放課後ゲーム

優衣(柚葉)@実況アカウント
@yui_052057

03話 偽りのフォト

「黒河」


職員室に出席簿を届け終え出ようとすると、数学の守岡先生が話しかけてきた。

守岡先生は今年来た新任教師で、顔立ちがジャニーズ系。当然女子にモテる。教師が女子生徒にキャーキャー言われているシーンはドラマや漫画では何度も見たけど、実際あるんだなと思った。所謂、イケメン教師ってやつだ。


「悪いが、答案用紙を持つのを手伝ってくれるか?」

「あ……この間の、小テストのですか?」

「ああ。頼んでいいか?」

「はい」


私はにこりと微笑むと、守岡先生は「助かるよ」と言って笑う。

隣に並んで会話をする。守岡先生とまともに会話したのが、これが初めてである。


「そういえば、黒河って頭がいいんだろ? 一年の時の数学の先生に聞いたよ」

「……そんなことないです」

「今回の小テストを見て、心配になったんだ。かなり点取れてなかったからな」

「……」


この前、数学の授業で小テストがあった。十点満点の簡単なテストだ。私はいつもその小テストで満点だった。だけど、いじめの影響か授業も全く集中できなくて、いつも三点と四点を行き来していた。守岡先生はそのことを気にかけてくれたようだ。


「大丈夫です。ちょっとストレスたまってて」

「そっか……。黒河って本を読むのが好きだとか言ってたよな。今度、おすすめの本を貸してあげるから、気分転換したらどうだ?」

「いいんですか? 悪いですよ……」


そう言い、俯く。

私の私物は、すべていじめによって汚されたり破られたりした。もし、先生の大事にしている本までもがボロボロになってしまったら。そんな不安が襲う。


「そんなことないぞ。可愛い教え子に、本を貸すことくらい平気だ」

「っ……」


ぽん、と優しく頭に手を置かれる。その手は暖かくて、つい本音が漏れそうになる。


『先生。本当は私、いじめられているんです。地獄から出たいんです。助けて!!』


言いたい。言ったら、どんなに幸せなんだろう。外の世界に出られるのだろうか。

私は言おうとした言葉をぐっと押さえてしまった。

放課後職員室に行き、先生から本を受け取った。家に帰り、本を読む。内容も面白くて、久々に笑ったようなかんじがした。

学校には、心配してくれる人はいない。周りはすべて敵だらけ。そんな現実から何度も逃げたかった。けれど、そう簡単には逃げることはできない。


「……ふぅ」


明日、早めに学校に行って、先生に会おう。

そう決めて、今日は早めに寝た。


次の日だった。

深呼吸をして、教室に入る。するとそこにはクラスメイトがほぼ全員来ていた。まだ朝の7時30分。朝の会が始まるのは、8時15分からなのに、どうして……。

それに、クラスメイトはいつになく怪しい雰囲気を放っていた。ニヤニヤとした表情をしている。


「ねえ、黒河サン~」

「っ!」

「ちょっと~、逃げなくてもいいじゃない♪」


逃げようとすると、安条さんの取り巻きに体を押さえつけられた。

自分の鞄を胸に抱え込む。するとその姿を見たのか、安条さんが私のほうに歩いてきた。


「鞄の中、何入ってんの~? ちょっとみせてよ」

「や……っ!」


無理やりひったくられ、鞄の中を見られる。その中には先生が貸してくれた本が入っている。


「返してっ……!!」

「あれ? この本……。……やっぱり噂は、本当だったのねぇ」


安条さんはそういうと鞄を閉め、私に投げつけた。顔に当たり、思わず俯いてしまう。

「噂」という言葉に耳が入った。噂ってなんなのだろうか。


「あんたが、先生に色目使っているって……本当だったんだぁ」

「うわ~、こいつビッチじゃん!!」

「そうやって、贔屓されようって手口なんだ~! マジ最低!!」

「えっ……!?」


色目? ビッチ? 贔屓?

何を言われているのか分からなかった。動揺する私に、安条さんが一枚の写真を見せた。

それは、昨日廊下で守岡先生に頭を撫でられている写真だった。


「まさか、真面目な黒河さんがねぇ……ちょっと引くわ~」

「ちがっ……違う!! これはっ……」

「この写真だけ、ばらまいてもいいんだよ~? どう捉えるかは周り次第だけど」

「っ……」


どうして。

どうして、そんなことをされなくてはいけないのか。どうして、誰も「やめなよ!」の一言を言ってくれないのだろうか。苦しくて悔しくて、思わず涙が溢れる。


「最低だよね~」

「真面目ってよくわかんないわぁ」

「ビッチ……ってことは、もうヤっちゃったりとか?」

「ぜってぇそうだろ!! 今度相手してやろうぜ?」

「!!」


女子どころか、男子まで、この状況を楽しんでいるようだった。

きっと、みんなテストのストレスで溜まっているんだ。だから、一人がいじめのターゲットになったことで、みんなで一致団結して私を陥れようとしている。

私は急いで教室から出て行った。教室の中から笑い声が聞こえる。


「……っ……」


どうやって対処したらいいんだろう。先生に言うべきだろうか。でも、取るべき行動はひとつしかなかった。私はそのまま職員室に行った。そして、ノックする。中には数人の教師がいて、私を見た途端、こちらに歩いてきた。


「黒河。丁度よかった。入りなさい」

「え、あの……」


私は、そのまま職員室に入った。そこには、担任と守岡先生が座っていた。嫌な予感が頭によぎった。


「この写真に見覚えはないか」

「えっ……!?」


担任の手に握られていたのは、安条さんが持っていた写真と全く同じ写真だった。私は首を横に振る。教師と生徒、しかも男女であるとなれば写真だけ見れば恋仲のように見える。事情を説明すると担任も守岡先生も納得してくれた。そして、写真については差出人不明だったそうだ。そして、このことを不問にした。

けれど、私はわかっていた。きっと安条さんたちだと。けれど、勇気の出せない私は、そのことを先生に告げることができなかった。


                                      ~続く~

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