嘆きのoltremare -蒼蓮華伝-

柚妃@うさまらーさんと仲良くなりたい
@weisswinde

ハンバーグと籠球

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「捻挫だな」



「だよね」



いつの間にか、脱がされた上履き。既にこの時点で右と左の足首の違いに気付かされる。ズラされた靴下の下からは腫れ上がった踝が覗く。



「実は歩くだけで痛ぇだろ」



「……」



ムスーっと彼に視線を向ければ強い視線を返される。その反応はズバリ、図星であると語っている。しかし、あの場で抜けるわけにも、雲雀を暴れさせるわけにはいかなかった。



「……女だって張りたい意地はあるわ。私、人並み以上に矜持が高いの。だから、それを傷付けられれば例え体が悲鳴を上げようが討つまで戦うわ。張る意地に男も女も関係無いもの。


これがさっきの答えよ。」



「お前、かっこいいな」



「けっ!!強がりだろ」



「なら強がりだけであんな風に走れっか?」



決して誉められる訳じゃないが、彼女の信念は純粋にカッコよかった。そして、彼女があの場で雲雀に駆け寄らなければおそらくこの場は地獄絵図のようになっていただろう。また、この怪我が彼に知られてしまえばまた然り。



「庇ってくれてありがとな」



「私が勝手に呼んじゃったのに巻き込む訳にはいかないわ」



「けっ!!オレは別に戦っても良かったんだぜ」



「獄寺もありがとってさ」



「誰もんなこと言ってねぇだろ」



仲がいいのか悪いのか、2人の言い合いを見ながら蓮華は笑みを零す。そこにツナが駆け寄ってくると彼等以上の小言と説教を受ける。彼もまた蓮華を心配していたのだから仕方がない。



「蓮、早く保健室行こう」



「保健室はちょっとやべぇんじゃねぇの?」



「…あ、Dr.シャマル!!」



「………シャマル…」




オウム返しのように口にしたそれには少しの動揺が滲む。ゆっくり目を閉じれば纏っていた動揺は消え失せた。


「蓮?どうかしたの?」



「まさか、もう被害にあったとか」



「…あ、いや、キョーヤに近付くなって言われたから」




取り繕うがあまり上手い嘘とはいえない。視線を逸らし、このままどうしようかと悩んでいるとぶっきらぼうな声で件の男が不在であることを知らせた。



「ほら、肩貸してやっから急ごうぜ」



「え、いや、その…ツナ、肩貸して」



「10代目のお手を煩わすことはありません。自分が連れていきますから」



何故この2人は自分に関わろうとするのだろうか……。此処でどちらかから肩など借りればまた女子が騒ぐ。最早戦火の中だが、なるべくなら距離を置きたいのになぁなどと思っても彼等には伝わらないだろう。



「あのね、キョーヤと私の共有時間はアナタ達が思ってるよりずっと長いのよ。だから、バレるのは時間の問題。どうせなら私が1人で対峙する方がいい。

肩を貸してくれるのがツナなら、今バレても怪我したのがツナだって誤魔化せるし」



我ながらもっともらしい理由を考えついたものだと自賛したくなる。不本意そうな獄寺はともかく、山本君は何となく察してくれたらしい。


結局、ツナの肩を借り、保健室へと移動する。この際、一緒について来た2人はもう気にしない事にしよう。


椅子に腰掛けると自分で置かれていた湿布と包帯を手にするとテキパキと患部を覆う。手慣れた手当てを見ながら3人は先程の試合を思い返す。

彼女のシュート率はさることながら状況把握をし、的確な作戦と指示があったからこそあの点差を縮め、勝つことができたのだ。たった数分だったが、確実に自分達は一つに纏まっていた。




チームワークを…団結力を確かに感じたんだ。










「ねぇ、ツナ、山本君、獄寺君。」





「ん?どうしたんだ?」




「どうしたの?」




「んだよ」








「……ありがと」






向けられた笑みはいつも目にするそれよりも何倍も神々しく、優しさが溢れている。3人はまるで石に変えられたように瞠目したまま動きを失った。





獄寺と山本の頬が紅く染まる。頭でどれだけ否定しても、体現するそれは正直で。




「…………やべぇかも…」





更衣室の扉に消えた彼女を見送ると山本は小さく呟いた。有り得ないほど頬を赤らめた彼は左手で口元を隠す。悩ましげに歪む眉と少し細められた目は、爽やかさではなく色気を感じさせる。こんな姿を彼のファンが見たら卒倒ものであろう。





ただ彼の頭で引っかかっているのは漆黒の男。蓮華が掛けていた学ランは彼女が誰のものかを見せつけているようで胸の奥にピリピリとした痛みが走った。






―気持ちに気付いたときにはもう手遅れ―




彼もまた既に彼女に魅せられた蝶なのだから……







Continued.



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