神父様と犯罪者

りあ@創作 絵&文 低速
@raral_R

★番外_転生パロ(ララルによる愛の実験)

私が物心つく頃には両親はいなかった。それどころか血の繋がった家族も居なく、サディアス・シアラーという中年の男性がそばにいた。

サディは私に多くのことを教えてくれた。

幼い頃は「おじさん」、学生時代は「サディアス」、大人になると「サディ」と呼びとても頼りにしていた。

家族として1人の人間として愛していた。

彼が人間ではないと確信したのは成人したあたりだ。


私が彼と共に生活し始めて15年は経っているというのに、彼の容姿は全く変わらなかった。老いないのだ。

サディはガサツで面倒くさがりやで怒らせると怖いけれど、とても私を愛してくれて優しくしてくれていた。


だから人間ではない、ということに恐怖は抱かなかったけれど不思議に思って聞いてみた事があった。

「そうだな…あと…20年くらい経てば分かるんじゃねぇか?」

そう、笑いながら話をはぐらかされてしまった。



月日は経って、私が38歳になった時にサディは嬉しそうに「やっと、戻ってこれたな」って言っていたけれど私には意味がわからなかった。

私は怖かった。自分だけが歳をとるのに愛する彼は歳をとらない。いずれは彼の年齢を追い越し彼を残し、私だけ死んでしまうのではないか、と。


私が38歳になることに意味があったようで、それまで聞いても教えてくれなかった私の両親のことや生い立ちについて教えてくれた。

私は物心つく前に教会に勤めていた両親の元からサディに攫われてきたらしい。

どうしてそんなことを?そう聞くと彼は「愛してるからだ」と笑った。


その時から彼の時は動き出した。私と共に老いるようになった。最期(おわり)に向かっているというのに私はとても嬉しかった。彼を残して死ぬ事はない。あっても数年経てば彼も私と同じ場所に来ると思うと嬉しかった。



数年後、サディは突然逝ってしまった。交通事故だった。

ずっとそばにいた彼が居なくなり、酷い喪失感に襲われた。毎日生きる気力もなく、死んだように過ごしていた。いや、むしろ何故死ななかったのだろう。

そんな時に私の目の前に漆黒を纏った少女が現れた。

サディよりも深い黒の髪、瞳、真っ黒なドレスを着た少女は私に言った。


「もし、貴方の命をくれるのならもう1度シアラーに会わせてあげる。シアラーに貴方の記憶はないけれど。この取引に乗る?エリオット・レイヴァン」


明らかに人間ではない雰囲気の少女に躊躇うことなく頷く。

「もう1度、彼に…サディアス・シアラーに会えるならば、私の命を君にあげよう」

少女は私の真意を見定めるように目を細めると「これが愛なのかしら」と呟き姿を消した。

その瞬間に記憶が蘇る。


私だけれど私ではない私の記憶。

幼い頃にサディに攫われてずっと共に暮らしていた記憶とは別の、サディに攫われず教会で神父として暮らしていた記憶だった。

神父と暮らしていた私も結局はサディと出会い教会を捨て、サディと生きた。

教会の皆に罪悪感はあるけれどサディを選んだ私が少し微笑ましかった。


意識が遠のく。

死ぬのだろうか…?けれどサディに今一度出会えるならば惜しくはない。

サディ、愛している。


「神父殿…!神父殿!!」

耳元で青年の声が聞こえる。

どこかにぶつけたのだろうか、後頭部が痛む。

「ん…?」

「神父!よかったぁ!」

倒れた私の顔をのぞき込んでいた三月が安堵したような表情になる。

「私は…いったい…?」

上半身を起こしながら辺りを見渡す。

教会の近くの森の中、数人の仲間に囲まれながら私は倒れていた。

「はーなせよっ!この、でかぶつ!!」

「どういうつもりでレイヴァン殿を襲ったのか、理由を聞かせてくれるかね?」

遠くから少年の声とイグナーツの声が聞こえた。

視線を向けるとイグナーツの片脇に抱えられた黒髪の少年がいた。

「…!!」

ずっと愛していた、会いたかった彼の面影を持つ少年。

「サディ…!」


私は理解した。

教会を捨て、サディと共に生きた私は、サディより先に死んだ。

その後でサディは私と同じように少女に会い、取引に応じた。そして記憶のない私と出会った。

サディ自身の命と引換に。

ならそこにいる、サディはサディではない…?

そんな疑問などすぐに頭の片隅に追いやられた。

サディに再び会うことが出来た。それだけで私の心は満たされていた。


「ってぇ!!殴んじゃねぇよ!!!」

「サディ…アス・シアラー君、だね?」

イグナーツに頭を1発殴られて涙ぐむ少年に声を掛ける。

「あ゛?…なんだよ、名前も知らねぇ神父殿。また強く頭を叩かれてぇのか、鉄パイプで」

私は寂しさを隠すように微笑んだ。

例え君に私の記憶がなくても私は君を愛し続けよう。

君が私を愛してくれたように。

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