ES

しらす
@Shalsh_Noir

水底から見る夢



ふと夜中に目が覚めた。


喉が乾いていた。


だから、水が欲しくてカバンの置いてある所へと水筒を求めた。


コップに水筒から水を注ぐ。


「え・・・?」


手にしたコップを覗くと、水に映った紫と緑の瞳が僕を見つめ返す。


だけれど、その容姿は違っていて。



僕は幻想薬、という薬を用いて姿を変えていた。

これは一種の呪いとも言える薬で、変わったまま戻らない人もいるらしい。


戻らなかったらまたその薬を飲めばいいや、ってそう思って飲んだ。



そうして僕は今、ムーンキーパーのオスになっている。



けれど、水に映った僕は。

薬を飲む前の僕の顔をしていた。



悲しげな顔で僕を見つめているように見えて

僕はコップの水を飲み干した。


いいじゃないか、どうしてそんな顔をするんだ。

僕は、望んでこの姿になったのに。


「きっと、寝惚けているんだな。寝よう」

言い聞かせるようにそう呟いた。


ラベンダーベッドのリリーヒルズに借りた部屋は簡素で

ベッドしか置いていない。


エリックにふと、会いたくなった。


僕は首を振る。

ううん、だめだ。

この任務が終わるまで帰れない。



無理矢理にでも目を瞑って、微睡む感覚を思い出す。

寝よう、寝るんだ。


けれども、瞼の裏に、さっきの僕が焼きついて離れない。



僕が無くしてしまった僕が

水に落ちて沈む椿のように。


僕の中に沈んで、沈んで。


冷たく冥い底で、僕を見る瞳は・・・・・・。







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