沢田姉弟。男女共に大半が人気の高いこの面々と関わりたいと思っている人間は少なくないからである。




「最近は男女関係ないみたいだよ。あのワガママ委員長もちゃんと手伝ってくれるしね」



「え……あのヒバリが?」



「あら、意外?」



「すっごく。むしろ既に手料理食べさせてることにビックリよ」



皆の心を代弁した花は目をパチパチとさせ、あからさまに驚いている。クスクスと笑いながらも食材を洗う蓮華の隣には山本が少し複雑そうな表情で彼女の手伝いをしていた。

洗い終わった野菜をツナ達に任せ、もう一品であるマドレーヌの生地に取りかかる。視線をチラッとツナ達に向けると包丁を駆使し、危なっかしい手つきで皮むきに取りかかっていた。




「ツナ、大人しくピーラー使いなよ。見てるこっちが怖い。」



「10代目が一生懸命されているのに」



「煩い。口動かさず、手動かしな」




ツナと代わり、受け取ったジャガイモの下準備を手早く済ますと次のジャガイモに手を伸ばした。流石に毎日自炊をしているだけはある。スピードもさることながら出来映えを上々だ。




「蓮ちゃんはいい奥さんになれそうだね」



「あー旦那が羨ましいわ」



「何言ってるの、相手いないし」



「アンタこそ何言ってんのよ。ヒバリがいるじゃない」



「キョーヤ?何でそこにキョーヤの名前が挙がるの?」



さも不思議そうに首を傾げる蓮華にの言葉は皆の動きを止める。人参と格闘していた山本は女子の話題に視線を上げた。玉ねぎの皮むきをしていた獄寺も例外ではない。ただ、皆がずっと聞けずにいた言葉を待っているようであった。



「え、だって、アンタヒバリと付き合ってるんでしょ?」



「ん?違うよ」



「隠さなくてもバレバレよ」



「別に隠してないよ。明確な関係は互いに結んだ協定のみ。あなた達が考えてるのとは違う、もっと淡白な関係よ」



冷たい物言いはどこか自分に言い聞かせているようなニュアンスを持つ。揺れる瞳は彼女の真意を探るがぶれて掬い取ることはできない。



「でも、蓮はモテるから彼氏なんてすぐできるでしょう」



「あ、無理無理。初恋引きずってるから」



「え?」



「ほら、初恋って実らないものでしょ?可哀想な私は見事に失恋しちゃったのよ」



一難去ってまた一難。今のところ、雲雀と蓮華に関係はないらしいが、蓮華の心には既に別の誰かがいるらしい。ある意味太刀打ちしようのない相手に心が揺れるがもう自分の心に嘘がつけないところまできてしまっているのだ。



「蓮の初恋の人ってどんな人?」



「命の恩人で、強くて、優しくて……酷い人。」



「……酷い?」



「……愛人でもいいから側に置いてって言っても

‘アナタに未来があります。だから私以外を見てください’

って……優しく諭すのよ……」



思春期の女子はマセ、男子は実年齢より二歳若いというが、ここの会話は既に彼等の理解の範疇を越えている。‘愛人’などになりたいと口にしている時点で最早中学生の会話ではない。

目が点になるツナ。姉は自分とは全く違う場で生きていたことを実感するとともに彼女がこの上ないほど年上が好みであることを悟った。



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