砂時計

空宮@Ibボイスドラマ
@chesyalice_t7s

プロローグ

「私」と「君」。

まるで腐れ縁のように、見えない糸で結ばれているように、ずっと一緒だった。君が私の左隣にいるのが当たり前。何も疑っていなかった。

まだ小さい手と手を繋いで、舗装の剥げた道を並んで歩いたこと。今でも覚えている。その手の柔らかな温もりを。

小学生になってもその関係は変わらなくて、毎日放課後には玄関にランドセルを放り投げ、君の家に遊びに行った。すぐ近くにある君の家の外壁は真っ白で、お城みたいで好きだったのを記憶している。

二人で公園に足を運んで、ブランコを漕ぐ。寂れた公園を使っているのは二人だけ。少し物憂げな木々たちが風に揺れる。空が緋色に染まっていく。

「きれいだね」

「そうだね」

短い会話。君といるだけで何か落ち着くものがあった。

「帰ろっか」

「うん」

まだ揺れているブランコをそのままに、公園を後にする。濃度の高い影が二人を追いかけた。

歩道の隅。猫が鳴いている。白いつやつやの毛並みの小さな猫だ。どこかの飼い猫だろう。人慣れはしているようだった。

「可愛いね」

猫の背中を撫でる。猫は気持ちよさそうにゴロゴロと喉を鳴らした。


そんなつまらない日常がこれ以上ないほどに好きで、こんな日々がずっと続けばいいのに、そう思っていた。

高校生になり、私に初めての恋人ができたときも、君は祝福してくれて、私の愚痴に付き合ってくれた。君は優しい人だ、本当に信頼できる友人だと、ことあるごとに言っていたような気がする。


上京して、同じ大学に進学した頃には、二人はもうすっかり大人になって、私は少しずつ汚れていった。些細なことじゃ涙も流さないくらいに。夕暮れの公園や道端に寝転がる猫には目もくれないくらいに。

君も当然そうだろうと思っていた。薄れた思い出の中に、二人の関係だけが確かに残っているのだと。

でもきっと、そうではなかったのだ。そうではなかったから、君はこんなことをしてしまったんでしょう?

ああ、どうして。

約束したじゃない、今度一緒にあの喫茶店に行こうね、って。なのにどうして、そんなことをしてしまったの。


どうして君は、あんな夕焼けがきれいに見えるところから、一人飛び降りてしまったの?

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