空漠にてこがねは光り、地に這うものどもの語らい

丁字
@pincta

いずれかの過去、恐らくは初夏、晴天、昼下がり、山奥にて

花畑のただ中に突っ立つ長曽祢虎徹はひたすらに落ち着かない気分となっていた。


出陣という位なのだから、当然斬った張ったのいくさ働きをするものとばかり思い込んでいた──現にそのような「仕事」もきちんと有った──が、今現在はといえば戦装束もそのままに山間地にふいに開けた草地のド真ん中に佇んでいる。


ほんの数年前にはそこそこの大樹が幾本か立っていたと思しき場所であった。あたりに大きな日陰を作っていたそれが何らかの理由で倒木したために、密集する樹々に囲まれて、ここだけくり抜かれたように陽光が降り注ぐ草地が広がっている(草に埋もれるように、幾本かの倒木の太い幹が見え隠れしていた。土に還る途中なのであろう)。ほんの十数年もすれば新たな樹々が成長し、周囲の森と溶け合うように消えて行く。しかし今のこの場所には、時節も相まって名も知れぬ草花たちがわんわんと茂ってその存在を精一杯に主張している。百花繚乱というには一つ一つの花は色も大きさも控えめだが、それでも脛が隠れる程度の丈までも、とりどりに咲き誇っているのはけっこうに見ごたえのする光景であった。


何より彼の調子を狂わせているのは、鶴丸国永の存在だ。己の隣で地べたに直接胡坐をかいてすっかり寛いだ様子でいる。透けるような容貌の男が狂い咲きした野花を背負った様は、やや上手から見下ろす伏し目がちの横顔が眠たげにすら見えるのも相まいぞっとするほど絵になった。


これはいかなる事態か。


さんさんと降り注ぐ陽光は鶴丸の色素の薄さを一層映え立たせるし、自分ら以外の生き物といえばあたりを行きかう熊蜂や紋白蝶ばかりだし、長曽祢はだんだんと己の無骨さが、この麗しい光景の一点の墨汁の染みのようにすら思えて来た。つまりは、ファンシー過ぎて居心地が悪い。


いや<真面目 まじ>な話、なんだこれは!


内心でそんな悲鳴を上げそうになれど、実際に口に出せないのが本丸の新参の悲しさである(……と、彼自身は大真面目に考えているが、もとより口下手な性分なのが事態に拍車をかけている面も大きかった)。