いつから

蕩月@月島蛍には御月だけ♡♡
@venusmelt

いつから

いつから

どのタイミングで

どれくらい


君のことが好きになったかなんて、わからない


けどきっと


最初から、だったんだろう





中学校に入学して、小学校からの友人の席に向かうと、その横の席に彼女がいた。

大きな目、長い睫毛、綺麗な髪、艶のある血色いい肌。無頓着な僕でも一目でわかる、俗にいう美少女というやつだろう。

山口の横に座っているということは、「やゆよ」あたりの苗字の子なんだろう。



「あ!ツッキー!」



僕に気付いた山口の声に、隣の彼女もこちらを見た。

途端、ただでさえ大きな目が、溢れるんじゃないかという位にますます大きく開かれた。驚きの様な視線が僕に刺さり、僕も表には出さなかったがその反応にほんの少しだけ、びっくりした。


そんな大きな目で見続けられたら、こちらもつい見返してしまう。僕の視線に気付いた彼女は、ハッと我に返ったようだった。



「あ…!ごめんなさい!ジロジロ見たりして…」



申し訳なさそうに謝る彼女に



「いや、別に」



通常運転の返事を返した。


大抵の人は、この素っ気ない返事にそれ以上突っ込んでこない。

でも彼女は全然気にしない、という感じで



「背、高いんだね」



と笑顔を向けて来た。



ああまたそれか。



散々言われて耳タコ状態なので、もういい気分もしないというのが本音だけど、なんの裏もなく向けられているのが分かったからか、不思議といつもほど嫌な感じはしなかった。

そんな事を思っていたら



「そうなんだよ!ツッキーは小学校からずーっと背が高いんだよ!もうすぐ◯センチになるんだよ!!」



と、何故か山口が僕より先に彼女に嬉しそうに話していた。


それを、へえそうなの??と彼女も嬉しそうに聞いていた。隣の席だからか、そこそこ話したことはあるようだ。

山口の僕談議を一通り聞いた後、彼女は僕に向き直って



「そっか、ずっと背が高いんだ…かっこいいね!」




満面の笑顔で言った。


ド直球ストレートの裏の無い褒め言葉に笑顔。



「背が高い」なんて何度も言われてきたし、時には望まず騒がれて、煩わしいとさえ思った大して嬉しくもない言葉。なのに、その時はまるで初めて言われたみたいだった。

そんな自分に内心驚きながら



「別に…そんなことないけど」



いつも通りの自分で答えた。


身内や旧知の山口は慣れてるとは思うけど、初対面の況してや女子ならたじろぐようなそっけない返事だと、自分でも思う。それでも彼女は首を傾げながら



「そうかな…?いや、でもやっぱりかっこいいよ!」



納得したように満面の笑顔を再度僕に向けた。



自力だけでなんとかなるってものじゃないもの、言葉を加えながらニコニコしている彼女を見て思う。




この人は⋯何だ。

君は⋯何なんだ。

こんな感覚、僕は知らない。




未体験の感覚に、五感とは違う何かが警鐘を鳴らした。そんな僕に気付いているのかどうなのかはわからないけど、山口も特に会話に入ってくることなくやり取りを見ている。

何も返せないままいると、教室の入り口の方から友人に呼ばれたらしい。



「あ!私いかないと。割って入っちゃってごめんね!」



もう一つ笑顔を落として彼女は席から去って行った。

僕は相変わらず何も言わずにその姿を見送った。

会釈ひとつもしないまま。


入り口を見たままの僕に



「ツッキー?」



山口が声をかけてきた。

そこでやっと「我に返った」感じがした。




「あの人は⋯」


「え?」


「あの人は何なんだ」



僕の問いに山口は若干驚いたようだったが



「あの人!?ああ、さっきの女の子?あの子は夢乃さんていうんだ。可愛いよね!席隣だからたまにしゃべるんだ。●●小だったんだって!」



聞いた以上の情報をくれた。



「ああそう」



それで終わらせようとしたのに



「ツッキーのことかっこいいって言ってたね!まあ、ツッキーかっこいいもんね!」



と続けられたもんだから、


うるさい山口、


そう切ろうとした時



「でも⋯面と向かって言ってくる子って、珍しいよね?かっこいい、にしても、背高いね、にしても。周りでキャーキャーとかヒソヒソいわれることはよくあるけどさ。ツッキー別に感じ 良く対応してあげてたってわけでもないのに⋯」



そこまで言って山口は「あ!」という顔をして慌てて口に手をあてた。



「別に怒んないよ、無愛想なのは事実だから」



そう言うと明らかにホッとした顔をした。



「俺たちも帰ろうよ、ツッキー」



山口のその言葉に同意して帰路についた。