とある図書館の始めの挨拶

カービー⑨
@akiesyymm

今、一つの本が 青い光を放つ


それを紅碧の着物を来た者が見ていた


次第にその光は収まっていき、そこには二人の男性がいた


一人は徳田秋声。尾崎一門の一人で、存在感が薄くひねくれもののあまのじゃく

けれど誰よりも努力をする努力家の人だと 聞いた


もう一人は、ここはどこなのかよくわかっていない様子であった


「…連れてきたよ」


ややぶっきらぼうな声で彼は紅碧の着物を着た者に話しかける


その者はその声を聴くと嬉しい顔をしてもう一人の男に駆け寄った


「佐藤春夫さん!」

「おわっ!?」


その人は不安定な足取りで春夫と呼んだ者に駆け寄った


「なんなんだ?一体…あんた、何で俺の名前を」

「やった!転生できた!!」

「は?転生…?」


春夫より背の低い者は無邪気な子供のように喜びを全身で表現していた

こちらの話など聞いていないようで、ただ意味の分からないことを話している


確か 俺は 





「歩《あゆむ》、喜ぶのもいいが説明したらどうだ。佐藤先生が困っているだろ」


また、知らない者 今度は男だ(そもそも近くで見ている人はどっちだ)

知らない男に名前を呼ばれた


その男は鮮やかな金髪で前髪を長く伸ばしていた。そのせいで彼の表情はよくわからない


「…なんで、あんたも俺の名前を…」


春夫の問いに金髪の男は

「…どこから話しましょうか」

と、少し悩む素振りをみせ


語った


自分はもう何十年も前に死んでいること

自分が 文豪が書いてきた本が浸食されていること

そして「それ」に対抗するために 自分は 転生したということ


「浸食された本を浄化するには文学に熱い思いを持つ魂のみ」

「それ故に、先生は選ばれました」


金髪の男は淡々と話す。用意された文章を読み上げるように


どことなく 「距離」を感じ取った


「にいやー、なんでそんなに固いのー?緊張してるの?」


紅碧の着物を着た者は、歩と呼ばれた者はハスキーで上機嫌な声で

金髪の男を にいやと呼んだ

声を聴いてもこの者の性別がわからない 

着物の着方は男性のようであるが、顔が(前髪で半分隠れているとはいえ)女性的にも見える

声は中性的で判別がつかない


答えを求めるように春夫は隣の黒髪の男、徳田に目線をやる


徳田は春夫の視線の意味を理解したのだろうか、無言で首を横に振った

どうやら彼もわからないようだ


「…緊張なんてしてない。むしろお前が気楽過ぎだ」

「えー?だって転生できたんだよ?すごいでしょ?」

「うん、それはすごい。けどな?」


気が付いたらあの二人は仲よさげに会話している


なんだか、疎外されている気分だ


「あー…会話していること悪いんだが…」

「あ、すみません」




「つまり、俺は一度死んで、浸食された本を浄化するために生き返った。で、あっているか?」

「ええ、あっています」

「佐藤さんはこの館内で2番目に転生されたんだよ!」

歩が金髪の男と春夫の会話の間に入る

「2番目?」

「うん、あそこにいる地味な人が1番目。徳田秋声さん!」

地味は余計だ。と彼の言葉が飛んだ


歩が言うには、浸食された本に入るにあたって人数が多い方がいいらしく

そのためにどんどんと他の文豪を転生しなくてはいけないらしい

あと二人転生するんだとか。彼は?彼女は?言う


「一人で潜書したら大変な目にあうからね…」

嫌そうな声で徳田は言う。体験していたようだ 


「歩が言った通りに、あと二人転生する必要があります。なので」

「徳田先生にはもう一度。佐藤先生には初仕事」

「有魂書に潜書してもらいます」


「せ、せんしょ?」

「はい」


金髪の男いわく、文豪を転生させるにはこの文豪の魂が宿った書

有魂書の中にはいり、その中に宿る魂を連れてくる必要があるらしい


「俺と歩が本の入り口を開きます。そこから入ってそこにいる魂。文豪を連れてきてほしいのです」

「誰なのかは、入ってからのお楽しみなんだってー」


「はあ」


淡々と話しが進んでいく

二人が着々と準備を進めている間に、徳田は口を開いた


「…そういえば、二人の名前を聞いていないね」

「「あ」」


同時にあの二人は口を動かした


俺も聞いていないと、春夫も口を動かす


「確かに、自己紹介していなかったね。自分は燎《かがりび》 歩だよ」

「俺は燎 幸丸《さちまる》です」


歩が素直に答え。金髪の男、幸丸はそれにつられるように答えた


「燎…同じ苗字だな。二人は親戚かなにかなのか?」

「いえ、血は繋がってません」

幸丸は春夫の問いを流れるように。あらかじめ予測していたかのように答えた


「さて、潜書の用意ができました。館内案内等はあと二人転生し終わって方しましょう」

「色々案内するの楽しみだなー」


一人は淡々と もう一人は嬉しそうに 春夫と秋声を有魂書の前に移動させる


徳田はやれやれと 春夫は二人を気にしつつも


有魂書に潜書した