時止まりの物語 〜親世代〜 1年生編

ゆうき
@yu102ki

第1章 プロローグ

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ーーすべての始まりは突然だった。


途切れることのない時の流れが、一段と激しく、色濃く、全てを巻き込み動き出した。


時を止める堤もせきも存在し得ないこの世界の中で、生まれたひずみを正す力が、必要とされていた。


『ーー時の力は甚大なり』


この言葉を誰が語り残したのか、記録はされていなかった。











Harry Potter 『時止まりの物語』〜親世代〜











突然、大きな羽音が頭上に降って来た。


「ひゃああぁぁ!?」


大きな茶色い影が見えたと思ったら、何かに襲われた。

部屋でくつろいでいたユウキは、あまりのことに目を白黒させた。


「何!? 何なの!? あっち行って! あっち行ってったら!!」


大きな鳥に襲われパニックになりながらも、ユウキは何とか手で鳥を窓の外に追いやろうとする。

しかし、鳥はその度にユウキに突進してくる。


「痛い、痛い! やめてったら!!」

「ユウキ!? どうしたの!?」


どうやらユウキの叫びはキッチンにまで届いていたらしい。

慌てて部屋に入って来たリリーが叫んだ。


「ふ、フクロウ!?」


黒と茶の羽を持ったモリフクロウだった。

鋭いクチバシと爪がユウキの銀の髪を荒らしている。


「リリー! エバンズ家は一体いつからフクロウを飼い出したの!? 私、聞いていないんだけど!」

「私だって知らないわよ! 貴女が知らないなら私が知るわけないじゃない!」


リリーは何とかフクロウを抑えつけようとしたが、ばたつかせる羽に邪魔されてうまくいかないようだ。


「リリー! 手紙! こいつ、足に手紙がくくりつけられているわ! 取って欲しいのかも!」


黒い紐に巻かれた紙が、フクロウの足にくくりつけられて、フクロウがバタつくたびにプラプラと揺れていた。


「本当だわ。ちょっと待って……」


リリーがフクロウの鉤爪に注意しながら手を伸ばす。

すると、フクロウが急に大人しくなった。

それどころか、手紙がくくりつけられている方の足をリリーに差し出したではないか。


「まあ。いい子なのね。ーーあら、これって……ユウキ宛てよ。『ユウキ・クロスノース様』って書いてる」


『コークワース州 ヒルサイド・ハイライン

リングレッド16番地

エバンズ家 子ども部屋

ユウキ・クロスノース様』


紐を解いてリリーがユウキに手渡した。

それは封筒に入っていた。


「何これ? 住所はリリーの家になってるよ? どういう……」


そうしている間に、フクロウがまるで礼のような仕草をして窓から飛び立って行った。

リリーはその様子を見ながら「なんて躾のいいフクロウ!」と驚いていたが、躾が本当にいいなら、受け取り手にあんな所業は働かないだろうとユウキは思った。


黄味がかった封筒は、蝋で封をされていた。

紙は少し硬い気がする。羊皮紙のようだ。

ユウキは封を切り、中の便箋を取り出した。


「ワオ! 本当に!?」


ユウキの表情が、フクロウに襲われていた時から一変した。


「何、どうしたの? 私にも教えーー」


リリーがユウキに教えて貰う必要はなかった。

もう一羽、今度は灰色のフクロウが窓から侵入して来たからだ。










今日は、エバンズ家とクロスノース家の合同パーティの日だった。

ユウキとリリーの初等部卒業おめでとうパーティーだ。

秋からは公立の中等学校へ進学することが決まっている。


二人の家は家族ぐるみで仲が良かった。

イギリスのコークワースという、製糸工場などが多くある工業都市に住むこのふた家族は、家が近所であること、そして子ども達の年代が近いことから親しくなっていた。

エバンズ家の家長、ベン・エバンズは製糸工場で働いており、妻のサラは近くのスーパーでパートをしていた。

リリーの姉のペチュニアは、すでにユウキ達が進学する予定の中等学校に通っている。

数年前まではユウキとリリーと三人でとても仲良しで、公園や廃業して誰もいなくなった工場跡に入り込んでは遊びまわっていた。

しかしペチュニアは中等部に入った頃から、段々、ユウキ達と遊ぶことに飽きたようで、最近はほとんど会話をしていなかった。

一方クロスノース家はというと、ユウキと母の二人家族だった。

父はユウキが小さい頃に亡くなったそうで、母子家庭であるクロスノースの親子を、心配するように声がけしてくれたのがエバンズ家であった。

母のリンは少し遠くの喫茶店で働いており、家計を守ってくれている。

東洋の日本という国の出身であり、黒髪・黒い瞳だった。

その子どものユウキの髪の色は銀色。

セミロングまで伸ばし、だいたい低い位置でツインテールに縛っている。

瞳の色は母親譲りで黒。

リリーはよくユウキの瞳の色を、吸い込まれるような黒曜石のようだと言ってくれた。


そんなふた家族であったので、互いに裕福な家とは言えなかった。

しかし、エバンズ家は父のいないユウキやリンを気にかけてくれたり、料理の得意なリンがエバンズ家に料理を振舞って楽しく過ごすことができた。

中等学校だって、友人の中には私立の学校に通う子もいたが、ユウキはリリーがいて、ペチュニアが通っていて、リンやベン、サラがいれば十分だった。


そんな中ーーもたらされた衝撃のニュースに、クロスノース家とエバンズ家は騒然とした。


「まあ、まあ! ユウキ!」


リンが感極まったように叫んだ。


「貴女なら間違い無いと思っていたわ。あまりにも遅いから少しだけーー少しだけね? 手紙が来るかどうかドキドキしていたんだけれども。でも、よかったわ! 貴女は立派な魔女になるのよ!」


ユウキの肩を抱き、リンはくるくると踊った。


「ほら、パパ、ママ。リンおばさまも喜んでいるわ。ねえ。ホグワーツは実在するのよ! おばさまお願い、パパとママを見て! お願いだから説得してよ!」


頰を赤くして、リリーが父と母を説得しようとしている。

ベンとサラは『魔法』という実現するかもわからないものに顔をしかめていた。

ペチュニアは疑ぐり深く、何度もリリーやユウキに届いた手紙を睨むように読んでいる。


「あら、あら。ごめんなさいね。あんまりにも嬉しかったものだから、皆んなを置いてけぼりにしたわねーー信じられないでしょうけど、ベン、サラ。これを見て」


リンが懐から何かを取り出した。

棒だった。

まるで指示棒のような、でも凝った彫りの入った、どこか存在感のある棒だった。


「ほら、よーく見ていてね。チュニーも見ててーーほぉら」


リンがふわりと軽く棒を振った。

するとそこから、瞬くような光がこぼれ落ちたーーと思えば、それはテーブルの方へ流れていき、パチパチと瞬きをするうちに、数々のお皿やカップになり、目を見開く間に、そこには美味しそうな料理が所狭しと並んでいた。


「わあ! おばさま、すごい!」


そう感想を述べられたのはリリーだけだった。

ベンもサラもペチュニアも、そしてユウキだって、驚きで何も言えなかったのだ。


それを気にせずに、リンは皆んなに魔法界と非魔法界のこと、ホグワーツのこと、果ては魔法省やどこぞの魔法使いの横丁の話まで説明した。











「ーーな、なるほど……そんな世界が実在しているなんて」

「それじゃあ、リンも、その、魔法使いなの?」


ひと心地ついた頃、ベンとサラが言った。


「ええ、もちろんよ。ほーら」


リンが杖をもうひと振りする。

途端に可愛らしい花がポンポンと音を立てて出現した。

それをサラに渡すと彼女は喜んだーーサラは花が大好きなのだ。


「はい、ユウキにも。どう? ……驚いた?」


なかなか何も言わないユウキに、リンが少し心配そうな色を含んで聞いてきた。

ユウキは花を受け取り、顔をリンに向けた。


「母さん、すごい! なんでずっと隠してたの!? もっと早く教えてくれたらよかったのに!」


まさか、魔法使いなんて架空の世界のお伽話かと思っていた。

ユウキの顔は興奮して赤くなっているだろうーーリリーのように。


「そうね。ごめんなさいね、今まで黙っていて」


その表情に、少しだけ影が落ちたことに、ユウキは聡くも気づいてしまった。


「ねぇおばさま。この手紙のリストに載っている教科書や道具はどこに売っているのかしら。そこの商店街にはないわよね……」

「ええ、リリー。魔法界のものは魔法界のお店で売っているのよ。ーーさあ、ベン、サラ。貴方達はどうする? リリーが魔法界に入ることを許してくれるのかしら」


リンは黙ったままの二人に声をかける。

ベンとサラは顔をお見合わせた。


「少し、家族だけで話してみるよーー頭の整理もしたいしね」

「そうね、少し時間をちょうだい。まだちょっと戸惑っているの」


まだ困惑した表情の二人に、リリーは顔を膨らませたが、リンはそれもそうでしょうと頷いた。

そのまま、ユウキとリリーの卒業おめでとうパーティは延期になったのだった。