嘆きのoltremare -蒼蓮華伝-

柚妃@うさまらーさんと仲良くなりたい
@weisswinde

ハンバーグと籠球

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6時半に鳴り響くベルの音で目が覚める。眠い目を擦りながら携帯のアラームを止め、カーテンに手をかけ開く。期待した日の光は殆どなく、重い雲がどっしりと空全体を覆っていた。


食事を終え、鞄に弁当を入れるとニュースを見ていたテレビに表示されている時計を確認してテレビの電源を消した。時刻は7:20。

鞄を持ち、学校へと向かう。



時間故に登校する並中生を見かける。最早、好奇の目に晒されるのはもう慣れた。そんな連中は相手にもしないが、自分に声をかけようと近付いてくる男子を避けながら歩いていると後ろから呼び止められる。相手が誰であるかわかっていたからこそ蓮華は笑顔で振り返った。



「おはよ、ツナ」



「おはよ、蓮はこの時間に登校なんだね」



「んー偶々かな?明日からもっと早く家出ようかなって思ってる」




相変わらず優しい面立ちの彼はまだ眠そうでネクタイも曲がっている。溜息を漏らし、彼のネクタイを締め直すと恥ずかしそうに顔を赤らめた。2人並んで歩いていると丁度登校してきた山本と会い、3人で歩き出す。



(キョーヤが見たら群れるなって言いそう…)



正門の前で生徒達の集まっている先に見えたのは学ランとリーゼント。いつもの遅刻点検にしては早い時間でしかも今日はやたらと人数が多い。



「服装点検だな」



「蓮は行かなくていいの?」



「ん?キョーヤには何も言われてないし」




風紀の腕章をつけているからといって全ての仕事に参加しろとは言われていない。人目に晒されるのを嫌う蓮華への配慮だろう。



「「「委員長補佐、おはようございます」」」



正門に近付く蓮華に気付いた何人かの頭を下げる。それに習うように大柄な風紀委員たちは一斉に腰を折って礼を取った。

唖然とするツナ達の横で蓮華は穏やかな口調で挨拶をする。全く動じていない様子だ。



「い、委員長補佐っ!?」


「どうしたの、ツナ?」


「いつから」


「はじめからよ」



明らかに動揺しているのはツナだ。風紀委員に入っただけでもヒヤヒヤものだというのに委員長補佐になったということは雲雀の側近になったということ。彼の心労は尽きそうにない。



「沢田」



「副委員長、おはようございます。」



「ああ。昨日はすまなかったな。あの後、委員長は…」



「7時半くらいまであのままでしたよ。」



今日もいつも通り、口に葉をくわえた彼は蓮華の方へと近付く。並盛に君臨する風紀委員、委員長雲雀恭弥の右腕と言われる副委員長の草壁哲矢。その彼と普通に会話しているのは紛れもなく自分の姉。ツナの目はすでに悟りを開いている。



「副委員長、委員長はまだいらしてませんか?」



「多分、まだだと思うが…」



「キョーヤならまだ家じゃないかな?私が出たときにはまだバイク駐輪場にあったから」



「沢田は委員長の家を知っているのか?」



「昨日教えてもらいました。じゃあ、私教室いきますので失礼します」



一礼して彼等から離れるとツナと山本が彼女を追う。驚愕の事実が多すぎ、どこから質問したらいいかわからない。教室に入ると先に来ていた獄寺が加わり、いつの間にか彼女は自分の席で本を読んでいた。



外のどんよりした雲はいつの間にやら雨を呼び、空は益々暗くなる。脳内は授業そっちのけに傘を忘れたことでいっぱいになり、そんなとき、三時間目の体育のプールが潰れ体育館で行われることを担任から告げられた。



「体育、プールじゃないんだ……」



「どうしたの?」



「体育出ようかなって」



気分で出る授業を決めるのかと思いながらも、彼女の体を気遣う。蓮華は少し黙り、‘体は健康そのもの’と呟く。その時、蓮華が何処か冷たく淋しい目をしていたのにツナは気付かなかった。





「体操着なんて初めて着たよ」



「蓮ちゃん、体育出るの?」



「うん♪」



歩きながら白い体操着を掴み苦笑する蓮華の隣には京子。並盛中のアイドルと風紀委員長の華。遠目でも華やかな2人が話しているのを振り向かない男子は居ない。



「アンタ達モテるね」


「何言ってるのよ、花ったら」


「京子ちゃん可愛いからね~」


「蓮ちゃんが美人だからだよ~」


「アンタ達ちゃんと鏡見なよ」



失笑する花を余所に2人は先に体育館に入っていく。体育教師とは初顔合わせ。若い教師は彼女と言葉を交わすと仄かに頬を赤く染めたが、花が‘その子風紀委員ですよ’とチャチャを入れてくれたおかげで教師の顔は一気に青ざめた。雲雀は此処まで恐れられているとは…だが、ある意味面白い。



今日の授業内容は、女子はバレー、男子はバスケ。人数の関係で補欠に回った蓮華は男子のバスケを見た。点差はダブルスコアを越えている。



「やっぱり、ダメツナはダメツナだな」



聞こえてきたのは弟を愚弄する言葉。その言葉に怒気を露わにしたのは獄寺と山本だけではなかった。

もう一度試合を見ると負けているのは他でもないツナのいるチームだ。しかし、そのチームどう数えても1人足りない。


獄寺と山本が反論しようとした次の瞬間、豪速球のバレーボールがたった今綱吉を馬鹿にした男子生徒の頭部へと直撃する。

ボールの軌道を遡るとたった今オーバーサーブを打ちましたという体勢の蓮華がそこに居た。


「ごめんなさい。私運動音痴だから、失敗してしまったわ」


声は笑っている、口許も笑っている……が、その猛禽類を思わせる眼孔は己が弟を愚弄した輩を射殺さんばかりに研ぎ澄まされていた。


その場に居た何人かは思った。


‘嘘つけ、的確に当ててるじゃないか。’

華麗にしかも投げたのではなく打ってクリティカルヒットさせておいて運動音痴等と云われても信憑性など無い。


「それにアンフェアプレーなアナタ達に私の弟を愚弄される筋合いはないわ」



ブラックモードの蓮華は毒づくと一瞬に視線は彼女へ釘付けとなる。自分でブラコンと自負しているからこそ、此処で弟を愚弄されるのを黙って見ているわけにはいかなかった。



「なんだよ!!なら、お前が入るか?」



「あら、参加してもいいの?なら、是非参加させていただきたいわね」



「ただし、もしそっちのチームが負けたら、お前には日曜日に1日中俺達の相手してもらうからな」




突きつけられた要求は下劣。蓮華への下心丸見えの発言に怒りを露わにする山本の後ろでツナが青ざめている。そんな2人を余所に当の本人は口角を吊らし、艶やかな笑みを浮かべた。



「勝てたらね」



宣戦布告に男子たちの下品な笑い声が重なって聞こえた。



「なんであんな勝手なこと言ったんだよ」



「何が?」



「あんな賭…」



「負けなきゃいいのよ」



「しっかし、どーするよ。この点差は厳しくねぇ?」



作戦タイムという名目の時間は蓮華への非難の言葉から始まった。

ツナからの指摘は当然だ。彼からしてみたら自分の姉を危険な目に遭わせてしまうやもしれないのだから。




「……山本君も獄寺君もあとそっちの彼もバスケ苦手ってわけじゃないでしょ?ポジションとかわかる?」



「あ、ああ」



「私、流石に体格じゃ勝てないし、ツナもそうだから、私達はポイントガード、シューティングガードに入りたい。次にドリブルも巧いし、外角からのシュート率も高い獄寺君がスモールフォワードでツナ(私達)のサポートをしてもらいたい。長身でリバウンド率の高い山本君がパワーフォワード、そっちの彼がセンターでいいかな」



「もしかして、ずっと見てたの?」




彼女が口にしたのはそれぞれの特性を見極めた上での指示。

そう…蓮華は初めからずっと試合を見ていたのだ。そして、頭の中で一緒に戦っていた。だからこそ短い時間でポジショニングを済ませることができたのだ。



「そろそろいいか?」



「馬鹿だよな、俺達が男バスだとも知らずに」



「知ってるよ~風紀を舐めてもらっちゃ困るわ。」



作戦を決め、合図を決め終わった頃また下品な声が聞こえた。相手が誰であろうと売られた喧嘩は買う。といったら、最近の男子には居ないほど男前に聞こえるだろう。



相手チームのスローインから開始されるボールを持った相手にはツナを当てる。本当は彼女自身がポイントガードを務めようと思ったがツナのシュート率を考えるとシューティングガードと兼任のコンボガードとなることを選択したのだ。



「じわじわ攻めてやるか」



わざとらしい口振りでパスを回す。しかし、受けるはずだった男子の手にはボールはない。

軽快なドリブルの音が体育館に響き渡り、バックコートに目をやった時には既に型の綺麗なレイアップの状態。

ズポッとバウンドする事もなくシュートは決まる。唖然とする相手チームのメンバーににっこりと微笑みながら響いたのは鈴音の声の毒。



「もー攻めさせてなんてあげないんだから★」



さも楽しそうに………。

その瞬間にこの場にいる何人かは思っただろう。

‘この娘、絶対Sだ’と



「獄寺君」



「んだよ」



「私がスティールするからディフェンス中はバックコート寄りに居て。」



「てめぇの指示なんて」



「ツナにイイとこ見せたくないの?アーリー・オフェンスって双子(私達)と君が活躍出来るスタイルだからね」



相手がバスケ経験者なら、ちゃんとしたディフェンスさせなければいい。相手が守りの体制を作るより早く、攻め落とせばいい。幸いにも自分が3番のSFに置いたのは、最も足の速い獄寺隼人。ツナはディフェンスが甘くなるだろうから、ツナにシュートのチャンスがある。



「私達だけオールコートマンツーマンでディフェンス。疲れるけど大丈夫?」



「誰に言ってんだ、てめぇ」



「頼もしいわ」



挑発的な態度も彼の闘牙を煽るため。艶やかに微笑めば驚き、頬が赤く染まるのを隠すために視線を逸らした。



「なぁ、蓮。俺はどうしてたらいい?」



「とりあえず、点差が縮まるまでアーリーでいくから、相手のオーバーパスに注意してて。バックコートからのオフェンスの場合はシュートチャンス作るから」



「りょーかい。あと、ナイスシュー」



「ん?Grazie♪」




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