ようこそ、新しい生活

緋寄@🍏🍎
@Enph_hiyo12

三章

次の日、私は街へ出た。気付かれないようにウィッグを被ったりカラーコンタクトを入れたりして別人に成りすますと観光客のふりをして外回りを行っていた標的に近づいた。


「Excuse me.」


笑顔を浮かべ軽く肩を叩き標的の式部紫織に声を掛けた。彼女は警戒したようにして肩に力を入れて振り向いたが、私の事を見てすぐに笑顔になった。


Are you okay?如何かしました


私は地図を出して道を訊いた。彼女は見ず知らずの私にも快く答えて道を地図と目の前に広がる道を使って説明した。

 彼女はとても綺麗な女性だった。写真で見るより清らかで、キツイ感じは一切なくて、良い家柄のお嬢様なのだと判った。私のような醜い鼠とは全然違った。

 紫を帯びた黒髪は風に吹かれると同時に可憐に揺れ、髪から香る柔らかと表現出来る優しい香りは鼻に付かない。日に焼けていない自然な肌はきめ細かく化粧も最低限しかしていなく厭な感じがしないし、爪の先まで手入れがされていて、女性らしい小さく細い、弱そうな手だった。

 藤色と云われる薄紫の瞳はフェーヂャの紫とはまた違う雰囲気を纏っている。不思議で知的な雰囲気は近いものがあるがこちらの方が断然、透き通っている感じがする。

 写真を見た時から美しい人だと思っていたがこんなに近くで見ると実感する。本当に綺麗で育ちの良い人間がいるという事を。天女、そう比喩しても行き過ぎではない。


「ヨロシケレバ、アンナイオネガイデキマスカ」


私は片言の日本語で問う。彼女は少し考えたが時間を確認したあとOKと手で表してくれた。

 式部は歩いている途中も話題が切れないように声を掛けて呉れた。建物の説明。其れが無くなれば私が出身は亜米利加と云うと亜米利加の話で盛り上がった。彼女は「そういえばこの前、職場に亜米利加の方が遊びに来られたんですよ」と話しをしてくれた。小説を書かれている方で、と話を訊いていると其れがエドガーのことだと判ってしまった。職場の先輩と友人だという。あの人はそれなりに上手くなっているようだった。

 彼女の声はとても澄んだ少女の声のようでありながら、ふとした時に二十代の大人な雰囲気を見せるとても綺麗な声で、耳にすーっと入って来る。

 私はさり気に彼女の名前を訊き私も適当に偽名を使い自己紹介した。そうしていると何故か話の内容が恋人の事になってしまった。


(ある意味、太宰治の弱点を知る絶好の機会なんじゃ…)


私はそう思って彼女の話を訊いていた。彼女は太宰の名前を云う事はなかったが、彼と楽しかったことや、情報で訊いていた馴れ初め話を上手く誤魔化しながら話してくれた。私は彼女に対してとても羨ましいと思った。純粋に愛し合うことが出来る二人がとても羨ましい。


「|There is someone that I like now.《私にも今、好きな人がいます》」


けれど今は喧嘩してしまって会えないと口走ってしまった。先ほどまで淡い笑みを浮かべていた式部は途端に無表情になってしまった。そして目的地に付くまで無言だった。


「|I can be reconciled sometime.《いつか、仲直りできますよ》 |Surely time dissolves.《きっと、時間が解消してくれます》」


彼女は最後にそう云ってくれた。私は咄嗟にまた会いたいと云い、彼女の連絡先を訊いた。LINEを訊いたので彼女のアイコンを確認すると其処には太宰治の包帯が巻かれた手が映っていた。二人は本当に仲が良いのだと思う。

 それじゃあ、また。と手をふる彼女を見送ったあと、私は路地に隠れたあと、あの綺麗な女性を思い浮かべ乍ら、呟いた。


「|Время поможет решить?《時間が解消してくれる》| Вы говорите очень жестокая вещь.《貴方は、随分と残酷な事を言うのですね。》」


フェーヂャの元に戻るため、私は其の路地を進んだ。もうすぐ、彼が探偵社、マフィアのかしらにウイルスを撒くだろう。その時私の新な仕事が始まる。



英文、露文は翻訳サイトをお借りしました。


ちなみに声のイメージは紫織が「cv早見沙織」さん。オリガが「cv伊藤静」さんです。

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