一寸先が闇だとしても

ゆ៎き៎こ
@yuki178115

第4話

薬研の薬、凄いまずい……。

なんというか、渋柿に酸味と甘味をたしてしまったようななんというような。

ただ、飲んだら体の痛みがすぅっと消えたから、効能は間違いない。

最初は普通にお医者さんにもらおうと思ったんだけどね、俺の薬の方がよく効くぞ、て言うもんだから。

本当にまずかったけどね。

「……はぁ、怖かったぁぁ!」

薬のおかげなのかはわからないけど、座る事ができるようになっていた。

……不思議だ。

「主!もうどれだけ心配したことか!無事で何よりです。」

「ありがとう。」

心からそう伝えたかった。

皆の存在に、どれだけ助けられたことか。

どれだけ……どれだけ……。

「でもさ、問題はこれからなんだよね。」

恋愛物語とかで、付き合えるように頑張って、付き合えたやったー、で終わる物語あるじゃない?

それってさ、その後どうなったんだーって話になるじゃん。

私の場合もそうでさ、皆と、お医者さんと、青葉さんのおかげで審神者を続けられるようになったけど、それから私はどうなるんだろうって。

「実験台って、なんか怖いよね。何されるんだろ、私。」

頭切られたり変な薬入れられたり?

するのかな?

しちゃうのかな……?

「流石に危ないことはしないでしょ。ていうかしたら俺が怒る。」

「ははっ!清光目がマジじゃん。」

笑うなよ、別にいいだろ?

安定と清光って、

「ほんと仲良いよね。」

2人が言い合う姿は、あの頃に…私がまだ元気だった頃に戻ったような錯覚を感じさせた。

ああ、本当になんでなの……?

私なにかしたかな?

書類だって、ギリギリだけど期限前に出してたし、あの子達を折ったことだって…ないんだよ?

悪いことなんて、してないじゃない!

なのになんでこうなったの?

あの頃になんて…戻れないって、戻れないって!

戻る事なんて…許さないって神様は言っている。

例え戻れても、失った時間はきっと取り戻せないんだ。

「……う!大将!」

「えっ、あ、なに?」

気がついたら、信濃くんの顔が目の前にあった。

「大丈夫?」

「うん……。」

彼の赤い髪が、すきま風によってふわりと揺らめく。

「ならいいけどね。」

そう言うと、ニコリと笑いどこかへ走っていった。

「医者が、あんたと話したいって言ってるぜ。」

太鼓鐘くんに連れられて、お医者さんが入ってきた。

「おや、座れるようになったのですね。」

「はい、お陰様で。」

聴診器をあてながら、そのお医者さんは口を開いた。

「最初は、ここにずっといてもらって、治療しようかと思っていたのですが、」

聴診器を耳から外し、私に体温計を渡した。

「もしよろしければ、本丸の一部屋をお借りして、そこで治療できないかと思いましてね。」

「本当ですか!?」

「はい。貴方も審神者のお仕事がしやすいでしょうし、いつもの場所、いつもの環境で過ごしていた方が治りやすいかも知れませんしね。」

あの場所に戻れる。

皆がいるあの場所に。

「じゃあ、私の部屋を使って下さい!あの、少し気になってて、その、これから私はどのようなことを……?」

体温計を差し出すと、眉を顰めてそれを見て、

「そうですね。体調の変化を見つつ、その原因を探り、あとは、薬作りかな。少し熱あるみたいだから横になってね。」

言われるがままに横になった。

私を心配する声が聞こえる。

はは、やっぱ私愛されてんのかなー、なんてね。

「君たち刀剣男士たちは、結崎さんの、君たちの主のお部屋を、布団だけにしておいてくれるかな?」

皆が各々に返事をして部屋を出ていく。

恐ろしいほどにギュウギュウ詰めだった部屋が、お医者さんと私だけのすっからかんな空間へと変わった。

「少し心細いでしょうが、すみませんね。なるべく早く移動したいでしょう?」

ああ、確かに心細い……。

少しじゃなくて、結構ね。

でも、お医者さんの言う通り、早く本丸に帰りたいから、我慢我慢。

「薬研藤四郎くん、薬作り上手ですね。」

突然お医者さんはそういった。

「…はい!私の本丸の自慢です!」

思わず声を大きくしてしまった。

でもね、自分の子を褒められたら、誰だってさ。

「笑顔。」

「え?」

「今、笑顔ですよ。」

「笑顔……?」

「ほら、その方がすっきりするでしょう?心がね。」

「……はい。」

「それに、そっちの方があの子達も安心する。」

……!

「誰だったか、言っていましたよ。最近主泣いてばっかりだって。仕方ないかも知れない。だってこんな状況だから。でもね、笑っていないと。そっちの顔の方が主に似合うと言ってましたよ。」

もう……だれよ、そんなこと言った子はっ!

…………笑顔か。

「笑いなさい。君のためにも、あの子達のためにも。」