私が神様になった日

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第九話:神様に胸が高鳴る日

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「あー、楽しかったぁ」


 乱藤四郎はそう言って満足そうに顔を綻ばせる。

 一方で、次郎は酔いつぶれ、村正はいつの間にかいなくなり、鳴狐と前田はすっかり夢の中だ。

 唯一、大典太だけが起きてそこにいたが、決して乱と同じ意見でなかったのであろうことは、その仏頂面から明らかだった。

 飛鳥は――楽しかったというよりは、興味深さを感じる。

 彼らが見ていたのは、乱が選んできた恋愛ドラマだ。

 本来ならこの手のものに一番詳しいのは人間である飛鳥なのだが、残念ながら現世にいたころ、そんなものを楽しむ余裕はなかった。

 だから、きちんとこういうものを見たのは初めてだ。


(恋…かぁ)


 したことはない。

 いや、もしかしたら両親がそばにいた幼い頃は、初恋めいたものくらいはあったのかもしれない。

 が、仮にそうだったとしても、飛鳥が思い出せるのは苦しく暗い一人ぼっちの記憶ばかりだ。


「ねえねえ、主さん」


 呼ばれた声に顔を上げると、乱が好奇心に満ちた眼差しをこちらに向けている。


「何ですか、乱さん」

「主さんって、好きな人いるの?」

「好きな人…ですか?そうですねぇ、ここにいる刀剣男士の皆さんですかね」


 孤独だったあの頃とは違う。

 今は、こうして彼らがそばにいてくれる。

 それだけで幸せな気持ちになって、思わず笑顔になりながら答えたが、乱はどういうわけか不満そうだ。


「違うってば。そういう好きじゃなくて、恋愛的な好き」


 『ボクも主さんのこと大好きだけどね』と可愛らしい笑顔で付け加えてくれるあたり、嬉しくなる。


「恋愛…ですか」

「そう。向こうにいないの、そういう人」

「いませんよ。恋とか、したことないですから」

「ええー!?」


 乱が驚いた声を上げた。

 彼は自分の過去を知らないから、無理もない。

 自分の年頃であれば、きちんと恋人になるまでがあるかどうかは別にして、恋した経験くらいはあると思う。

 審神者としての力がなく、ごく普通の女子として暮らしていれば、今頃そういう男性もいたのだろうか。


「主さん、可愛いのに勿体ないよ。ねえ、大典太さん」


 乱に話題を振られた大典太は、顔をしかめた。


「興味ない。刀がいちいちそんな話題で盛り上がってどうするんだ」

「もう、つまんないなぁ。そういう考え方が間違ってるんだよ。今のボクたちはもう、ただの刀じゃないんだよ?自分で動いて考えて、感じられるんだからね」


 その言葉に、飛鳥は目を瞬かせる。

 確かに、彼らはただの刀とは違う。

 共に過ごしてきたが、人間に近しい部分も多い。

 ふと興味が湧いて、飛鳥は思いついた疑問を口にした。


「…刀剣男士の皆さんも、恋ってするんですか?」


 すると、大典太の眉間の皺がますます深くなる。


「刀が恋をするわけがないだろう」

「うーん、どうかな」


 乱の方は、小首を傾げた。


「ボクも正直、恋とかしたことないけど…中には恋する刀剣男士もいるんじゃないかな?」

「成程…」

「でも実際、恋するとどんな感じなのかな?その人が傍に居ると安心するとか、気になって仕方ないとか、一緒に居るとドキドキするとか…そういう感じなのかなぁ」


 残念ながら、恋愛経験のない飛鳥には答えられない。どれも想像の域を出ない。

 乱と二人、揃って首を傾げるばかりだ。

 二人悩む様子を、大典太が呆れ顔で見ていた。


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「よ…いしょっ、と」


 野菜のたくさん入った籠を一旦地面に置いて、飛鳥は大きく息をつく。

 建物はまだ遠い。

 人数が増えてくるとどうしても食材の量も増える。

 大典太光世がいることで、本丸の刀剣男士の数は制限されているそうだが、だとすると他の本丸はもっと大変だろう。

 少し休憩したところで、再度籠を持とうとした瞬間、飛鳥の目の前でひょいと籠は何者かによって持ち上げられる。


「…あんたも少しは学習しろ」


 呆れたようなその声は、大典太だ。

 あんなに重い籠を軽々と抱えている。

 そのまま大典太は籠を手に歩き出した。

 どうやったらあんなに軽々と持てるのだろう。

 と、そこで我に返る。

 慌てて彼の後に追いすがった。

 このままでは、以前のように大典太に任せてしまう。それは申し訳ない。


「大典太さん!持ちます!」


 返事はない。

 代わりに大きな溜息が聞こえ、飛鳥には幾つかの野菜が押し付けられた。

 持て、ということらしい。前と同じだ。

 飛鳥は大典太の前に回り込んだ。


「違いますってば!全部持ちます」


 大典太は足を止め、無言で飛鳥を見下ろす。

 溜息交じりに、彼は首を横に振った。


「この前のことをもう忘れたのか。あんたには重すぎる」

「今度は大丈夫です!」

「…その自信はどこから来るんだ…」


 大典太は尚も首を横に振る。


「いいから、俺に任せておけ。大体、あんたはあんたでちゃんと運んでるだろ」


 そう言って大典太は歩き出した。

 飛鳥は腕の中の野菜を見下ろす。

 籠に入っているものと比べたら微々たる量だ。

 仕方なく大典太の横に並んで歩く。


「…大典太さんってば、すぐ子ども扱いするんですから」

「…だから、そんな扱いをした覚えはない」


 拗ねて愚痴を言うと、困惑したように大典太が眉を寄せた。


(…でも、また助けてくれた)


 大典太はいつも否定するが、飛鳥は彼を優しいと思う。

 だからだろうか。

 こうやって、彼の横で歩いていると、何だか安心する。

 最近は大典太がいないと気になって、その姿を本丸内で探すこともあった。

 そうして、彼がいつものように空を見上げているのを見て、胸の奥が何故か疼くような不思議な感情が湧き上がるのだ。

 何故だろう。大典太が、自分にとって初めて目覚めさせ、そして特別な刀だからなのだろうか。

 それとも――


「!」


 思考は不意に遮られた。

 急に飛鳥のバランスが崩れる。石に躓いた、と思った時にはもう遅い。


「きゃあっ!?」


 情けない悲鳴を上げて転ぶ以外の道は、飛鳥にはなかった。

 慌てて手を出したせいで、持っていた野菜が転がる。

 お蔭で顔面を強打するという事態は免れたが、膝にじんじんと痛みがあった。


「おい、大丈夫か」


 流石の大典太も、慌てたように籠を置いて飛鳥の前に屈みこむ。

 普段は滅多に焦らない彼がそうすると、ますますばつが悪い気持ちになった。


「だ、大丈夫です。ちょっとぼーっとしてたら、躓いちゃって…」

「全く…気を付けろ。…立てるか」


 大典太が手を差し出す。

 一瞬だけ、飛鳥は戸惑った。

 それから、大典太の方に手を差し出すと、ぐっと掴まれてそのまま立たせられる。


「っ」


 その手が、思っていた以上に大きくて温かくて、力強くて――何故か、心臓が跳ねた。

 大典太は屈むと、飛鳥の傷を覗き込む。


「…擦り剥いてるな。俺の霊力は怪我の治癒には効果がない。…戻ったらちゃんと手当しておくことだな。後は俺が持っていく」


 そう言うと、彼は散らばった野菜を籠に放り込んだ。

 『足元くらいよく見ろ』と言いながら、彼は歩いていく。

 飛鳥はその後ろに従った。

 掴まれた手が、何だか痺れているような気がする。

 お礼を言わなくちゃ、とか、迷惑をかけたから謝らなきゃ、とか思ってもそれは一瞬で、すぐにさっき手を掴まれたときのことが思考を覆う。

 さっき跳ねた心臓は、まだ早く脈打っていた。

 ふっと、どういうわけか乱と先ほど交わした会話が蘇る。


(――恋)


 先を行く、大典太の背中を見つめた。

 胸元に手をやる。

 心臓の鼓動が感じられた。


(私、…もしかして、大典太さんのこと…)





【続】

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