汚れた月に吠える。

緋寄@沼の底
@Enph_hiyo12

生きる方法

 マフィアというのはとても辛い。人を殺す仕事だからではない。仕事が多い事が辛いのだ。そう中原先輩にぼやくと「流石引き籠りだな」の一言。矢張り先輩は私に対して少し冷たい。偶に仕事が早く終わって尾崎幹部の所にお茶をご馳走になりに行くが、漸く一息ついた所で毎回彼はやって来る。

 そのたびに、やれ引き籠り、やれ社会不適合者などと云われるが私もめげずに尾崎幹部の元に通う。

 尾崎幹部は佳い人だ。下っ端の私に美味しい紅茶を恵んで呉れるし、私をまるで妹のように可愛がってくれる。なんでも前まで一緒にいた私より四つ年下の子が別の組織に行って寂しいとか。中原先輩のように私を蔑んでいた姉よりも好感度は高い。


「そろそろ中也も来る頃じゃのう」


幹部の言葉に私は顔を顰めた。すると幹部は着物の袖で口元を伏せて控えめに笑った。

 

「中也がそんなに厭か?」

「厭と云うか……意地悪なんです…私が生きる選択を呉れた人ですけど、兎に角厳しくて……」


成程、と幹部は呟いた。何か思い当たる節があるのだろうか。後ろから今聞きたくない声が聞こえて来る。


「意地悪で悪かったなァ?」

「あー…中原先輩……」


どす黒いオーラを放つ中原先輩に私は肩をすくめる。すると身体が宙に浮かんだ。彼の異能力だ。


「俺は親切で厳しくしてやってんだよ」

「親切って…!どう考えても鬼畜です!」


私が反論するとあっけなく地面に落ちた。尻餅を付いて、打った場所をさすっていると中原先輩に睨まれた。

 初めて会った時のように何処か目に殺気を帯びている。


「手前は本当に馬鹿だな。仕事も出来ない奴が此処で生き残れると思うなよ」


私を見定めるような目線も何処か懐かしく感じる。其れでも私が学校で向けられていた差別と敵対の眼差しよりはよっぽどましだ。

 数秒間、見つめ合っていると彼が先に目線を反らし「ッチ」と舌を打った。そして「昼食ったら何時もの集合場所に来い」とだけ云い残して部屋を出て行った。

 すると尾崎幹部が面白いものを見たと声を上げた。


「朔乃は案外と肝が据わってるのう…中也が連れて来ただけはある」


関心深く呟き、そして私にアドバイスするように云った。


「中也はお主を、此の裏社会で生きていけるようにしたいんじゃな。なら朔乃も其れに答えねばいかん」


どういう事だ。私には難しいことでよく判らない。でも尾崎幹部の云うとおり彼の何かに答えれば彼は私に厳しくはならなくなるのだろうと私は何となく思った。

著作者の他の作品

橙オレンジ様宅のアーネストと清原とのうちよそ。公式キャラは出て来ません。

陽月様宅の企画、「文豪学園」の三次創作。※本編の設定から多少いじり、一部派...