何故(なにゆえ)泳げぬ物語

ゆうき
@yu102ki

第2章 飛んだ紳士

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「お、ユウキ」

「よぉチョッパー。見張りお疲れさん」


朝目が覚めてどこか肌寒い甲板に向かうと、昨夜の見張りだったチョッパーに出くわした。

少し眠そうに目をこすりながら見張り台から降りてくるチョッパーは、ユウキが麦わら海賊団の一員になってからユウキを恐れずに話しかけてくる者の一人だった。


「本当に面白れぇよな。『ヒトヒトの実』か……。悪魔の実はどこまで種類があるのやら」


綱を降りてくるのに人型になっており、降り終えてから人獣型に戻るチョッパーを見ながらユウキは感心した。

なんでも、チョッパーは元々ただのトナカイだったのにヒトヒトの実を食べて言葉をしゃべれるようになったらしい。


「でも、その青っ鼻は生まれつきなんだろう? イカスなぁ……」

「そ、そんなこと言われても嬉しくないぞっ!」


そう言いつつも笑いながら手を叩き、リズムに乗って足をすぃっとだすところがチョッパーのかわいいところだった。






「それにしてもユウキは起きてくるのが早いなぁ~」

「そうか? でももう太陽は出てきてるぜ?この船の船員が起きるのが遅ぇんだよ。ふつー日の出と共に、だろ」


ユウキは歩調をチョッパーに合わせて歩き、一緒に甲板の階段を上がる。

チョッパーは半徹夜明けでときどきふらつき、危なっかしい。

ユウキはそれをときどき支えながらため息をついた。


「ーーなぁ、やっぱりあそこしか無いのか?」


チョッパーは一瞬きょとんとしたが、すぐに何の話か察したらしく、首を横に振る。

ユウキはまたため息をつきながら痛む頭をなでた。






ユウキが言っているのは、寝ている場所のことである。

麦わら海賊団の寝床は、男は木製のハンモックのようなもので寝るのが普通である。

ユウキは今まで愛船ラパルムの狭い船内で寝ていたので、ハンモックはとても嬉しかった。

寝返りは打ちにくいが、そのせいで船が揺れるなんてことはあり得ないし、手や頭を天井で打つこともない。

窓は離れているからまぶしいこともないし、比較的寝やすい。

寝心地については一切の文句は無かった。


ユウキの寝床の定位置は、唯一空いていたルフィお気に入りのハンモックの真下だった。

それまではそこで誰も寝ようとしなかったらしく、初めて寝る日の晩はルフィが嬉々として話しかけてきたことを覚えている。

初めはビビッていたウソップも話に加わり、わいわい騒いでナミにうるさいと怒鳴られたのもそのときだった。


ところが、問題はその位置にあった。


次の日の朝、ユウキは思いもかけない衝撃でハンモックから落とされたのだ。


はしめは何が何だかわからなかった。

ハンモックはぐるりと逆方向にねじれ、タオルケットはユウキの足に絡み付いていた。

体は床にぐしゃりと落ち、頭と腰をしこたま打ちつけたあのときの痛みは今でも鮮明に思い出せる……。


「本当に参るーー毎日決まった時間に上からルフィの足が落ちて来るんだぜ?あいつの寝相の悪さはどうにかならねぇのかなぁ」


その制裁にはチョッパーも、仲間に加わったばかりのときに味わったらしい。

これだけはいつもはやさしいチョッパーも譲ってくれなかった。


「……ん?」


チョッパーがふと、トレードマークの青い鼻をひくひくさせながらユウキを見た。


「ユウキ、もう朝飯食ったのか?」

「え?」


ユウキは思わずきょとんとする。


「生魚のにおいがする。おれもはらへったぁ~」

「あ、ああ。まぁな」


ピクリと反応しつつ、平常心を保ちながら答える。

チョッパーはさっそくキッチンへ向かおうとした。

ちょうどそのときナミが起き出してきた。


「ナミおはよう」

「あら、早いのね……って、チョッパーは今日は見張りだったわね。今は誰?」

「今の見張りはゾロだ。寝ないように片手腕立てするって言ってた」

「そう」


ナミがどこか呆れたように言った。

ユウキも、どうしてゾロがあんなに自分を追い込むのか、追い込むことができるのか不思議でならない。


「おい、そう言えばナミ」

「何?」


二人に追いつくように階段を上ってくるナミにユウキは声をかけた。


「この船の風呂って入っていいのか?」

「は?」


ナミが怪訝そうに、眉をしかめた。


――朝っぱらから何を言うのか。


ユウキも自分でそう思った。

しかし言わずにはいられらない。

ところが、ナミが言いたいのはそれではなかった。


「あんた、もしかして、この船に乗ってから一度もお風呂入ってないの?」


ユウキはそれに当たり前だ、と言わんばかりにコクリと頷いた。

何しろこの数日間、一度も広い船内のどこに何があるなど知らされていないのだ。



「今すぐっ! 今すぐ入ってこい、このバカ――ッ!!」



その日の朝は、ナミの怒声と何かが殴られる音で全員が目を覚ました。











「~♪~♪」


ユウキは数日つけっぱなしだった腰のナイフもとり、服も脱いだ。

かえの服もタオルもかごに入れ、ふと鏡を見る。


「おっとっと、こいつをとらなきゃな」


取り忘れていたターバンをはずす。

肩より長い黒髪がさらりと流れた。



(ーー何日ぶりの風呂だろうか)



ユウキはわっしゃわっしゃと体を洗う。

数日分のあかをしっかり洗い流さなくてはならない。

体中を泡で覆いながら(洗剤を使いすぎの感もあるが)ちゃんと足をそろえ、指の先から耳の裏までごしごし擦った。


(一枚一枚の間まで洗わなきゃ。ーーチョッパーの鼻にはかなわないな……)


ユウキは必要以上に時間をかけて体のすみずみまで丹念に洗い上げた。







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