ほのぼの本丸。

空夜@プラス書き
@___kuy98

「あなたはいつまで経っても落ち着きがありませんね」

『だ、だってですね』



ハァと今日の近侍である宗三さんに隣でため息をつかれてしまい、申し訳なくて肩を縮こませる。

出陣から帰ってくるみんなを待つのに落ち着けないよ・・・。考えたくないけど、もしかしたら中傷や重傷を負って帰ってくるかもしれないんだよ!?



「主、ただいま」

「ただいま戻りました」



そんな私の心配も杞憂だったようで、元気よく門をくぐって帰ってきた部隊を見て、肩の荷が下りる。

そして満面の笑みを浮かべて、こう言う。



『おかえりなさいっ!!』



私の中で譲らないモノ。それは出陣も遠征も演練も全て、無事に帰ってきたら笑顔でお迎えすること。

せっかく戦場から自分たちの本丸に帰ってきたのに、主である私が不機嫌な様や悲しい様を態度や表に出していたら気を休めることなど出来ないから。



『今日の誉は誰ですか・・・?』

「はーい、俺だよ!」



そう手を挙げたのはほかの刀《ひと》とは一回り小さい、それでいて大太刀を背負っている蛍丸さんだった。蛍丸さんは出陣すると必ずといっていいほど誉を貰う常連だ。



『おめでとうございます!』

「ありがとう!でもそんなに撫でるなぁ!」



頭を撫でてみればそう言われるが、満更でもない様子なので撫で続けながら問う。



『じゃあ蛍丸さん、お願い事ありますか?』



この本丸では出陣から帰ってきた部隊の中で誉を貰ってきた刀《ひと》のお願いを私が叶える、というルールがあるのだ。

といっても、私が決めたものじゃなくてみんなから凄く強請られて始めたもので、願いの大きさもまちまち。一緒に遊んでとか一緒にお茶を飲もうとかの小さい事から始まって、明日の近侍にしてとか一緒に寝よう(短刀限定)とか色々・・・。



「ねぇ?」

『あ、ごめんなさい。ボーッとしてました』

「もう、しっかりしてよね?」

『はーい』



我に返って周りを見渡すと、いつの間にか他の出陣していたみんなはいなくなっていて、蛍丸さんと私のふたりきりだった。

昔を振り返っていたらいつの間にみんないなくなってたんだ。



「じゃあさ、来派の部屋に来てよ!」

『うん、いいですよ?』

「じゃあ行こっ!!」



そう言うとぱぁっと笑顔になり、私の腕を掴んでグイグイ引っ張る蛍丸さんの後ろを、緩まる頬を手で隠しながら追いかけた。




「主はん、蛍のわがままに付き合ってもろておおきに」

『大丈夫ですよ、誉取って来たんですもん。

それよりも突然来ちゃってすみません』



蛍丸さんと愛染くんの保護者である明石さんが、いつもの気だるい感じで話しかけてきた。



『蛍丸さん、来派部屋に来たのはいいんですが』



何をすればいいんですか?と尋ねる。

いつもは具体的にこれしてって言われてばっかだから、このパターンは慣れないんだよね。



「固すぎじゃない?俺はただ、みんなで昼寝がしたいのっ」

「それはええなぁ」

「えー、俺は外で遊びたい!」



愛染くんの意見はガン無視でいそいそとブランケットを取り出す明石さん。



「俺の意見は!?」

「国俊、主はお昼寝したいって」



ね!と半強制的に頷かざるを得なくなってしまった。

愛染くん、ごめんね。今度は外で一緒に遊ぼうね。



「まぁ、主さんが言うなら・・・。」

「ほな寝ましょか」



部屋に太陽の光が差し込んでいてぽかほかしていて、ブランケットは柔軟剤のいい匂い。

寝っ転がってブランケットに包まれば、すぐさま夢の世界へと飛んでしまった。






「蛍はなんで主はんと一緒に寝よう言ったん?」

「主、最近仕事ばっかりで寝れてないって聞いたから」

「蛍はやっぱり優しいな!」


私の寝顔を見ながら、来派のみんなが優しい顔でこんな会話をしていたなんて、私には見当もつかなかった。