星の使命

りあ@創作 絵&文 低速
@raral_R

BH_4話

 ドラットー将軍に報告書を提出するために王城の廊下を肩で風を切り歩みを進める。

 ーーーこんな堅苦しいところ、さっさと出よう

 『王の剣』の制服を着たアルシュエイフはピタッと足を止め、気配を消す。

 「王都の中に帝国のスパイか…」

 「居る、とは覚悟しておりましたがこんなにはやく議決したことが漏れるとは…敵は近くに居るようですな」

 「背中から刺されるようなことがあってはかなわない。全く気が抜けぬわ」

 声が遠ざかっていく。恐らく重鎮の数名だろう。

 スパイ という言葉に先日見た王子の友人の手首を思い出す。


 「立ち聞きとは行儀が悪いな」

 すぐ後ろから咎める低い声がする。

 前方の会話に集中して後ろががら空きだったようだ。

 それでも相当の手練でなければ前線で成果をあげ続けるアルシュエイフの背後に立つことは出来ない。

 「申し訳ございません、コル将軍。相応の躾を受けて育ってはおりません故、お許しください」

 ルシス三大将軍と言われる コル であることを声で分かったアルシュエイフは振り向かず皮肉を返す。

 「廊下であのような話をするのもどうかと思うが…。罰としてこれを陛下に渡せ。俺は外に行く用事がある」

 半身で振り返ったアルシュエイフにコルは書類を押し付けると何も言わず踵を返し立ち去る。

 「…」

 ーーー余計な仕事を増やしやがって

 一刻も早く立ち去りたいアルシュエイフはあからさまに苦虫を潰したような顔をして、先にレギスへ書類を届けることにした。


 レギスは執務室で難しい顔をして書類に目を通していた。

 「失礼致します、陛下。『王の剣』所属アルシュエイフです。コル将軍より書類を預かって参りました」

 アルシュエイフはドアの前にいた護衛に説明後、ノックとともに重厚なドアを開ける。

 窓ばりで周りの高層ビルに遮られず光がさんさんと入り込む明るい執務室に少しばかり目を細める。

 「…ご苦労。アルシュエイフ、こちらへ」

 レギスは人払いをするとアルシュエイフから机越しに書類を受け取る。

 「…功績は聞いている。最近はどうだ?」

 眼球を左右に動かし文字の羅列を追いながらレギスはアルシュエイフに話しかける。

 「はっ!常に鍛錬しより犠牲を少なく帝国兵を倒せるように精進しております。レギス国王陛下のお計らいによりコル将軍から直々に稽古を付けていただく機会を承り、心より感謝しております」

 アルシュエイフは敬礼しつつ、はきはきと答える。

 「学は順調なようだな。クレイラスから聞いている」

 「帝王学、心理学、その他、人を束ねるに必要な学問はクレイラス様にご教授頂きながらもどうにか理解しております。戦場で帝国兵の裏をかくのに活用させて頂いております」

 レギスは書類をデスクの上に置く。

 白紙の書類を。

 「アルシュエイフにはすまないと、思っている。魔法を使える王子が前線に出ないことへの不満が部隊内であるだろう。それを補うために学校にも行かせず、魔法と親和性が高いから、と、前線に送り出していることを許して欲しい。そして、これからも生きて戻ってきてくれ」

 アルシュエイフは口を開きかけるも、レギスの言葉を頭の中で反芻する。

 そして再度口を開く。

 「私は戦場でしか生きられない人間です。帝国兵やシガイと命のやり取りをしている瞬間が1番、自分は生きているんだ、と感じます。武芸だけでなく学も教えていただき、私の生還率は上がりました。いずれ訪れるその『時』に備え、日々精進して参ります。陛下もどうか、ご無理をなさらずに」

 ノック音が部屋に鳴る。

 「謁見者だな。短い時間ではあるものの、会話できてよかったアルシュエイフ。お前も生きてこそ、だ。必ず生き残れ」

 返事をして退室する少女の姿を見送りながらレギスは先程、アルシュエイフが言おうとした言葉に思いを馳せる。

 ーーー私は王子の犠牲となるために存在しております

 何度か会話を交わしたことがる故に想像できた。

 王の直属部隊として『王の剣』に所属させているが、アルシュエイフにはノクティスが王になった時を見据え様々な経験を積ませていた。そして、時間があれば王子を見守ってほしいと(欲を言えば王子の友人になってほしい)話していた。

 アルシュエイフは友人になることは辞退したがそれ以外の事はこなしており、直接会うことはなくてもクレイラスやコルを通じて情報を得ていた。

 それほどレギスはアルシュエイフという今はまだ小さな星に期待を寄せていた。

 それを知るのは旧友のクレイラス、コル、王都外にいるシドだけである。

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