嘆きのoltremare -蒼蓮華伝-

柚妃@うさまらーさんと仲良くなりたい
@weisswinde

再会

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嵐は突如として彼の元へと届く。

本人の知らぬところで生まれた風は徐々にしかし、確実に彼に迫りながら大きくなっていく。彼女の帰還がその前触れであったことに気づいたのは取り返しがつかなくなったあとであった。




此処は学ランに身を包んだどう見ても不良にしか見えない風紀委員が学校管理の総てを牛耳る並盛中学校。最近、この学校周辺では不思議なことが起こる。パンツ姿の少年が怪奇な騒動を巻き起こしたり、いきなり火の手のない場所から爆発音が聞こえ燃え上がったりと奇っ怪なことこの上ないがそれとほぼ同時期から並盛中には海外からの転校生が増えた。


そして、今日もまた一人の転校生がこの並盛中へと編入することとなる。





「おい、聞いたか?」


「何をだ?」


「今日また転校生が来るってさ」


「今度もまた男か」


「いや、今回は女子だってさー」



遠くで話される会話を聞きながら、頭で反芻するように繰り返す。最近の転校生は確かに男子でしかも何故か自分に関わる者が多かった。それもこれも、ボンゴレという名のマフィアのボスになれと言われてからだ。未だにそんなモノに実感が湧かない。そんなものとは無縁の日本という平和な国に生まれ、暮らしてきたのだから仕方がないことだろう。

ただ毎日は騒がしくなったが、過去の自分より自分が好きになった気がする。何をするにもいつも諦めてばかりだった自分も変わり始めたからだろう。



今更ながら最近の出来事などを思い浮かべている間にホームルームが始まる。男子たちはソワソワとざわつき始めた。朝の噂には続きがあり、今日の転校生はブロンド髪の美少女とのことだ。


先生に案内され入ってきたのは噂通りの美少女。窓から差し込んでくる光でブロンドの髪はキラキラと輝く。日焼けなど全くしていない白い肌、西洋人形のように整った顔立ちは正しく絵に描いたような美しさであった。男子から上がる歓喜の声に答えるように少女は柔らかく微笑んだ。そんな中、彼だけは動きを失っていた。



「Ciao ツーくん、久しぶり♡」


ハートマークを連想してしまうほど甘い声音は周りの男子の視線をツナへと向けさせる。



「蓮っ!?ど、どうして此処に?」


「私もツーくんと同じ学校通ってみたくって」



驚いて立ち上がったツナに歩み寄る少女の名前は蓮華。靡く髪からは甘い香りが広がり、擦れ違って男子たちは明らかに惚けさせていた。



「てめぇ、いきなり馴れ馴れしいぞ」



いきなりかけられた声に体を震わせる少女。そんな彼女を睨みつける銀髪の少年は彼女とツナの間に割入ろうとしたが、それはその娘によって阻まれた。



「ツーくんのお友達?」



ツナの隣でその少年―獄寺隼人を見据える瞳は疑念を浮かべる。だがしかし、それは彼も同じだ。



「あ、うん。獄寺くんっていうんだ」



「……ふーん。

あ、ところでツーくん彼女できた?」



「なっ!?何聞くんだよ、いきなり」



「だって、華の中学生よ?好きな子の1人や2人……」



既に2人の会話に獄寺の入り込む余地はなかった。にこやかな笑みを浮かべる彼女は会話の最中に向いていた方向から180度方向転換し、一点を見つめる。

そこに立っていたのは…



「ふーん。可愛いじゃん」


「わぁっ!!人の心覗くなって」


「別に覗いてないわよ。ツーくんの顔に書いてあるだけ」



そう…彼女が見ていたのは他でもないツナの想い人、笹川京子であった。明らかに動揺を見せるツナを微笑ましそうに見ていたのは蓮華に獄寺の腕が伸びる。しかし、彼の腕が蓮華の腕を捕らえることはできなかった。一瞬にして、彼女はツナの後ろへと移動したのだ。



「てめぇ、何者だ」



明らかな警戒心と敵意を向けられ蓮華は顔をしかめた。しかし、彼の質問に答える気などさらさらなかったらしく、再びツナに問いを向ける。



「ねぇ、この学校の人って喧嘩好きなの?とても荒っぽいのね」



「そういう訳じゃなくて、獄寺くんがちょっと特別でね」



「でも、さっき黒い服の…アレ、学ランっていうのよね。それ着た人達に追っかけ回されたわよ」




教室内の温度が一気に氷点下まで急降下する。自分が何気なく口にした一言で此処までの室内ブリザードを起こすと思っていなかったらしく彼女は首を傾げた。その時、扉が思い切り開けられる音が教室に響く。視線をゆっくり扉へむける者、我関せずを貫こうとする者と教室内の生徒の行動も疎らだが、一つ言えることは今そこに立っているであろう人物を皆想像していただろうということだけだ。




「見つけたよ」




ナイフのように鋭い眼光は蓮華に向けられ、体が凍り付きそうな程冷たい声音はただ室内温度を下げた。


そんな中、不謹慎にも彼の顔を見つめ瞠目した蓮華は小さく何かを呟く。



「君、なんで制服じゃないんだい?」



彼の指摘は正しい。彼女は今、並盛中の制服は着ていない。身に付けているのは西洋の修道女が身につける服―つまり、シスター服を模して作られただろう服。

似合っているから全く気にかけていなかったが、雲雀恭弥の指摘を耳にした生徒たちの頭に疑問符が浮かびだした。



「…配達待ちなんです。本当は昨日届く予定がトラブルで明後日に届くらしいです。だから、前の学校の制服を着てきました」



「転校生?こんな時期に?」



「はい」



転校生といえば、桜の花びらが舞い散る春か、長期休暇を終えた秋かだが、今は夏。あと1月もすれば夏休みだ。普通ならば、こんな時期よりも夏休み明けの方が期末テストにも被ることがなく楽なはずだ。


疑問はいくつか残るが的確な解答に大人しく引き下がってくれそうな雲雀に安堵の笑みを浮かべるツナの横で蓮華はじーっと雲雀の顔を見つめていた。



「それでも、その髪は違反だよ」



「いや、地毛ですから。」



いきなり延びてきた手が彼女の腕を捕らえる。しかし、瞠目したのは蓮華ではなく雲雀の方だ。



「ワオ、君強いね」



「何のことですか?」



「かなり鍛えてるでしょ、その体。」



好奇の目は明らかに交戦を望むものだ。危機を感じ、彼の腕から逃れるが彼は既に戦闘態勢に入っていた。

慌ててツナを彼の武器の軌道から逃れさせ、間一髪自分もそれから逃れた。




「良い反射神経だね。でも、その草食動物を庇いながらじゃ僕とは戦えないよ」



「戦いたくないですから」



「なら、僕に咬み殺されなよ」



「……全く、似てるのは顔だけなの。もう少しフォンみたいに優しくしてよね」



容赦なく向けられるトンファーにため息を漏らす。愚痴とも取れるそれは明らかに先程までの口調と声音が変わっていた。

仕方無く身構えるがトンファーの矛先は蓮華からツナへと向く。

しかし、その行動をも予測していたらしく彼女は指をパチンと鳴らした。その直後に雲雀の動きは完全に止められてしまう。


彼女は攻撃しようとした雲雀の胸元の服を引っ張り、彼の唇に自分の唇を押し当てたのだ。目を見開く雲雀を嘲笑うように彼女の瞳が細く笑めば雲雀の体から力が抜ける。唇が離れると完全に意識を失った雲雀は彼女の肩に凭れ掛かった。

あまりに衝撃的なものを見せられ、ツナや獄寺、山本すら動きを失っている。

乱暴に自分の唇を服の袖で拭いながら彼を支える蓮華。とても常人技ではない。



「ツナ…応接室って何処?案内して」



「えっ」



「彼、運ばなきゃ。起きたらまた暴れるよ、きっと」




視線を両腕で支え直した雲雀に向ける。彼に異常は見られない。ただ眠っているだけだ。



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